2017年04月01日
・スチューベン園の仕上げ剪定をしたのだが、一番大きくて古い木は完全に死んでしまっているっぽいので伐採した。昨年から調子が悪く虫も入っているようだったが、ここはスチューベンですら新植の成績が悪いので困る。また、枝転びしやすい強風地帯で、さらに渇水に弱い礫質の傾斜地、圃場も3枚続きの共同棚という「よくまあ借りてるな」状態。一応棚下にして作業はとても楽になっているのだが、昨年の上がりもたいした事なかった。他にも周囲は放棄地になってる。加工ならまだいいんだろうけど、大粒種は無理だろうし、どうするかな。何も植えないのも雑草生えて困るんだけど。
・巨峰苗園は湧水地点を特定しようとしたけれど、雨の後でも今一分からなかった。ここも剪定は変形棚下短梢なので、かなりおかしな枝の取り方をしている。枝は運び出したし、スチューベンの枝だけ拾ってくれば枝焼きが出来るな。
・雨だったので農作業は半日で、ワインガールズの残り読んだ。感想だが、歴史漫画というか教材というか、史実というピースを並べたら自然にこういうパズルの組み立て方になるよなぁみたいな印象。まあ登場人物設定だけでそこらへんの伏線組んであるのでご都合主義なんかも知れないが、そういう違和感を持つ前の感じ。ともかく全体としては郷土の産業と誇りを結びつきを題材に書いてくれただけでも嬉しい。
その上で不満をいくつか。まず登場人物で裏社会の人が出てきて謎解きというか強引に人の結びつきを解き明かしてしまうのだが、なんかいい人扱いで不満。いい人にするならヤクザ者とかいらんし、逆にそういう設定が地域や業界にそういう風潮があると受け止められそうで嫌だった。これは買収業者の方もそうで、大手資本のワイナリーや企業が既存のあまり活力がないワイナリーを買収して再生するとかはむしろ望ましい部分もあるので、いつのまにか消えてたこの話が悪者の乗っ取りみたいなのは残念。またジャパンワインコンクールの主催関係のゴタゴタも、創作で伏線もあったとは言え、モチーフが明確なだけに失礼ではないだろうか。あれじゃ関係者全員クズの日和見になってしまうし、全ての解決方法がさらに上の権威がやってきてひっくり返すという水戸黄門スタイルなのも逆にスッキリはしない。まあ現実には日本ワインコンクールで入賞したのではあるけれど、どうせなら代わりにNACに出すとかさ、別の話の持って行き方もあるんじゃまいかと。実際、志学館のワインはNACでは良く認定を受けている(条件的には日本ワインコンクールよりむしろ厳しい)。
主人公達の後の進路についても、作者が福祉関係に力を入れているのは分かるが、読者としては「え、そんな力入れてワインやったのに進路にしたのは一人だけ?」と拍子抜けである。実際そんな就職先がないのは事実だが・・・というか名字や年代からすると、主人公の一人のモチーフは割と身近にいる人かもしれないな。
話はドラマチック要素がなんかテレビドラマから取ったような不自然な部分がちょこちょこあった。まぁ、そこはご愛敬なんだが、長いスパンの話の中で特定の部分がそうやってクローズアップされた分、途中の年次での作業がどこかト書きだけで飛ばされてしまっている感がある。3年次に入賞ワインが出来たというのは分かるんだけど、その積み重ね、失敗がもっと見えた方がいい。そうじゃないと、3年でベト出して大慌てとか言うのの意味が読者に伝わらない。帯書きで失敗がワインを旨くする云々あるので、てっきり醸造の失敗でもあるんかと。まあ、仮にあっても、高校生がそれを飲む事は出来ない訳だが。あと弁論大会と留学の下りもちょっと話作った感があるかな。実際バッティングは良くある事だろうけどね。
ロッシェル塩の話はまあ有名だし、それでもって古参ワイナリーが軍需物資の生産で引け目云々は私は聞いた事がない。確かに酒石酸が圧電材料になるので集めたという話はある(でも魚雷をソナーで探知出来るほどだったとは初耳だ)。でも酒石酸は元から全部は使わない副産物としても発生しているので、そのために品質を下げるとか言う物でもないような(当時冷却析出する技術があったとも思えないし)。むしろ岩ノ原などで聞くように「米を食糧として使うため、日本酒原料を減らすため、米以外の原料でお酒を造る」という要素がソナー云々の前からあったんじゃなかろうか。軍部からの指定は良く知らん。また銃後の女性が農業や工業の生産活動をしているのは当たり前で、葡萄栽培以外、例えば養蚕業の話が出てくるが、あの女工哀史なんか考えるとどうなんかね。
用語で気になった点をいくつか。防腐剤というのが消毒で良く出てくるが、さすがにちょっと雑じゃないですかね。「農薬」「殺菌剤」というべきで、普通防腐剤というと生体ではない物に使う物、「クレオソート」とか「食品防腐剤」をイメージするかと思う。次、メタカリが途中で出てくるが、お前ビオやりたいなら二酸化硫黄だろそこは、というのは多分どうでもいい話かな。何故かタイムリーにこの話している所があったのは、もしかして読んでるのか?芽の切除の話は現物がどうなんか知らないのでアレだが、一つ目の芽を欠くという表現が本当にそうなんかは気になった。「コルドンで犠牲芽剪定かけてるから一つ目切る」のか「メルローは基部でも花芽持つから」なのか、そもそも芽欠き対応ではないのか、など。ナイアは芽欠きしても副芽伸びるから切除なんだろうけどね。
ところで、この本は1500円もする。ハードカバーならまだ分かるんだがペーパーバックで挿絵が多い訳でもないし、大判ペーパーバックはカバーがずれて読みづらい。似たような装丁と内容だと女子高生ドラッガーが思い浮かぶが、あっちも1800円近くする。良く売れているそうでポプラ社はウハウハだろうし、文庫本化もしないだろうけど。
Posted at 2017/04/01 21:03:24 | |
トラックバック(0) | 日記