Nielex NCリア・クロスメンバー改造
NC系ロードスターは,RX-8の車台(シャシ)をベースにホイールベースを切り詰めた車台をベースにオープンボディを架装したものですが,グラム作戦による軽量化とコストダウンを目的に,各部品がロードスター専用にCR(コストリダクション)されています。
今までニーレックスさんと,元自動車メーカーのテストドライバーである小田氏による検証により,開発段階においてリアサスペンションのジオメトリーを変更し,RX-8が元々持っていた高い限界性能を落としていることが判明しています。
「マツダ技報」では,このジオメトリーの変更を「最適化」したと記述されていますが,これは,「初代ユーノスロードスターの楽しさ」を目指すうえで,意図的に変更されたものと推測します。
ハンドリングのブルブル感を解消する「ナックルサポート」や,ボディ剛性を飛躍的に向上させる「マジカルクロス」により,ノーマルとは比べものにならないレベルにまで,楽しく走れるようになったNCですが,ヒョコヒョコとピッチングやロール方向に忙しく動くクルマの挙動や,強めのブレーキング時やコーナリング時のリアの不安定感にはかなりの不満(不安?)が有りました。
初代ロードスターのような「ヒラヒラ感」を演出するためにこのようなクルマに仕上げたのではないかと推測しますが,排気量アップで馬力が増え,速度レンジも数段上になっているNCでは,「ヒラヒラ感」どころか「ヒヤヒヤ感」が拭えません
そこで,ニーレックスさんでは,本来NCが持っているはずのRX-8並みの性能を引き出すため,昨年から元自動車メーカーのテストドライバーさんと共に解析と研究を行って来られました。
以前,ニーレックスの常連さんのNCに,RX-8のリアのクロスメンバーを現物加工して取り付けすると言う手法で実証実験した結果,RX-8のジオメトリーが,ピッチングやロールの減少とリアサスペンションのスタビリティ向上に有効であることが判りました。
実際にRX-8のメンバーをNCに移植するのはかなり大がかりな作業になり現実的でないので,NCのリアクロスメンバーを現物加工すると言う方法で,RX-8の持つジオメトリーを再現すると言う手法を取られました。
また,NCはRX-8よりホイールベースが短いため,RX-8のジオメトリーを再現するだけでなく,一歩踏み「ショートホイールベース対応」のジオメトリーとしています。
紆余曲折の結果,NCのリアクロスメンバーを加工および補強をしてニーレックス流のジオメトリー最適化を実施することになったのですが,懸案事項として残ったのは,溶接で加工と補強をする際に熱を加えたあとの防錆処理でした。
クロスメンバーに限らず,下回りの部品は雨や水,泥,融雪剤として道路に撒かれる「塩化カルシウム」等に容赦なく晒されますので,数年で乗り換えるクルマならともかく,これからも長く付き合っていく愛車の寿命を縮めてしまうことは考えられません。
最近では旧車の錆の補修に使われたり,雪国で散布される塩化カルシウム(融雪剤)に強い塗料が各種発売されているので,当初はそれらを使って溶接個所を塗装する計画も有ったのですが,今回はメンバーの剛性アップのために,鉄板を貼って閉断面化する箇所もあり,通常の塗装では袋状になった内側に,塗料や防錆材が行き届かないのです。
このことから,僕はジオメトリー変更に関する最小限の追加加工にとどめることも考えていましたが,防錆対策について話し合っている時に,僕がカチオン(新車にも使われている電着塗装)が出来たら最高なんですけどね・・・なんてつぶやいたら,某自動車部品製造会社に持ち込んで,カチオン電着塗装をすることになりました。
カチオン電着塗装は,製品を塗料にドブ漬けして電気を流し,電気メッキのように還元作用によって形成される方法なので,塗膜が強固に密着して耐食性に優れる塗装方法であり,新品の純正部品と同等の仕上がりなので,最大の懸案事項がクリアされました。
前置きが長くなりましたが,こうして弊NCのメンバーを改造することに踏み切ることにしましたが,導入を決断をしたのは軽井沢ミーティングに行く直前と言う微妙なタイミング・・・。
どうせなら「軽井沢遠征前に間に合わせた方がええじゃろ」と言うことで,イベントの出展準備などでお忙しい中,ニーレックスさん全面協力のもとに作業していただき,間に合わせてもらいました,
完成後,そのまま行きつけのタイヤショップに持ち込んでアライメント調整をしてもらい,そのまま軽井沢遠征に出発することになりましたが,想定していた以上の挙動の変化に驚きました。
コーナリング中やブレーキング時のスタビリティーがUPして,車格がワンランク上がったような落ち着きのある乗り味になるのは,RX-8のメンバーを移植した常連さんのNCや,メンバーを改造したデモカーで効果を実感していたので,この点については狙い通りと言うか想定の範囲内でしたが,一番感動したのは,往復で約1,300キロほど走行した高速巡航時の挙動変化でした。
リアサスがヒョコヒョコ動かなくなったことにより,路面の凹凸やアンジュレーションに対しての挙動変化がマイルドになり,特に上下方向の動きが少なくなって,まさに「フラットライド」と呼ぶに相応しい仕上がりになっていました。
今回の遠征では,ビーナスラインも全線制覇の他にも,長野県内のドライブコースを堪能させていただきましたが,ピッチングやロール方向の動きが滑らかになり,目線の変化が少なくなったことにより疲労感が大幅に改善されたのは思わぬ収穫でした。
ピッチングやロールは,ダンパーの減衰力やスプリングレートのアップである程度改善出来ますが,多くの場合乗り心地の悪化を招く結果となります。
今回は,ピッチングセンターをクルマの重心よりリア寄りに変更して,路面の凹凸やアンジュレーションに対しての挙動変化がピッチ方向(前後交互の上下)の動きではなく,バウンス方向(前後同時の上下)となり,タイヤの接地性が良くなったことによる性能や安全性アップは勿論のこと,目線移動が少なく,滑らかになった挙動により疲労低減や運転の楽しさが引き出されたと思います。
メンバーの改造費や取り付け費用を考えると決して安くない投資であると思いますが,サスペンションの変更やボディ補強だけでは絶対に得られない効果があると考えます。
ジオメトリー変更により,ロードスターのオープンボディでありながら,RX-8並みの高い限界性能と素晴らしい走行安定性を実現しつつ,欧州車のように上質で「フラットライド」な安定感を持たせることが出来ました。
今までリアの不安定な挙動に我慢できず,「対処療法」としてハイグリップなタイヤを導入していますが,リアクロスメンバーの改造によりこれだけの安定感が実現できたので,今後はタイヤを元に戻すことも考えています。
元々NCの車台が持つポテンシャルを引出し,RX-8のようなスタビリティ抜群な乗り味に変化するので,マツダ株式会社の開発陣が目指した「ヒラヒラ感」(ヒヤヒヤ感)がお好きな方には全くおススメできないことだけは申し添えておきます。
尚,装着にあたり,リアアッパー前側のトレーリングリンク2本(左右1本ずつ)をRX-8用に交換する必要があります。
※価格はメンバーの改造費のみで,取り付け工賃やアライメント調整費は別途必要です。
関連情報URL:http://nielex.net/chassis_cmrm.html
関連動画:http://www.youtube.com/watch?v=wWs-cc2qDr4
定価 | 59,850 円 |
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入手ルート | 実店舗 ※ニーレックス |
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