
2月11日、その猫ちゃんは苦しみながら息を引き取りました。
片道一車線の道路。きついカーブを曲がりきった先に猫が倒れていました。
対向車が来ていたので猫の手前で止まり、対向車が進んでから猫を轢かない様に避け車を路肩に停めました。
猫の倒れていた場所の直ぐ側に自営業を営まれているお店があったからです。
猫ちゃんは既に命を失っているように見えましたが「もしお店の人の大切な家族(飼猫)なら、どんな状況でも病院に連れて行くだろう」と思い、お店の人に声を掛けました。お店の人の猫ちゃんではありませんでした。
私がお店の人と話をしている時に、スクーターで走って来た女性が猫に駆け寄り、声を掛けながら頭を撫でてあげていました。
猫は生きていたのです。苦しそうに荒い呼吸をし、口とお尻から血を流しながら。
お店の人が何枚もタオルを持って来てくれ、向かいのお店の男性は段ボールを持って来てくれ、私と男性の二人で休日でもやっている動物病院を探して電話を掛け、バイクの女性が大切に抱きかかえて段ボールに猫ちゃんを入れてくれました。
事故があった場所は私の自宅からも近い場所だったので、休診日なのは承知の上で、誰か出てくれと祈りながら掛かり付け病院に電話を掛けましたが休診のアナウンス。
Google Mapで周辺の動物病院を検索し、営業中の表示の付いている病院が3件。2分で到着出来る一番近い病院に電話をし、治療費は私が払う事を伝え、至急診療を行ってくれる様にお願いしますが、医師が手術中で診る事が出来ないとのこと。「そこをなんとか!」2分で着けるなら命が助かるかも知れないと思い、必死でお願いするも「もう一人の医師も手術中でどうしても診る事が出来ない。手があくまで時間が掛かるので他の病院を探した方が早いですよ。」と優しく言われ、次の病院に。
呼吸は荒いがまだ生きる力がある事、治療費や手術代は全て私が払う事を伝え直ぐに診て欲しいとお願いすると、医師に確認してくれ、受入れて貰えることに。到着迄に15分掛かる事を窓口に伝え、バイクの女性は飼い主さんが来るかもしれないので暫く事故現場に居てくれるとの事で電話番号を交換し車へ。一刻を争う状況なのに15分。2分で行ける病院があるのに。
私の家にも2匹の老猫がいて、昨年、一匹が腎臓を悪くし、もう一匹は糖尿病で生死を彷徨う瀕死の状態に。いつ逝ってしまうかも知れない日を何日も乗り越え奇跡的に命が助かりましたが、診療費とは別に1週間の入院で15万。その後の通院・再入院、再々入院等で3ヶ月で70万。
ウチの子達は由緒正しい雑種です。捨てられていた猫達です。猫なのにとか雑種でしょ?とか言われましたが、自分の命よりも大切な家族です。
事故に遭った猫ちゃんは垂れ耳で茶トラ。多分スコティッシュフォールド。間違いなく飼い猫だと思いました。
飼い主さんが見つかったら、今日の治療費は返してくれるかな。どう考えても手術が必要だから困ったな。今日から下手したら3ヶ月くらい入院するかも知れないなぁ。参ったなぁ。飼い主さんが見付かっても掛かったお金、返って来ないだろうなぁ。仕方ない。まぁ、今日の分もカードで払って、後は何とかするべ。見捨てる事は絶対に出来ないと分かっていても、またお金が掛かるなぁと逡巡。。。
でも助けたいでしょ。何も悪く無いのに車に撥ねられて、生まれてからまだ2歳か3歳くらいなのに。目の前で苦しんでる。
善意の人がくれた段ボールとタオルに包まれ、猫ちゃんをずっと励まし続けてくれたバイクの女性に見送られて、ゆっくりだけど急いで病院に向かいます。
「大丈夫だからね。絶対に助けてあげるからね。なんにも心配する事ないょ。お母さん(飼い主)にまた会えるからね。元気になって帰るんだょ。」ずっと声を掛け続けます。
猫は荒い息遣いを繰り返しながら起き上がり、まん丸の目で振り返って声を掛ける私の顔を見つめます。苦しい筈なのに優しい顔をしてこちらを見、そして倒れます。
「ダメだょ。無理しないで寝てな。お母さんも後からきっと来てくれるから。お母さんから離すんじゃないんだょ。また戻れるからね。お母さんに会えるからね。だから絶対に良くなって帰ろう。絶対に大丈夫だからね。助かるからね。助けるからね。助けて貰うからね。絶対に。だから無理しないで寝てな。もう少しで病院だからね。」「痛いよね。苦しいよね。ごめんね。こんなに小さいのに苦しい思いさせて。」
猫は2度起き上がり、まん丸の目で私を見つめ、倒れ、病院まであと3分の所でまた起き上がろうとして途中までしか起き上がれず、ウゥゥ〜と声を上げバタッと倒れました。息遣いも速く短くなりました。
あと1分。早く着け!この野郎!大丈夫、絶対に助かるからね。助けるからね。助けて貰うからね。猫が倒れ込んでいる段ボールを抱え病院に飛び込みます。扉が2枚!この野郎!クソッ!受付けに話をすると直ぐに診察室に通され、状況を伝え、「自分の猫ではないし、飼い主もいるだろうが、兎に角、今日の治療費は全額自分が払います。その後の治療費も自分が払うので助けてやって下さい。お願いします。」
猫ちゃんやワンちゃんを連れた飼い主さんが7,8人。心配してくれたと共にいつか自分の大切な家族にも起こり得る事として恐怖を抱いたことと思います。
30分が過ぎ、医師から呼ばれ診察室に入ると「酸素吸入などもして出来ることはしましたが駄目でした。肺挫傷と骨盤も。肺挫傷になると30分くらいで。撥ねられて直ぐに連れて来て頂いたと思います。猫ちゃんは今、身体をキレイにしています。栄養状態も良い猫ちゃんだったので矢張り飼われていた猫ちゃんだと思います。この後どうしますか?保健所に引き取って貰う方法と火葬場に連絡して引き取って貰う方法があります。どちらも無料ですよ」と教えて頂き、連休明けに火葬して頂きました。
バイクの女性には猫ちゃんが亡くなった事を連絡し、現場近くのお店の人には猫ちゃんを探している人が尋ねて来た時は、飼い主さんが望むなら私に連絡をくれるようお願いしました。
12日から飼い主さんが探しに来ていないか?電柱や掲示板、掛かり付けの動物病院に訪ね猫の掲示がないか?出来る限り探していますが未だ飼い主さんに出会えていません。
動物との交通事故は物損事故として扱われます。つまり、警察への報告義務と道路上に動物が倒れていると後続車が踏んだり避けようとして事故を起こす危険があるため、速やかに動物を移動させなければなりません。命があれば救護するのは当たり前のことです。
『運転手は人身事故、物損事故などの事故を起こした際に、道路交通法第72条により危険防止措置義務と警察への報告義務を負っています。事故を起こした場合は、直ちに車を停止して、道路上に散らばった危険物の除去、負傷者の救護などをしなければなりません。」
『警察へ交通事故の報告義務を怠った場合は、道路交通法第119条により「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金」に処せられる可能性があります。動物事故であっても、立ち去らず速やかに報告しなければなりません。』
猫はとても我慢強く、愛情深い動物です。
どれだけ痛かったことか。どれだけ苦しかったことか。そんな状態なのに何度も起き上がりまん丸のお目々で私を見つめていた。
私はその目を忘れる事が出来ません。
タイトルの猫の縫いぐるみの画像はネットからお借りしました。
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2024/02/18 12:15:12