このご時世もあって、自分は試乗に行く機会はめっきり減っている上に、シルバーウィークには家人が倒れて休日診療の医療機関を探して受診したり、とそれどころではなく大わらわでした。幸い家人の体調も回復、ようやく一息ついたので、先週、ヤリスクロスを試乗してきました。
世の中ハイブリッドですが、試乗は個人的好みから純ガソリン車を選びました。最上級グレードのZの2WD。
個人的にはTNGAとしてCH-Rについて2台目の試乗でした。
上記が実際に試乗させていただいたクルマです(ディーラーサイトからリンク)
■良いところ
・これぞトヨタ!な総合点の高い走行フィール
試乗して、強烈な感激はなかったですが、さすがトヨタ!と思わせる出来! 「走る」「停まる」「曲がる」がこのクラスとしてはレベル高くまとまっていると感じました。ステアリング操作が、ブレーキフィールが、アクセルペダルのレスポンスが、内外装の飛ばし方からは意外すぎるほど?自然でクセがありません。運転に興味のない人でもすぐに普通に運転できる、なかなかありそうでない稀有な出来と思います(特に国産車では)。
純エンジン車は決してパワフルというわけではないですが、TNGAの恩恵か、はたまたハイブリッド前提のシャシーだからか、モーターなどハイブリッド由来の機構がない分、車重の軽さ、軽快感が好印象でした。平地+αの起伏のところでは全く力不足は感じず、CVTもダイレクト感が高く、このクラスのパワートレインとしては十分と思いました。
足回りも18インチのタイヤを履いていることを考えれば、路面の凹凸をいなすしなやかさが快適な走行フィール、静粛性の高さも相まって、予想以上に上品な、車格からは想像以上の出来を感じました。
ボディも剛性感は十分。ヤリスのイメージからはだいぶ大きいサイズ感に最初は面くらいましたが(担当営業氏も「エンジンとか一部共通ですが、基本的にヤリスと別格です」と断言)、運転する上では、ボンネットが見えること、シートの着座位置が(普通のコンパクトカーよりは)高いこと、ガラスエリアの広さなどから、運転に不慣れなドライバーにも、心理的負担も軽く感じられるかもしれません。車幅は1765mmで、5ナンバー信奉ユーザーにも、車内の広さとを天秤にかけてぎりぎり許容範囲では、と感じました。
デザインもCH-Rは耐久消費財としてはやり過ぎと個人的には考えているのですが、ヤリスクロスはそのあたり、うまく処理してきていて、デザイン寿命はもう少し長そう、と思いました。
■残念なところ
一言でいえば、諸々コストカットされている全てが残念。
そのカットした爪痕を隠さず見せるのは、もはや開き直りでしょうか・・・
・コストカットされたシート
コストカットの最たるポイントがシートの出来。腰部の支えがなく、ランバーサポートが一番効いていない状態なのかと思いましたが、そもそもそんな機能もなく。クッションが薄いだけでなく、シートフレームのバネ自体が柔らかすぎる印象。長距離を乗ると相当に疲れるシートと思いました。コンセプト(とお値段)に見合った造りにとても思えません。
例えば、今は亡きラクティスのシート(せめてシートフレームだけでも)を流用してくれると相当変わったのではと思います。(もちろんそんな簡単な話しではないのは承知の上で)。まぁおそらくそうやって過去の資産を流用しても、経営陣の要求する製造コストのダウンの目標には見合わない、ということなんでしょうね。
シートといえば、表皮デザインは、Zグレードは茶色系の合成皮革とセンターが布ですが、合皮の色合いといい布部分の柄といい、正直、良いと思えない・・・。少なくとも自分にはとても安っぽく、野暮ったい印象。ナウなヤングのハートにはこれが刺さるんでしょうかねぇ(^^; ただ営業氏も「黒内装はないか、と訊かれることが多いです」と売り難そうでした。
・コストカットの犠牲になった?パッケージング
さらに根本的な問題として、シートの位置とステアリングの位置(角度)が煮詰め不足に感じました。シート位置に対してステアリングシャフトの位置が微妙に高いのです。じっくり位置合わせすれば、着座位置とステアリングのバランスがしっくりくるポジションがピンポイントであるかどうか、という印象。
どちらかというと、(何かの事情で)車高ありきで決定された室内高から無理やりシートの位置が決まり、TNGAのシャシーの都合からステアリングシャフト位置・角度が決まり、ステアリングとシートの関係性は二の次三の次、まぁこんなもんでエエやろ的なヤッツケ感を感じました。(つまりパッケージングを煮詰める開発費がコストカットされている?)。
このあたりの雑さは、10年前よりむしろエスカレートしている気がします。トヨタが、というより、業界全体として、CAD上で済ませて実機での開発をケチっていて、品質レベルがダウンしてきている、というのはうがった見方でしょうか。。。。
・エクステリアデザインも・・・
デザインはCH-Rより生っぽさが少ないのですが、まだまだ煮詰め不足な印象。それが一番表れているのは「ウルトラマン」とも揶揄されるフロントデザインでしょう。最近のトヨタ車ラインアップのなかでは開口部やライトなどのパーツの面積が小さ目(おとなしめ)ですが、かといって面質を高めた形跡もイマイチで、MCでド派手なデザインに見直されてくる可能性はありそうだなぁ、と思いました。ライズ・ロッキーからみるとデザインも開発コストを抑えられている印象をもちました。
・・・と書きながら、最初に書いたように、クルマとしてのまとまりは相当なもの。
例えばクルマの買い替えが迫った、クルマに詳しくない(興味のない)一般ユーザーが来店して、このクルマを試乗すればたちどころに魅了されて契約するだろうなぁ、つまり大ヒットの素養を感じたクルマでした。自分は、例えばシートの出来が結局我慢ならなくなりそうで選択外ですけれど(^^;
■「有事」のクルマづくりとは
新型コロナが猛威をふるうなか、ただでさえ販売に「仕掛け」が必要な耐久消費財の代表格である、クルマの販売は大変だろうことは想像に難くありません。
幸か不幸か、国内外を問わず、自動車メーカーは10年余前に、リーマンショックという危機の経験があり、さらに日本のメーカーでは東日本大震災の経験も経て、「有事の際の開発・経営・販売」のノウハウを培ってきました。ただそれは、残念ながらユーザー本位ではなく、ひたすらに「いかに上手くコストカットするか」であり、今回のこの危機にもそれが適用されるのは想像に難くありません。そうそう、日本にはコロナ以前に消費税増税も猛威をふるっていますしね(しかも現在進行中)。
ヤリスクロスは今回のコロナ騒動の前に開発は殆ど終了していた筈、つまりそのコストカットの洗礼を正確には受ける以前に開発が終了していたでしょう。となると、コロナ禍に開発されるクルマはいったいどうなってしまうのだろう、と暗澹たるキブンになりながらディーラーを後にしました。
あ、今回の営業氏は入社後数年の若手でしたが、とても丁寧に対応頂き商品知識もなかなかの、優秀なヒトでした。「この人に担当になって欲しい」と思わせるキャラクターでした。なかなか厳しいご時世ですが頑張って欲しいと思いました。
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試乗 | クルマ
Posted at
2020/10/03 21:32:16