車瘋老頭のブログ一覧

BWV562 のお話です。

バッハ作曲のオルガン曲「幻想曲（と未完成フーガ）ハ単調 BWV562」，

クラシック音楽の楽曲は同作曲家，同ジャンル，同形式，同調性のもので

複数の作品が存在するので「作品番号」によって識別されています。

一番多く目にするのが「Op.（Opus）」という記号。

これがモーツァルトの作品だと「K（Kochel）」，

バッハの作品だと「BWV（Bach Werke Verzeichnis）」となります。

BMW ではない，ということだけ判っていれば大丈夫です。（笑）

昨晩衛星中継されたエリザベス女王の葬儀の最後に

棺を教会から送り出すところで演奏されたオルガン曲がこの曲だったのです。

この幻想曲は「対」となるフーガが未完成であることと相俟って

曲調も地味であることから一般的な知名度は殆どありません。

葬儀で演奏される音楽の選曲には女王の意向も働いていたそうなので

葬儀を通して演奏された音楽が全て地味で玄人好みの渋いチョイスだったのは

確実にエリザベス女王の意向が反映されたものと思います。

やんごとなき方々の趣味というのは我々庶民のそれとは大きく異なります。

今上天皇陛下が華やかなヴァイオリンではなく地味なヴィオラを嗜まれる

というのもそれに通じた嗜好なのでしょう。

尤も私がこの "BWV562" に注目したのには別の理由がありました。

楽曲には指示されていませんがこの楽曲は

「１段手鍵盤」と「足鍵盤」を持つパイプオルガンで演奏されます。

そんなこの曲ですが，手鍵盤で演奏される４声部を２群に分け

フランス古典派の書法に倣い「５声フーガ」の体裁で

「上２声を右手が上段手鍵盤で」，「下２声を左手が下段手鍵盤で」

と役割分担するアレンジを検討したことが私にもあったのですが，

「５６～５７小節（3'09"～3'15"）」と

「６８～６９小節（3'44"～3'50"）」の書法が

右手と左手それぞれに可能な指の開き（距離）を超えてしまって

第三の手の助けを借りないと演奏できない音のあることが判明して

アレンジを断念しました。

また確かに派手さとは無縁の楽曲ですが

対位法の妙味は遺憾なく発揮されており

実に通好みの楽曲であると言えるでしょう。

やんごとなき御方のチョイスかぁ…。（笑）

なんかいいなあ。