新型N-WGNが発表、先行予約していたカタログが届いて数週間、時折眺めていますが、個人的には
違和感が拭えません。今回はそのお話し。
■キーワードは”プレーン”
ティーザー広告でフロント、リアの写真を見たとき、デザインの個人的な第1印象は悪くありませんでした。(先代N-WGNと別路線だと思いますが)
多くのところで書かれているように、今回のN-WGN、テーマは「プレーン」でしょう。キャラクターラインを極力廃して、とにかくシンプルな造形に徹しているように見えます。
サイドビューはクォーターガラスがなく太いCピラー、真っ先に思ったのは、4代目ワゴンRのサイドビューです。
当然ながらN-WGNの仮想敵の一台はワゴンRですが、ホンダはよりストレートにワゴンRを目指して開発したんじゃないかなぁ、と思いました。
個人的にはフロントの造形も良いのですが、ノーマル版のリアは好みです。
■実は凝った面造形
ラインはシンプルですが、面造形は結構凝っています。判りやすいところでいうと、例えばフューエルリッド。
単なる面になるところ、ちょっとした変化を付けるだけで結構変化を感じますよね。
ボディの抑揚もこういう形で付けてます。
Aピラーを強調する凸造形ですが、ここで凹みを造って、ドア側面に抑揚を形成させる意味もありますよね。
要は、規格幅一杯のところでデザインするための「苦肉の策」の苦労の跡が偲ばれます。
ウナ丼さんの以下の動画が詳しいですね。
(1:22秒当たりから)
■細部に見る疑問点
ところが見続けていると、個人的には「?」なデザイン処理が彼方此方見受けられ、気になってきました。
その典型が、リアドアの造形です。Cピラーとのチリの寸前で、外側に向けてめくれ上がるような段差(C面的な造形)があります。
ドアのキワが、このように造形された例はあまり見られないと思います。
通常はガラスとドアなどの「段差」のさらに外側(外周)に、平面の縁取りの造形がなされる筈。
(例としてトコットのドア造形を紹介。リアドアとCピラー周囲に注目↓)
クルマのデザインの基本は連続性と思います。線や面をフロントからリアにいかに連続したデザイン・造形で処理するか、が最も基本かつ重要なデザイン要件(デザインの基本)でしょう。
なので、チリで連続性が損なわれないよう、ドアにはボディとの面の連続性を意識したデザインがなされます(ボディ剛性など構造的な要件もあるでしょうが。)
今回のN-WGNのリアドアのように、クルマのデザインの”不文律”を逸脱したデザイン、「新しい造形を提案した」というのがメーカーの言い分でしょうか。たしかに初期こそ物珍しさはあっても、新鮮さが薄れた後は、あっという間に質感の低さ、悪いイメージだけが残り、結果販売不振を招く原因となる。今回に限らず、クルマのような工業製品で「奇をてらった」デザインは本来避けるべきだと思います。(逆に奇をてらうなら、消費者に有無をいわせない「高い説得力」も併せ持ったデザイン品質が臨まれるでしょう)。
今回のN-WGNのデザインにネガティブな印象を持つ人のなかには、上記のような「不協和音」を無意識に感じている人もいるのではないでしょうか。
そういえばこのリアドアの断面形状の処理ですが、ホンダは4代目ステップワゴンのリアバンパー回りでも同じような造形をしていましたね。
リアフェンダーとバンパーの境界の部分です。
ドア下部のキャラクターラインを、バンパーとボディのチリで表現したつもりだと思いますが、自分には「ボディを擦って歪ませた痕」「バンパーが歪んでしまった」かのように見えて好きになれませんでした。キャラクターラインとチリは別にすべきでは、と思います。
■まさに「大人の事情」
ではリアドアに縁を造れなかったか、というと、今回のコンセプトでは実質無理でしょう。
ドアに縁を追加するには、リアドア開口部の後端を延長してCピラーを削るしかなく、そうするとフューエルリッドと干渉してしまいます。
逆にドアの開口位置を動かさず、リアのグラスエリアを削って縁を作る・・・のは、室内空間の広さをウリにしたい営業サイドが首を縦に振らなかったのでは、と想像しています。
そういう社内の様々な都合のせめぎ合いで決まった、まさに「大人の事情」の産物が今回の面構成でしょうね。
結果、プロダクトとして成立していないデザイン(あくまで私見)になってしまったと思います。
Cピラーにクォーターガラスを設けたくないのであれば、結局は初代N-WGNの造形に落ち着くのだと思います。
■ある意味、今の国産車の開発現場の象徴
最初に書いたようにメーカは「プレーン」な造形を標榜していますが、要は「(検討期間が少なすぎて)デザインが生っぽい」のです。もっと面質を熟成させて普遍性を感じさせるデザインにまで落とし込んでからリリースすべきなのに、造形が中途半端に見えます。
とはいえ、実際には素人が想像しえない設計要件の多さ、ライバルに勝つための新たな要件も山のようにあるでしょう。そのなかで出来上がったのがこのデザインであり、もしさらにデザイン検討期間を延ばす必要があれば、それはそのまま販売価格上昇に繫がります。
かくもクルマの開発は岐路に立たされている、ということかと思います。
■名前はアレに改称しなくて良かったの?ホンダさん
ところでこの顔の造形(特にライト回り)は往年のステップバンを意識してますよね?
「あの」フロントデザイン(だけ)で「N-ONE」と言い切ったホンダさん、「N-ステップバン」に改称しなくて良かったの? などとイジワルな妄想もしてしまいます
ともあれ今週いよいよ発売開始のN-WGN。試乗が可能になるのは実質ディーラーのお盆休み明けかな? 実車を見るのが楽しみです。
Posted at 2019/08/04 15:11:06 | |
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