
先月まん延防止処置の中、細心の注意を払って行きました、いすゞプラザ。
もう1つの目的は、この企画展でした。
ISUZU challenging spirits
いすゞが今まで数多あった技術的局面を、いかに克服してきたのか。
その数々を紹介しています。
今回の注目点、それはいすゞプラザで初出展されるものがあったのです。
その存在は知っていましたが、やはり実物を見ておきたいと足を運んだのでした。
いすゞ P799WE
1990年完成、3493cc V型12気筒エンジンです。
このスペックを見て、お気付きになる方もいらっしゃるでしょう。
これは、当時のF1エンジンレギュレーションに合致させたものです。
いすゞがF1参戦を画策していたのか?
残念ながらそうではありません。
いすゞと言う会社。
117クーペでは、当時は希少な1600cc DOHCエンジンの搭載。
また日本初になる電子制御式インジェクションも、同じく117クーペで採用していました。
いすゞは自動車用エンジンは言うに及ばず、古くから建機、発電機等の産業用エンジンの開発、販売も手掛けています。
エンジンに関しては、並々ならぬ自信があったのです。
そんなエンジン技術を集大成させたら、自社の技術はどのレベルにあるのか?
それを証明すべく、わずか4人でスタートさせたのが、このV12エンジンプロジェクトです。
スペックは以下の通り。
3492cc 75度V12
765ps/13500rpm
158kg
当時のホンダF1 V12エンジン、RA121Eと比較をしてみます。
馬力では、実に30psもホンダを上回っています。
重量は僅かに4kg増です。
実は高いポテンシャルが秘められているのではないか。
そんな期待が持てるエンジンです。
このP799WE、初めて本物を見ました。
さすがはV12、結構デカいです。
バルブ挟み角も、ストレートポートの理念が反映されてか、小さくなっています。
ですが現代のエンジンと比べると、まだヘッド周りは大きいですね。
それ故に、非常に存在感があります。
1991年当時のF1は、ピークパワー狙いのV12から中低速重視で軽量なV10へ、移行し始めています。
でもやっぱりエンジニアの夢は、イーブンファイアリングで澄んだエキゾーストサウンドのV12が良いんでしょうね。
このエンジンについては、以前
プログで紹介しましたので、そちらもご参照のほど。
そちらには、ロータス / イスズの走行動画もリンクしてあります。
これほどの完成度を誇っていたならば、1度は実戦で見たかったですね。
ベレット GTX
ベレット GTRの元になったモデルです。
搭載されたエンジンは、117クーペ用の1600cc DOHC G161W。
ノーマル120psだったものを、160psまでチューンされていました。
レースデビューは、1968年。
1969年の鈴鹿12時間耐久では、総合優勝しています。
当時のライバルは、この2台。
トヨタ 1600GT
「コロナ」ではありません。
「トヨタ」の1600GTです。
ベレットと同じ、1600cc DOHCの9Rを搭載。
ノーマル110ps、レース仕様では150psと、まさにベレットとはガチのライバルです。
そういえばトヨタ1600GTも、最初は「トヨタ RTX」の名で参戦していました。
プロトで実戦投入し、熟成後は市販車へ。
その辺りもベレットと似ています。
スカイラインGT
プリンス時代に製作された、元祖「スカG」です。
4気筒1500ccのエンジンルームを切断、延長し、6気筒2000ccを押し込んでいます。
2000cc 6気筒のG7は、ノーマルで125ps(S54B)、レース仕様は150ps。
この3台、ほんと性能が拮抗していたのです。
レースで鍛えられた、ベレット GTX。
満を持して1969年、ベレット GTRと名を変えて市販されます。
プロトクラスから市販車クラスに変更となった、GTR。
実はいすゞワークスは、GTRで参戦していないのです。
それは何故か?
スカイラインが、S54 2000GT-BからC10 GT-Rへ進化してしまったからです。
相手は2000cc DOHC。
ノーマルでも160psを誇ります。
ベレット GTRの1600CCでは、もう太刀打ち出来なくなっていたのでした。
ところで、ベレット GTX。
私の印象と、なんか違います。
初めて見たのは、ドライバー 1980年 1-20号。
この本で特集されていた、いすゞ DOHCパワーの記事です。
ここでベレット GTXが紹介されていました。
特徴的なのは、リアフェンダーに設けられたエアダクト。
リアデフ冷却用に取り付けられたそうです。
これが最初の写真にはありません。
もしかすると、この青いモデル、最終進化型なのかもしれません。
今回の展示車両です。
グリルが後期型なので、GTXではありません。
正確には「GTR」表記ではなくなった 「GT type R」がベースの様です。
さすがにGTXは現存しないのかぁ・・・
でもGTX、実はレース参戦終了後にも現存していました。
ドライバーに掲載された、青いモデル。
記事によると、栃木いすゞでレストアされた、とあります。
という事は1980年には存在していた事がわかります。
さらに調べていくと、驚愕の事実が!
しかもそれは、みんカラのブログにありました。
ベレットGTXが走行可能状態で存在している、という記事です。
写真を見ると、ヘッドライトの有無や、ステッカー等が、栃木いすゞ車とは違います。
ですがリアフェンダーに貼られた、年代の合っていない2代目いすゞエンブレムは同じです。
このブログの作成は2012年。
8年だったら、GTXは今も現存しているのではないか? と期待が持てます。
もしもGTXが現存していたならば、このクルマはいすゞにとって歴史的遺産級。
個人でコレクションする範疇を、もはや超えている様な気がします。
今はいすゞプラザもあるので、公の場所で展示されるに値するクルマだと思いますが、今はどうなっているんでしょうね。