目的 |
修理・故障・メンテナンス |
作業 |
DIY |
難易度 |
 初級 |
作業時間 |
30分以内 |
1
正直MR-Sはあまり関係ない整備手帳なのですが、タイヤ交換に関するちょっとしたコツや小技などをいくつかに分けてまとめておこうと思います。
おおっぴらに言うことでも無いので書いていませんでしたが、私はタイヤに関わる仕事を40年以上やっている人間です。
プロドライバー車両のタイヤ交換をスポンサードサポートしていたこともあります。
なので一般の人よりは多少、交換のコツや小技を知っていると思うのでそれらについて少し書いていこうと思います。
タイヤを手組される方も増えたように思いますし、手軽な交換店も増えたので「こういうこと書いたら商売あがったりなんじゃないか??」
とも思ったのですが、これから書くような技術部分を評価してショップ選びしている人なんて極めて限られた人たちだけだと思ったので書いちゃおうと思います。
どうせ書ききれませんしね。
長いですが、よければ読んでください。
「その1」はバランス取りについてです。
2
みなさんは「軽点マーク」はご存知でしょうか。
これは知っている人が多いと思います。
タイヤに黄色でマークされており、その名の通りタイヤの中で最も軽い場所に刻印されています。
そのためここをホイールで最も重くなりやすいバルブ部分に合わしたりするわけです。
ですがこちらはどうでしょう。
3
この赤点は「ユニフォミティマーク」と言います。
なんとなく、こちらのほうが知名度が無いと思いますね。
(すべてのタイヤメーカーで採用されているわけではないからだと思われます)
こちらはタイヤの中で「外径がもっとも大きい部位」に刻印されているマークです。
ホイール外径の最も小さい場所にも刻印があるのでそこに合わせます。
合わせますが・・・
社外ホイールにはこの刻印が無かったりします。
(マークは主に白や青等で刻印されています)
純正では鉄チンホイールはもちろん、アルミホイールでもけっこうあるんですけどね。
(マークの例は次の画像4枚め参照)
軽点マークとユニフォミティマーク。
2つあるけどどちらを優先するでしょうか?
4
つまり
『重量バランス重視か?』
『真円性重視か?』
と言うことです。
その答えはショップさんによると思いますが、ユニフォミティマーク(真円性)を優先することが多いです。
なぜなら重量バランスは、ウェイトで調整する余地がありますが、凹凸の調整は難しいからですね。
そして実はこの「凹凸バランスを取る」というのがけっこう難しく、腕の見せ所なのです。
(専門用語はあまり使いたく有りませんが位相合わせとも言います)
ホイールバランサーというのはバランスをグラム単位で測定できるので、ある意味完璧なものではあるのですが凹凸に関してはけっこう曖昧です。
極端な話、フラットスポット(急ブレーキをすることでタイヤに発生する平らな面)があってもバランス取り自体はできてしまいます。
ですが走るとボヨンボヨンです。
これでは効率よく路面をとらえられません。
「どうすればきれいに回るのか?」と言うシンプルな話なのですが、ここがタイヤにとって相当に重要な部分なのです。
5
知っている人は知っていると思いますが、レース参加車両などでは数レースごとにハブベアリングを交換してたりします。
嘘みたいな話ですが、新しいハブベアリングのほうが抵抗なく回ってタイムが上がっちゃうので交換するわけです。
当然、異音や振動なんかが出ているわけではありません。
(異音や振動が出てるのは論外という感じです)
同じようにタイヤも重量バランスに加え、凹凸バランスが取れていないと効率よく回らないのです。
「速度出さない限り、振動出ないしいいんじゃない?」
って人もいらっしゃると思いますが、ハブベアリングのたとえと同く。
振動を感じるレベルだと論外だと言えます。
たしかに低速しか使わないのであればバランスの崩れの影響は小さいですが、なくなるわけではありません。
タイヤとはたわむものですし、車体との間にはスプリングやダンパー、ブッシュもあります。
また、バイクなどと違ってタイヤも4つあるのでハンドルの付いていない後輪1つの狂いなどの場合は症状に気づきにくいです。
他のタイヤがカバーしてしまいますからね。
それなのに車体を通して体で振動を感じるレベルになっているのならば、足回りは相当暴れながら回転していることは想像に容易いです。
揺れると言うことは、地面に強くくっついたり弱くくっついたりするわけなのでタイヤのグリップも一定に出ていません。
それどころか車のタイヤは構造上、横ブレが大きく、太いタイヤを履くスポーツタイプのチューニングカーではその量も必ず大きくなることがわかっています。
こうなるといくら腕の良いドライバーが乗っても、限界時のコントロールは難しくなってしまいます。
つまり、効率よく回らないことによるパワーロスだけでなく、コーナリング限界や安定性も大なり小なり下がるのです。
何より。
気持ちの良いハンドリングと言う、誰しもが求める要素から離れていってしまいます。
具体的には、運転していると怖い感じがしたり、右コーナーと左コーナーで違う感覚がしてしまったりします。
こうなるとセッティングを外しやすくなったり、調整の泥沼にハマってしまったりしやすいです。
これらを防ぐために一工夫してみようと言う感じです。
6
と、言うわけで本題の小技です。
いくつかありますが、まずは
・ホイールのみで回してみる
です。
ホイールバランサーを持ってない人がほとんどだと思うので、ホイールバランサーではなく、ジャッキアップした車につけて回すなどすればOKです。
そして目視で、どう振っているかを確認します。
新品でもバランス用の刻印があることからわかるように、微妙に振れがあったりします。
ましてや使用されたことのあるホイール、特にスポーツ走行で使用されたものは小さな歪みがあることが多いです。
(荒れた路面や、縁石のある場所で走る車両は特に)
このときに直径の凹凸や、左右のブレをホイールにメモしておき、ユニフォミティマークを合わせたり、ローテーションや裏組する際の参考にします。
これならホイールにマークのない社外ホイールでも真円を意識できるようになります。
(見る部分はイン側とアウト側両方。事項の画像7枚め参照)
それと
・ホイールにタイヤを取り付けた後にも回して確認する。
です。
組み付け後に振れを発見したら、再度ビードを落として、位置をズラしてから組み付けます。
これをホイールとの相性がいい位置が来るまで繰り返します。
なぜこうなるのかをきちんと説明するのは難しいのですが、ホイールとの相性のいい位置というものが存在します。
(凹と凸が組み合う場所を探すイメージ)
相性の良い場所で組んでおくことでニュータイヤでのアタックを無駄にしません!
この作業は当然、ビードを落としての組み直しなので手間がかかる作業です。
正直に言えば、私も全員の組付けでこの調整をするわけではありません。
中には軽点マークをバルブにあわせていないと無知だと文句を言ってくる人もいますね。
そういった場合は余計なことせず組んだりします。
文句を言われにくいというのもありますが、軽点重視での組付けの方が重量バランスには優れるのでウェイトが少なくて済みます。
ウェイトが少ないと腕が良いと思っている人もけっこういるのでユニフォミティマークとホイールマークの両方が存在しても、あえて使用しないショップさんもいらっしゃいますね。
バランスの狂いに気づかない人も多いですが、スポーツ走行をするドライバーさんだったり、競技に参加したりする方の場合は感覚が鋭敏なので、凹凸をみつつ、マッチングの良い場所が来るまで組み直してバランスを取るようにしています。
この作業はすべてのショップさんでやっているかと言うと、ほぼやっていない作業だと思います。
作業賃が変わるわけでもないのに、わざわざ落とし直してまでバランスとってくれるところは少ないと思います。
(大手量販店なんかだと組み直しなんてしてたら上司に怒られると思いますし)
なので、そういうところを見つけたら大事にしたらいいんじゃないかと思います。
工業製品に普段から触れている方、職業ドライバーの方、スポーツドライビングをする方などは私の作業をジーッと眺める方が多く。
作業の方法などが気になる人が多いようですね。
また、ご自分でしない場合でも、タイヤ代に比べたらバランス取りの代金なんて安いものだと思うので、私はケチるところではないと思っています。
特にスポーツ走行なんて、タイヤを使い切れているかどうかが勝負の肝みたいなものですからね。
7
まとめ!
タイヤバランサーも完璧ではないので、私は目視での確認を大事にしています。
なのでご自身で交換される際も、タイヤの上下の振れや、左右の振れをそれぞれ目視で確認することでより綺麗に回る組付けができるようになります。
綺麗に回っていない場合は面倒ですが一度落として位置を変えて組み付け、相性のよいポイントをトライ&エラーの要領で探すと良いと思います。
また、ホイールのみで回すことも必要です。
所持しているホイールの癖を見たり、相性を確かめつつ組んだりすることで、より良い位置での組み付けができる可能性が高まります。
アジアンタイヤなどはタイヤの振れが大きいことが多いですし、良いポイントを探すだけでも結構違いますよ!
これらは使用中のタイヤを裏組するさいにも使えますし、もちろん使用中のタイヤを別ホイールに使う場合なんかでも有効なテクニックです。
ちなみに!
最初に凹凸バランスをとっておくことでタイヤ寿命にも良い影響があります。
卵型やおにぎり型に減ったタイヤを何度見たことか。
バランスが狂ったまま乗り続けるといずれこうなっていくのです。
そうなるともう真円バランスとるのは絶望的なくらい大変です。
(重量バランスは取れます)
タイヤ寿命後半まで性能を維持したい方ほど注意すべき事柄ですね。
また、ホイールの状態を時折確かめておくと、クラックに気付いたり、歪みに気付いたりできるのでたまにはチェックするのがおすすめです!
8
タイヤとホイールに絞ったことなので、マニアックですし、正直需要が無いような気がしているので仰々しく「秘密その1」とか書いた割には続けるかは不明です・・・。
次回があるとすれば
・スポーツ走行で発生するタイヤとホイールのズレの防ぎ方
・実は存在するタイヤとホイールの馴染み
・実は多種多様にあるホイールの落とし形状について
・ビードのシワや噛み方で変わってしまうタイヤバランス
などでしょうか。
ホイールの落とし形状についてなんかも、案外知らない人多いと思います。
(カタログでもホイールの顔はみても、落としまでは見ない人多いですし、そもそも載ってないことも多いので)
同じノーマルリムでも手組もしやすいかんたんなホイールもあれば、向かない高難易度のホイールもあります。
けっこうメーカーごとに違いますね。
(メーカー内でもちがいますが)
また同じリム幅、同じインチ数でも内包できる空気の量が違ったりします。
タイヤやホイールを組み続けていると答えの出ない不思議な現象を経験したりもします。
正直、タイヤについては私も、未だによくわからないことだらけです。
少々マニアックなまとめとなってしまいましたが、どこか一箇所でも参考になりましたら幸いです。
ではまた、あれば次回!
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