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2016年05月22日

公道 オーバー300km/hプロジェクト

公道 オーバー300km/hプロジェクト 先日、カエル好きさんのプログを読んで、思い出した話です。


現在、海外仕様のオートバイには、スピードリミッターが装着されています。

そのスピードは300km/h。

ことの発端は、20世紀の終わり頃に勃発した「世界最速」への覇権争い。

その争いは1999年、このバイクの誕生によって決着が付きました。



スズキ 隼


その後も、追従するモデルが他社から発売される等、過熱さは冷めやらず。

さすがのEUもこれでは危険だと、2001年よりスピードリミッター装着と相成った次第です。


そして、今も私が大切にしている本。

Mr Bike 1989年11月号。

市販車の最高速がようやく250km/hを越えた頃。

ひとりの男が、この300km/hの壁に挑みます。



佐藤信哉

フリーライターにして、バイク乗り。

そして、ストリートアタッカー。

このチャレンジにあたり、彼がマシンに課した条件は3つ。


1. 最高速に特化させず、ストリートでも十分使えること。
2, 過給は行わず、エンジンだけで勝負すること。
3, 乗り手側のミスを除き、絶対に壊れないこと。


いわば次世代のスーパースポーツバイクです。

20世紀の終わりに現れたハヤブサは、まさにこれらの条件をクリアした集大成です。


そして、当時は空前のバイクブーム。

鈴鹿8時間耐久等、モータースポーツも異様な盛り上がりを見せていました。

そこで活躍していたマシンは、TT-F1。

市販の750cc車をベースにしたレーサーです。

TT-F1は、ベース車の素性に大きく左右されます。

その為、勝利を宿命付けられたメーカーからは、今まで想像出来なかった様なマシンを発表してきます。



GSX-R 750

ほぼレーサーに保安部品を付けただけ、そんな形容をされていました。

179kgの車体で、馬力は海外仕様で100ps。

これなら壁を越えられるのでは? そう思わせてくれるには十分な性能でした。


マシン製作にあたり、必要な性能を逆算するべく、シミュレーション解析を始めます。

そこで導き出された馬力は・・・168ps!

GSX-R 750をもってしても、68psのパワーアップは不可能です。


そんな気持ちに応えるかの様に、翌年追加モデルが発売されます。



GSX-R 1100

197kgの車体で、130ps。

重量は増えましたが、大幅にパワーアップしています。

これならば、きっと・・・という思いで、検討を進めます。

排気量アップによる効果は、主に中低速トルク。

ゼロからの発進では、効果があります。

ですが、今回のステージは最高速チャレンジ。

ここではトルクよりも馬力です。

排気量アップによるデメリットは、ピストンの大型化。

その為、重量が増えてしまい、高回転化が難しくなります。

馬力の面でいくと、これでは不利です。


それならばと、750ccエンジンでピストンを軽量化し、あとはひたすらレッドゾーンに入れっぱなしではどうだろうか。

そんな使い方、到底エンジンが耐えられません。


スズキという会社、当時から大人げない会社というイメージがありました。

目的達成の為には、手段を選ばす。

GSX-R誕生の1985年から、全日本TT-F1クラス3連覇のスズキ。

1988年に、ホンダRVFによって連覇が途絶えます。

チャンピオン奪還に向けて、1989年に限定販売でニューマシンを発表しました。



GSX-R 750R

名前こそGSX-R 750でも、中身は別物。

むしろ’88 TT-F1仕様が近いくらいか。

クランクシャフト、コンロッドは製法、材質をレーサー相当に変更。

一部部品には、当時今以上に高価だったチタンも投入。

ジャーナリスト試乗会では、海外仕様が280km/hフルスケールのメーターを振り切るほど。

これなら超高回転でも耐えられる。

これでベース車が決定しました。


当初の目標は168psなれど、実際には道に勾配もある為、そこまでは必要なさそう。

耐久性との兼ね合いも見て、チューニング仕様を決めていきます。

エンジンはカムシャフト、ピストンをTT-F1用に。

車体は十分な潜在性能があるので、ノーマルのまま。

キャブもTT-F1用はピックアップ重視な為、今回の最高速トライには不要な性能と判断し、無交換。

これでチューニングが施されました。




そして1989年9月、戦いの場であるアウトバーンへ。

まずは慣らしがてらに、流れに合わせての様子見。

異常がないことを確認し、いよいよアタック開始です。

1〜3速までは、全く頭打ち感もなくレブリミットに。

チューンドエンジン+クロスミッションの為、加速感が途切ることがありません。

4速で200km/h越え、5速で250km/hオーバー。

それでも加速感に鈍化はなし。

ついに270km/h、最後のギヤ、6速に。

まだまだ普通に加速できる!

295km/h、タコメーターがレッドゾーン最後の目盛に並ぶ。

前方確認でわずかに上げたヘルメットは、巨大な力で後方へと引っ張られる。

そしてタコメーターが振り切った時、ようやくスピードメーターの針が300km/hを越えた。



この間、ビデオと写真で記録をしていました。

ですが、ビデオは270km/hを超えると、ホワイトノイズに包まれ。

電制シャッターを備えたカメラも、肝心な300km/hではシャッターが降りず。

上の写真は、信哉さんが左手を放し、片手運転で機械式シャッターのカメラで撮影したものです。

どうやら、超高回転時に発生する点火系からのノイズが、原因だった様です。


アタック中は、4輪とのバトルもあったそうで。

それが、メルセデス、ポルシェであったとしても、250km/h以下では決着すると。

せいぜい5速までで、6速を使うことはなかったと。

ただ1台を除けば。


それは250km/hの時に、背後から現れた。

近づくでもなく、離されるでもなく。

270km/h・・・変わらず。

280km/h・・・引き離せず。

こいつ何者なんだ! 確認すべく道を譲ると。



AMG 300E 6.0-4V HAMMER

まだAMGが、メルセデスと合併する以前のモデルです。

ミディアムのボディに、6L V8にコスワース製DOHCヘッドを搭載。

385pを誇るモンスターです。


今度は背後について追撃。

とうとう最後の6速にシフトアップ。

そして、遂には290km/hまでに。

さすがに、ここで加速も鈍くなってきます。

そこで、すかさずパッシング。

ハンマーはゆっくりと道を譲ります。

GSX−Rは、そこからゆっくりと300km/hに向けて加速。

ハンマーは少しづつ小さくなっていきました。


当時はGPz400Fに乗っていた私。

300km/hはおろか、200km/hすら未知の領域です。

想像の彼方にある世界での出来事に、胸をときめかせておりました。
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Posted at 2016/05/22 00:27:36

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この記事へのコメント

2016年5月22日 0:53
こんばんは。

今回も力作ですね!!
読み応えがありました。

スズキは本当に不思議な会社ですね。
あの2輪のオタク度の高さは異常な感じがしました。

それに昔のAMG、、、悪い匂いがぷんぷんしますね。

また楽しいブログ期待しています!!(笑)
コメントへの返答
2016年5月22日 8:23
おはようございます。
コメントありがとうございます。

ちょっと詰め込みすぎてしまい、まとまりに欠けた感があります。
そんな駄文ながらも読んで頂き、嬉しく感じております。

さて、スズキなんですが・・
当時GSX-Rと双璧を成した、RGγ。
400/500は、隣にレーサーのRGB500を並べて、それを見ながら作ったなんて話もあったり済ます。

AMGも、まだ独立チューナー色が残っていた最後の頃になりますか。
このハンマーは、創立者アウフレヒトに最高傑作と言わしめたモデルです。

この荒削り感が、まさにチューニングカーですね。
2016年5月22日 5:31
おはようございます。
私はオフロードバイクばかりで そんなドラマがあったなんて知りませんでした。
でも ちょうどその頃の8耐までは クーラーボックスに缶ビールを詰め込み 見学に行っていましたよ。
懐かしいです。
コメントへの返答
2016年5月22日 8:36
おはようございます。
コメントありがとうございます。

鈴鹿8耐、実は行ったことがありません。
バイクなのに渋滞する現代のお伊勢参り、日曜夜からの400km移動が壁になってました。

ホンダは、レース翌日の月曜日、通称「8耐休み」で休業でした。
(実は8耐とは関係ないらしいのですが)
これだったら、移動も楽だったんですがねぇ。
2016年5月22日 8:51
まってました!
30年近く前に、こんなことがあったとは知りませんでした。バイクは乗っていましたが。

ジスペケ、ガンマはほしかったですね。カタナはいまでもほれぼれします。
最近スズキのつまらないニュースを見たばかりですので、グッと来るものがあります。
ありいがとございました。
コメントへの返答
2016年5月22日 9:20
おはようございます。
コメントありがとうございます。

当時の2枚看板だった、GSX-Rとガンマ。
どちらもタコメーターが「3」から始まるトンガリっぷりでしたね。

今回改めて読み直して「どうしてベース車が1100ではないんだろ?」という疑問も解けました。

Mr Bikeは、こういうバイク乗りしか理解出来ないだろうなぁ企画が多くて、好きな本でした。

だって「300km/h出たからって、どうなの?」って言われたら、説明出来ないですから。
2016年5月22日 14:26
初めまして、懐かしい記憶にコメントしたくなりました。

建前でなく、本音があるジャーナリズム的雑誌で好きでしたね。 この企画を各メーカに打診したところ、「・・んなあほな!」という中、唯一スズキだけが「おもろいな!」と乗ってくれたと記憶してます。

スズキは素が表に出ててGSXR750RRはほしくても買えませんでしたが、他社と比べて価格は同じなのに、目玉のカタログを飾るハッタリがなく、販売は苦戦したようですが、今でも手に入れたいと思うバイクです。飾りでなく、本当にバトルのできるパーツとセッティングがなされてましたね、あのクロスミッションは欲しかったな。

でも、この佐藤信哉さんとスズキの間で交わされたノウハウが、’99の隼に昇華されていたと思いますね。 最高速まで開けれるバイクとはどういうものか、、が「隼」にはありました。

スズキの車、バイクづくりは、プロパガンダが無くて自分の車をチューンしてるような誠実さが好きですね。
コメントへの返答
2016年5月22日 19:30
こんばんは。
コメント頂けると、嬉しいです。

Mr Bikeは、「これってどうなの?」企画が結構ありましたね。

他で印象的だったのは、BGだったかもしれませんがグランドツーリング企画がありまして。

東京〜宮崎(当時はそこまでしか高速が開通していなかった)まで、弾丸ツーリング。

テーマが「宮崎の料金所のおじさんに、『東京』と書かれた通行券を見せに行く」でした。

そりゃ普通に考えればバカげているものの、なんだか共感出来てしまったのも事実です。


信哉さんの時もスズキで、市販車初もスズキというのも、偶然ではないでしょう。

私感ですが、あの会社、損得勘定とかよりも気持ちで動いている様に見受けられます。
(企業なんで、ある程度収支は考えているとは思いますが)

このGSX-R 750Rも、レースに負けた時に出る販売への影響とかよりも、とにかく負けることが受け入れられない、という気持ちで作っていたのかなぁ、なんて思いました。
2024年12月30日 2:11
信哉さんはマジでカッコよかったです。
手だったか、脚だったか、手術台の上で
「切らないでくれ!」と意思表示した。
そしてバイク乗りとして復帰。
すんげぇ人が居るもんだと。憧れました。
コメントへの返答
2024年12月30日 18:15
こんばんは。
コメントありがとうございます。

決して群れたりはぜず。
その内に秘めた力を外と誇示する事もなく。
それでもこの人の凄みは、十分に伝わる。

孤高のバイク乗り、信哉さんはそんな印象です。

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「@中島乗り さん UDの意味、時代と共に変わりますね。私が学生の頃、先生からは「ユニフロー ディーゼル」の略だと教わりました。」
何シテル?   05/30 12:53
クルマ、バイク、自転車と、自分でコントロール出来る乗り物が好きです。 それも日本製が好きです。 (自分で買えそうもないものには、興味が持てなくて) ...

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