
「右を向いても 左を見ても 馬鹿と阿呆(あほう)の絡み合い」というのは故 鶴田浩二の歌の一節だけれど、今の時代なんだかそんなふうに見えてしまうこともしばしば。
そこで、ここはやっぱりみんカラ。
「みんなのカーライフ」である。
あまり辛気臭い話題はやめよう。
好きなクルマの話にしばしお付き合いを・・・。
何年も前にネットでたまたま見かけたレーシングカーがあった。
その姿に一瞬で眼を、いや心を奪われた。
ところがその画像があったサイトが海外のもので、
和訳してまでそのマシンの詳細を調べる情熱がなかった。
それが最近になって偶然にもネットの「クルマNews」みたいな記事で
そのマシンのアウトラインが紹介されていた。
私の心を奪ったのはこのマシン。
アルファロメオSE048SPである。
世界スポーツカー選手権1992シーズン用に開発されたグループCカーである。
製作はあのアバルトが請け負ったという。
史上もっとも美しいクローズドボディのレーシングカーは?と問われたら、
「モダンカテゴリー」ならランチアLC2、ポルシェ956、
「クラシコカテゴリー」ならポルシェ917とフェラーリ330P、
そしてアルファロメオTipo33と答える。
そしてこのアルファロメオSP048SPは、
私の中でのモダンカテゴリーにランクインすることになった。
NA3.5リッターV10というレイアウトも素晴らしい。
しかし、この悩ましいほどに美しいプロトタイプカーは
日の目を見ることがなかったという悲しい経歴を持つ。
もともとこのV10エンジンはこのSE048SPのために設計されたものではない。
このエンジンは164プロカー、コードネームSP046への搭載を前提に
開発されたものだった。
TOP画像がその164プロカーである。
このプロカーというシリーズ、実は今の感覚で見ると
とんでもないレギュレーションだった。
「市販車の外装であれば、中身はなんでもOK!」
このとんでもないレギュレーションに真っ先に手を挙げたアルファロメオは、
当時のフラッグシップモデルの164をチョイスし、
4ドアセダンの外装はそのままに、ほぼF1の中身をブチ込んだ。
このプロカーの話を雑誌で知った当時、
「それならホンダはCR-Xやインテグラの外装に
F1のエンジンを載せてレースをするかも・・・」
と、勝手に盛り上がったものだった。
しかし、こんなトンデモレースに手を挙げるメーカーはアルファだけで、
他のメーカーは噂すらなかった。
結局このプロカーレースは、1戦も開催されないまま消滅という憂き目にあう。
今では辛うじてイタリアGPでリカルド パトレーゼが
164プロカーをデモランをする様子が観られる。
ちなみに、この164プロカーを製作したのは
MRD(Motor Racing Development)、あのブラバムである。
(パトレーゼは当時ブラバムのドライバーだった)
プロカーの消滅後、今度は世界スポーツカー選手権の話が立ち上がった。
ここではNA3.5リッターのエンジンがそのまま使えるようになり、
アルファロメオはここぞとばかりにSE048SPを発表した。
164プロカーのために作ったはいいが、
シリーズ消滅の影響で行き場がなくなったエンジンを使うには
願ってもない状況となったわけだ。
ところが、私が最近読んだ記事の言葉を拝借すれば
「このエンジンはよほど運がなかったらしく」
なんとまたしてもエントリーする予定だったシリーズが消滅してしまう。
世界スポーツカー選手権も、他メーカーの手が上がらず、
プロカー同様に「幻のシリーズ」となった。
私の記憶では、この「3.5リッターNA」というレギュレーションは
バーニー エクレストンがトヨタをF1に引っ張り出すための策略だったという説がある。
3.5リッターのNAエンジンをまず耐久用に作れば、
同じく3.5リッターNAのF1にも参戦するだろうという目論見だ。
しかし当時のトヨタの開発スタッフはその目論見を
「まったくの素人が考えること」と一蹴した。
「そもそも耐久用とF1では設計からして違います。
耐久用としてエンジンを作っても、それをF1に転用することは不可能です。」とのこと。
そんなわけで、この極めて美しいプロトタイプレーシングカーは、
ついにV10の歌声を響かせることがないまま静かに眠っている。
全体の雰囲気はレーシングカーと言えどもやはりイタリア車、
どこなくランチアLC2にも似ている気がする。
圧巻のリアビュー。
1枚目の画像ではリアのカウルはないが、
こちらは80年代から流行したカウルが装着されている。
それにしても美しい!掛け値なしにカッコイイ!
アルファロメオというとDTMでの活躍もあって、
モータースポーツシーンで栄光に彩られたメーカーのように言われているが、
実はけっこう「ズッコケ」もあったりする。
前述のように意気込んでマシンを造ったはいいけれど
シリーズが成立しなかったり、
ターボ時代のF1では唯一のV8(1.5リッターでV8!)で打って出るなど、
その情熱の割に結果を出せなかった歴史もある。
しかし、ドイツや日本のメーカーのように堅実で合理的なレイアウトではなく、
好み(多気筒エンジン大好き等)や情熱でレースをやって、
さらにクルマとしての美しさを表現することを忘れない姿勢に
魅力を感じずにはいられない。
これはアルファロメオに限らず、
フェラーリをはじめランチアやフィアットやマセラッティにも通じる。
やっぱりイタリアは魅力に溢れている。
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Posted at
2021/01/21 22:56:45