
果たして次世代自動車は、なにが来るのでしょうか。
2030年代初めから順次、ガソリン車が販売禁止されてバッテリーEV(BEV)へ移行する模様です。
EUを初め、アメリカ カリフォルニア州、そして日本も、これに同調しています。
世界中のクルマをBEVにする事が、ゴールなのでしょうか?
BEVは、あくまで方法の1つ。
目指しているゴールは、こういう事です。
これ以上CO2を増やさない、カーボンニュートラル
本当は「増やさない」ではなく「減らしたい」くらいの勢いなんですが。
現在の主流であるガソリン車は、化石燃料を燃焼するのでCO2を発生します。
長年の技術開発によって、その量は大幅に少なくなってきました。
ですが、ゼロにはなりません。
そこで、走る為に化石燃料を使わないBEVであれば、クルマからCO2は出ない。
それがBEV化促進のストーリーです。
日本は海外に比べて、BEV化が遅いと言われています。
なぜなんでしょう?
日本には世界で初めて市販した、ハイブリッド(HEV)があります。
2017年のデータでは、登録車保有台数に占める割合が19%。
同年の新車販売比率だと、32%です。
今後もこの割合は、増えていくものと予想されます。
航続距離も長く、自ら発電するので電欠の心配もなし。
長い充電時間も不要で、使い勝手はガソリン車と同じ。
ただ少なくなったとは言え、CO2は発生させています。
環境、利便性を考えると、10年経っても主流はHEV, PHEVではないか、私は思います。
BEVは、航続距離、充電時間で課題があります。
あと10年で、ガソリン車並みの使い勝手になっているのか?
多少不便になっても、環境の為だと言ってBEVへ完全に舵がきれるのか?
ちょっと疑問があります。
なのに、なぜBEVが最有力なのか?
21世紀に間に合いました。
このコピーと共に、日本は世界初のHEV、プリウスを販売しています。
そこから、20年余り、その間、技術の蓄積も進んできました。
今は外部電力から充電する事で、よりエンジン依存の少ないプラグインHEV(PHEV)も拡がりつつあります。
更には、エンジンを発電機に特化させ、尚且つ外部電源の充電にも対応したシリーズ式ハイブリッド、レンジエクステンダーも控えています。
もちろん、日本以外の国にもHEVはあります。
ただ、こんな日本を相手に勝負するのには、あまりにスタートが遅すぎた、そう言えなくもないのです。
逆にBEVは、日本が不得手の分野です。
日本がHEVに力を入れている間、BEVは海外、特に中国が国を挙げての猛推進していました。
その結果、重要な部品である車載用リチウムイオンバッテリー(Lib)は、パナソニックが孤軍奮闘するものの、上位は中国、韓国のメーカーに占められています。
2020年のデータは、以下の通り。
BEVの性能や価格は、バッテリーの影響が非常に大きくなります。
BEVの性能は、完成車メーカーよりもLibメーカーで決まる、そう言われたりもしています。
もう完成車メーカーは最終組立だけになって、独自の個性も出しにくくなりそうです。
それにLibメーカーは、経済と政治を同じテーブル上で考える国が上位を占めているので、安定供給されるのか疑問もあります。
極端な考え方ですが、BEVはHEVが作れないメーカーが作るクルマ。
私は、そんな風に思っています。
Lib事情は、EUとて同じこと。
日本からのHEV攻勢を封じ込め、EU内雇用の確保を目論んでいた、BEV推進。
結局、Libは中韓依存になりかねないので、その思惑通りにはいかないかもしれません。
BEVで出遅れた日本が、それでも今ここで勝負するのが、果たして得策なのか。
法規制があるのでBEV開発もしなければなりません。
でも日本は、その先を狙うべきです。
起死回生の一撃、それが水素です。
私は、当面のゴールは燃料電池車(FCEV)だと思っています。
水素を使うので、CO2の排出はゼロ。
BEVの様に長い充電時間もなく、長距離移動も可能です。
ですが、現在市販されているとは言え、量産性にはまだ懸案あり。
以前よりは良くなったと聞きますが、あの価格でも採算が合っているのか、ちょっと微妙です。
また水素インフラも、増えてきたとは言え、まだまだ一般的ではありません。
そこに突如現れたのが、水素エンジン車。
水素インフラの問題はありますが、FCEVよりは現実的です。
しかも燃料系以外は、ガソリン車の流用が可能。
ガソリン燃料系を残しておけば、両方の燃料で走れます(バイフューエル)。
こちらも課題山積ですが、期待したいですね。
日本が水素エンジンに拘る、もう一つの理由。
それは雇用の確保です。
BEVになると、ガソリン車より部品が減るので、それに伴う雇用もなくなります。
関連企業が多く裾野が広い、日本の自動車産業。
その就業者数は550万人、日本の就業者数の9%を占めています。
実は私も、その末席のひとり。
しかもエンジンに関連する仕事に従事しています。
私が社会人になったのは、昭和の終わり、1988年。
就職するにあたり、いろいろ考えました。
第1希望は、自動車関連。
好きな仕事ですから、定年の60歳まで40年は仕事をしたいと思っていました。
しかし、果たして自動車産業は、40年存続出来るのだろうか?
自動車が何かに置き換わる事はないでしょう。
多分40年では、空を飛んだりはしないだろうなと。
ですが、エンジンはどうなんだろう?
時はバブルど真ん中。
温暖化の話もなくはなかったですが、それよりも石油枯渇の心配がありました。
ガソリンの枯渇が、ガソリン車の終焉。
ですが、それも過去の話。
掘削技術の進歩で、石油枯渇の時期も徐々に後ろへずれていきました。
自動車も燃費技術の進化、HEVの誕生。
ガソリン需要が徐々に少なくなるなんて、当時では考えFられない様な事も現実に起こっています。
そして21世紀を迎え、2021年になった現在。
ガソリン車は今日も街を走っています。
最近の世界的なBEV化に、とうとう私も仕事を変えなければならない時が来たのか、そう思う様にもなりました。
雇用環境も変わりはじめていて、定年も70歳まで延長されそうな雰囲気です。
どうやら私が就業しているうちに、ガソリン車の死に水を取る時が来るのか、そんな寂しさも感じていました。
そこに来て、水素エンジンの発表。
このシステムだと、私の担当部品は存続します。
恒久的なものではないかもしれませんが、なんとか実用化してほしいものです。
それにしても、FCEV, PHEVを推進しているトヨタから、まさか水素エンジンが出てくるとは、思いもしませんでした。
こういう夢のある話を出すのは、ホンダの役割じゃないのか?
ホンダも三部新社長のあいさつで、2040年までにはEV、FCEVのみにすると発表しています。
こんな事だったら、日本はトヨタだけあればいい、って言われても仕方ないです。
ホンダって、自分達にどんな期待が掛けられているのか、知っているんしょうか?
ホンダの低迷って、このあたりも関係しているんじゃないのかな。
ホンダらしさってなんだろう? もう1度考えるべきだと思います。