
1965年(昭和40年)の年末、
あるトランジスターラジオの生産が終了する。
B5版のサイズくらいはあるだろう、大きめである。
高校卒の初任給(手取り)の2倍の販売価格、このラジオには
皮製のカバーが標準装備されているようだ。
「アポロンAR64」という型式のトランジスターラジオ、AM放送とFM放送の2バンドが受信可能。
こんな写真を見ると、ラジオ放送が聴きたくなりますね。
ど~してなんでしょうね? by 増田明美
今、時代は、BCLなのかも知れない。。。?
ところで、日本でFM放送の本放送が始まったのは1969年(昭和44年)。
1964年の発売なので「AR64」らしいのだが、このラジオでFM放送が聴けるようになるのは暫く経ってからのことなのだろう。
さて、ここからが本題(だと思う)。
ヒロイン・みね子は、茨城県奥茨城の農村に生まれ育った高校生。
参考までに、茨城は「いばら
ぎ」ではなく「いばら
き」ですので、お間違いなく♪
東京オリンピックで賑わった1964年(昭和39年)の秋、東京へ出稼ぎ中の父が失踪してしまう。
翌春の高校卒業後、みね子は東京墨田区・向島のトランジスターラジオ組み立て工場の会社(向島電機)で働くことになる。自宅への仕送りと、東京で父を探すためである。
工場のすぐ隣にあるのが、乙女寮という名の自社寮である。
みね子は幼馴染の時子と一緒に上京したのだが、同じく1965年に上京・就職した2名の女子社員、さらに先輩2名の合計6名と同じ部屋で寮生活を送ることになった。
みね子の母・美代子と時子の母・君子は、子供が同級生、同じ農家の嫁、という立場が影響しているのかしていないのかは知らないけど、大の仲良しである。
しかし、お互いを「奥茨城で一、二を争うべっぴんさん」と意識している。
「べっぴんさん」と言えば、四つ葉のクローバーの葉には、それぞれ「勇気・愛情・信頼・希望」の意味があるのだな。。。
乙女寮の朝は早い。
午前6時の起床時間には、橋幸夫・吉永小百合の「いつでも夢を」が大音量で流れ、いやでも叩き起こされる。
1964年、橋幸夫、と言えば、、、
連続テレビ小説「あまちゃん」で、岩手県北三陸に歌謡ショーで現れた橋幸夫が、花束贈呈で壇上に上がった天野ナツと「いつでも夢を」を歌った1964年の出来事は、琥珀の勉さんには忘れられないシーンである。
みね子たちが勤める向島電機は、朝8時が始業時間だ。
朝礼では、工場主任の一声で、その日の業務がスタートする。
その一声とは、
「みなさ~ん、ご安全に!」
やっと、
今日のスキー猫さんのブログに追いついたぞ♪
働き始めて間もない頃、慣れない生産ラインでみね子はミスを多発する。
基板へ部品を挿入していく作業なのだが、部品を差す位置や向きを間違えてしまうのだ。
それでも同僚たちに励まされ、なんとか一人前の工員に育っていくのだが、、、。
その年の秋、突然、給料の10%カットが言い渡される。
順調に生産台数を伸ばしていた「アポロンAR64」なのに、なぜ?
ひょっとして、「とと姉ちゃん」の出版社が発行する「あなたの暮し」の製品テストで、AR64が酷評されたのではないか、と推察してみた。
・東京では受信できるものの、地方へ行くとラジオ放送が全然受信できないとか
・他社製品に比べて、大きくて、重い、電池がすぐに無くなってしまう、とか
・一年を過ぎると、故障して使えなくなるとか?(○○タイマーだったり!?)
⇒⇒⇒ 酷評の結果、設計をやり直す必要があったのではないかと思ったのだけど、理由は全然違ったようだ。
東京オリンピック開催で好景気に沸いていた時代だと思ったら、翌年の冬に向島電機は倒産してしまうのである。
1965年(昭和40年)は、日本は不景気に襲われていたのだ。
倒産に伴って、従業員も全員解雇という悲惨な状況へ陥った。
主力製品であったトランジスターラジオ「アポロンAR64」も製造中止…。
組み立てラインの機器類は、負債の返済のために売り払われる運命に、、、。
どうなる、みね子たち、、、?
つづく
by 中村梅雀
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Posted at
2017/06/01 21:08:28