今回は、「ヒラタクワガタの飼育と卵の産ませ方、幼虫の育て方」についてを説明します。
ヒラタクワガタは、注意点(後述しますが)を除けばオオクワガタ、コクワガタに次いで飼育初心者に向いている種類です。
日本本土の♂です。大きさは29~76mmです。(飼育ギネスは90mm😳❗❗)
日本本土の♀です。大きさは26~41mmです。
成虫の飼育に関してですが、
プラケースに昆虫マットと止まり木、木の皮を入れます。
ケンカをするので、交尾以外は1ケースに1匹ずつ入れてください。(特にヒラタクワガタの場合)
炎天下の場所は、虫が弱るので、厳禁です。
なるべく日かげで、風通しがいい場所に置いてください。
エサは昆虫ゼリー、リンゴ🍎もしくはバナナ🍌をあげてください。くさりかけたり、無くなりましたら、交換してください。
ときどき、きりふきで水をあげてください。
日本のヒラタクワガタは冬眠します。寒くなりましたら、マットを深めに入れます。
時々、きりふきで水を与えます。
真冬の間は、毛布やダンボールをかけてください。
たまに暖かい日には活動しますので、昆虫ゼリーを入れておきます。
6月頃から本格的に動き出します。
産卵についてですが、
クワガタムシは、「木(ホダ木)に産卵する」、「ホダ木を粉砕したマットに産卵する」、「木、マット両方に産卵する」の大きく3パターンに分かれまして、ヒラタクワガタは「木、マット両方に産卵する」です。
♂の気性は大変荒く、大顎で挟む力は強烈(全クワガタ最強)で、この大顎が凶器となって♂が♀を殺すことも多いので、交尾の際はワイヤータイなどで大顎を固定すれば安心です。(挟まれると、なかなか離してくれませんし…💦、指を挟まれると間違いなく血が出ます…😱、実際に経験があります…😰)
(写真は石垣島産)
交尾のために小さいプラケースにオスとメスを入れます。
1週間後にオスとメスを分けます。
野外でとれた♀は、ほぼ交尾済みですので、あえて交尾をさせる必要はありません。
産卵セットですが、
卵を産ませるためのクヌギ、コナラの木(なるべく柔らかめ)を用意します。ホームセンター、通販で購入します。
木を十分に湿らせないと卵を産みません。木がすっぽり入るバケツなどに水を充分入れ、木を半日位付け込んでおきます。
つけ終わりましたら、3時間位日かげに置き、余分な水分を取ります。
メスが卵を産みやすいように木の皮を取り除きます。
プラケースを用意します。プラケースの大きさは、縦15センチ横25センチ、高さ15センチ位です。
クヌギマット(出来れば微粒子)を用意します。
ケースの下にクヌギマットを入れます。
マットをよく混ぜます。湿り具合はマットを握るとダンゴになるくらいです。
クヌギマットをガチガチに固めます。ヒラタクワガタはマットにも産卵をしますので、ガチガチに固めるのがポイントです。
産卵木を2本入れます。余裕があれば3本以上入れます。
クヌギマットを産卵木が完全に埋まるように埋めていきます。
ゼリー、転倒防止の止まり木等を入れ、交尾したメスを入れます。
フタをします。約1カ月後にメスを取り出します。幼虫をたくさん取りたい時はメスを別の産卵ケースに入れます。
メスは卵を20個~30個くらい産みます。卵は3ミリ位で約1カ月で幼虫になります。
順調に産卵すると、ケースから卵、幼虫が確認できます。
産まれたばかりの幼虫は5ミリ位の大きさです。
幼虫はクヌギマット、菌糸瓶をエサにします。
次に幼虫の育て方ですが、「個別のマット飼育」と「菌糸瓶」がありまして、「菌糸瓶」の方が大きな成虫に羽化する事が出来ます。
「個別のマット飼育」ですが、
産卵ケースからメスを取り出して約2か月後、新聞紙の上にマット、産卵木を取り出します。
マットに幼虫がいないか丁寧に探します。
次に産卵木を割ってみましょう。木を押してみて柔らかくなっていたら、幼虫がひそんでいる可能性が高いです。
産卵木は、木目にそって、慎重にマイナスドライバーで割ります。
木を割っている途中、木の中におがくずがつまったトンネルがあれば、幼虫が近いです。
トンネルにそって慎重に割っていきます。
見つけた幼虫はスプーンでやさしく取り出します。
卵を見つけた場合は、プリンカップにクヌギマットを入れ、孵化するまで待ちます。
エサとなるクヌギマットは、手でにぎって、ダンゴ状になる程度に水を加えます。
ビンやプラケースにクヌギマットをすりこぎなどで固めに詰めていきます。
幼虫を入れます。
フタとビンの間に紙などをはさんでフタをします。
約2か月位でマットの交換をします。その際、幼虫が新しいマットに早く慣れるために、古いマットを上の方に入れます。
「菌糸瓶」での飼育ですが、
菌糸瓶は、マット飼育に比べて大きく早く幼虫を育てる事が出来ます。
注意点は、孵化したばかりの幼虫には菌糸は刺激が強いので、ある程度大きくなってから(孵化して1ヶ月ちょっと)菌糸瓶に入れて下さい。
菌糸の白い部分が少なくなりましたら(幼虫が菌糸を食べつくしています)、新しい菌糸瓶に交換、幼虫を投入してください。
幼虫の♂♀の見分け方ですが、お腹に卵巣があるのが♀で、無いのが♂です。
これは、ほとんどのクワガタに共通しています。
最後に「幼虫から蛹そして成虫へ」です。
順調に育てば、日本のヒラタクワガタの幼虫は卵から半年(冬に温度管理)~1年半後に黄色くなり、蛹になる準備をします。
幼虫から蛹、成虫になるまでの間にケースの中をいじくりまわすと、死んだり、蛹化不全、羽化不全になることがあるので、なるべくケースを触らないでください。
蛹になるための部屋を作り出します。
背中がわれて、蛹が出てきます。
だんだん、蛹の色が濃くなります。
蛹になって3週間位たつと、蛹の皮をぬぎ始め、だんだん羽の色が色づいて、体も固まり始めます。
(写真はスマトラ島産)
卵から約1年(冬に温度管理)~2年位かけて、ようやく成虫になります。蛹の皮をぬいで、約1カ月で体も完全に固まります。
(写真は日本本土産)
まだ体を休めているので、動き出すまでさわらないでください。
(写真は、石垣島産)
動き始めてから、ようやくエサを食べます。
卵を産ませるには、エサを食べてから6か月位かかります。
ちなみに、日本のヒラタクワガタは12亜種(厳密に言えば大きく分けて3種類、亜種を含め細かく分けると14種類)に分類され、日本本土、八丈島、奄美、徳之島、沖永良部島、トカラ列島、対馬、沖縄本島、大東島、八重山諸島に分布しています。
その中でも、特徴的な種類を紹介します。
ツシマヒラタです。
(対馬、壱岐、五島列島、朝鮮半島)
最大体長は83mmです。(飼育ギネスは87.4mm)
日本最大体長を誇るヒラタです。
サキシマヒラタです。
(八重山諸島)
最大体長は79mmです。(飼育ギネスは84.2mm)
体の容積を含めると日本最大のヒラタです。
ダイトウヒラタです。
(南北大東島)
最大体長は54mmです。
日本のヒラタクワガタの中でも、最も小型ですが、唯一の特徴的な小豆色の体色を持っています。
ちなみに、本種はオオクワガタと同様に「種の保存のため」今年の9月29日~ヤフオクで取引が出来なくなります。
オキノエラブヒラタです。
(沖永良部島)
最大体長は67.5mmです。
大顎の裏側にオレンジ色の微毛が密生するのが特徴です。
スジブトヒラタです。
(奄美、徳之島、加計呂間島、請島)
最大体長は70mmです。
名前通り♂、♀ともに上翅にスジがあります。
日本のヒラタクワガタは離島ごとに特徴があり、コレクション性が高いです。
これから世界のヒラタクワガタの一部を紹介します。
パラワンオオヒラタです。
(フィリピン・パラワン島)
最大体長は107mm(飼育ギネスは115.3mm)
世界最大のヒラタクワガタです。
ツシマヒラタに似ていますが、大きさが違います。
クワガタ相撲界最強のクワガタです。
スマトラオオヒラタです。
(スマトラ島)
最大体長は101mm(飼育ギネスは107.9mm)
ヒラタクワガタの中で最も太い大顎の持ち主で、人気ナンバーワンの産地です。
ちなみに、写真のように顎が2タイプあります。
ダイオウヒラタです。
(ジャワ島)
最大体長は約90mmです。
角ばった大顎が特徴です。
アルキデスヒラタです。
(スマトラ島)
最大体長は104mmです。
写真のように顎が長いタイプ(長歯型)と短いタイプ(短歯型)があります。
現地では、一頭の♂に対し複数の♀が一緒に暮らすと言う報告があります。
全クワガタの中で最も横幅があり、短歯型は、クワガタ界最強の挟む力を持っていまして、同種他種のクワガタを容易に切断してしまいます…。
標本
クワガタの顎というよりも、ニッパーですね…。
周囲の変化に敏感に反応するあまり、交尾行動に入っていても♀を挟み殺す事がありまして、凶暴な種類の多いヒラタクワガタの中でも特に危険な種類です…。
世界には他にも特徴的なヒラタクワガタが沢山生息しています。
ヒラタクワガタは外国産亜種などの放虫による遺伝子汚染が問題となっていまして…放虫は絶対に辞めてください❗❗
以上で、「ヒラタクワガタの飼育と卵の産ませ方、幼虫の育て方」についての説明を終わります。