PCの画面に,むなしく光る「お振込の受付が完了しました」の文字。
とうとう,やっちまった(汗)
明日から卵かけご飯の日々だ(涙)
詐欺にあったのではない。
騙されて…いや(納得して)購入したクルマの支払いだ。
為替レートの影響もあるにせよ,あのセブンがとうとう大台の1千万越え。
昔,雑誌で眺めていたころは,確かこの半値以下だった。
あの頃は,四隅の車輪の上に座席とハンドルだけ付いたような,ほとんど詐欺みたいなクルマに「500万も払う人の気が知れない」と思っていたが…
今の自分は,その「気が知れない人」デュオである。
一旦,気を落ち着かせようとしていたら,ふと,あることに気づいた。
「もしかしてセブンって,911GT3よりも高くね?」
いや,車両本体価格ではない,重さ当たりの値段だ。
つまり車重1キロあたりの価格=プライス・ウエイト・レシオで比べると…
GT3の18660円/㎏に対して,セブン480Rは21267円/㎏。
ちなみに,上位バージョンに当たるGT3RSの22151円/㎏に対しても,480ファイナル・エディションに至っては24416円/㎏だ。
こう考えると,GT3のほうが「特売お買い得車」に見えるから不思議だ。
黒毛和牛A5ランクのサーロインでも,キロあたり2万前後だから,まさにセブンはそれに匹敵する。
もちろん,ステーキは食べればなくなるが,セブンなら残る。
いや,正確には,セブンも乗っていればクラッチもタイヤも消耗する。
和牛と違って消化はしないが,消費はする。
それどころか,事故れば,一瞬でウェルダンなんてことも…いや,考えるのはやめよう。
焼けたエンジンに,ドライサンプでかけるソースは化学合成オイル味。
何だか,その香りだけで食欲がそそる。
いずれにせよ,こんな美味しそうなクルマは,しゃぶり尽さなければもったいない。
もったいないというよりも,そうしなければ,この物語は始まらない。
ゴールデンウイーク。
それは,日本中のクルマが一斉に出かけ,日本中の道路が駐車場と化す,まるで水場を目指すヌーたちの大移動だ。
にぎやかな目的地とは裏腹に,流れる時間は音もなく長く,車内でひとつ歳を取る覚悟と悟りの境地が求められる。
中でも,修行僧のように眉間にしわを寄せているのが,私のようなマニュアル車のドライバーたちだ。
…停止,発進,また停止。
オートマ車の友人が隣でスマホ片手に猫動画を見てニヤついているのを横目に,こちらは無表情で「クラッチとアクセルワークの舞」をひたすら踊る。
しかもフロア限定,ソロ公演。
舞台袖はなく,あるのは汗と沈黙だけの,足だけ本気のミュージカル。
だが,そんな苦行にも,戒律を破る密かな楽しみがある。
私にとって,それは「クラッチを踏まずにギアチェンジをする」大人だけの快楽である。
そう,これはもう「マニュアル2ペダル」とでも呼ぶべき禁断の技だ。
教習所では決して教えてくれない,煩悩にまみれた闇メニューなのだ。
エンジン音に耳を澄まし,回転数をアクセルで合わせる。
タイミングを見極め,スッとシフトを押し込む。
決まれば美しい。
ギアが吸い込まれるように入るときの快感―――
それはもう運転ではなく,交信である。
回転数と心拍数がシンクロする瞬間だ。
慣れればほとんど決まる。
しかし,ときどきクルマが一瞬「は?」と不機嫌になる。
あれほど素直だったシフトノブに,突然電気が走ったように,ガリッとすねる。
「なに勝手なことしてんの」とでも言いたげに拒むのだ。
その横で,猫動画に夢中な友人は「この猫,怒った顔してんの」と笑っているが,こっちのクルマのほうがよっぽど怒っている。
やっと渋滞を抜け,私は疲労困憊(こんぱい),友人は猫動画を満喫…
そして私は思う。
「オートマだったら,こんな苦労もいらないのにな」と。
しかし,次の瞬間,ギアがスコッと決まり,エンジンが「お!いいねぇ」とうなずいた気がした。
やっぱりこのクルマでいい,猫より話が通じる気がするから…
初めて先輩からタケノコをいただいたのは,少々気まずい事情の後だった。
私のわがままで,ご面倒をお掛けし,謝罪に参じた春の日の午後。
竹林の奥から,長靴に鍬を携えた先輩が,ゆっくりと姿を現した。
応接間に通され,言葉に詰まる私に,先輩は何も言わずにうなづいた。
それが,赦(ゆる)しのしるしだった。
帰り際,駐車場で差し出された包みは,掘りたてのタケノコ。
無骨で泥だらけのこの春の恵みに,なぜか心が和らいだ。
あれから,春が来るたびに,先輩は欠かさずタケノコを送ってくれる。
それは,単なる季節の贈り物ではない。
あの日,無言の赦しをいただいた静かな続きなのだ。
竹に旬と書いて,筍。
十日で竹になる。
土の中から顔を出し,陽の光を浴びて一気に伸びる。
若いころの私のようでもあり,あの時の関係も,もしかしたらそうして再び芽吹いたのかもしれない。
水煮パックでは味わえない,土の匂いと時間の重み。
アクを抜き,丁寧に炊いたタケノコの味は,どこか懐かしい。
先輩の手と季節の恩恵が合わさって,ようやくたどり着く滋味がある。
旬を食べるとは,こういうことなのだと,つくづく思う。
あの竹林があるかぎり,この季節は続いていくのだろう。
だが,その時間もまた限られていると,どこかで知っている。
だからこそ,毎年届くそのタケノコに,私は変わらぬ想いと静かな絆を感じている。
春はめぐる。
タケノコもまた,春の味わいを運んでくる。
竹林の奥で鍬を振るう先輩の姿を想像しながら,私はまた今年も,タケノコの皮を一枚ずつむく。
グッタリしている犬を,動物病院に連れて行くため,クルマに乗せようとした途端,「あ,さっきのは演技です」とでも言いたげにスタスタ歩き出したり…
旅行に出掛けるので,犬を友人の家に預けに行けば,玄関前で前足を踏ん張り,見事なまでの拒絶ポーズ。
犬ってほんとに空気を読むというか,こちらの気持ちを察して豹変することがあり,たびたび驚かされる。
おかげで人間側が振り回されるのは,日常茶飯事だ。
犬に限らず,家族同然のペットたちは,確かな自己主張のワザを持っているように思う。
そんな存在は,何も生き物だけに限らない。
長年付き合ってきた愛車もまた,時にあからさまな気分屋に変貌する。
急いでいるときに限ってエンジンが掛からなかったり,助けも呼べない山奥で律儀にパンクするのだ。
機械のはずなのに,「今日は休みたい」とか言っているように思えてくる。
つい先日も,異音の止まない愛車を修理に持ち込んだが…
何ヶ月も鳴り続けていた異音は,ショップに着くなり,まるで,借りてきた猫のように静まり返った。
メカニックには「幻聴説」をほのめかされつつ,(私が嘘を言っていないか)愛車の様子を見たいとのことで,代車を借りる羽目に。
緊急出動するのは,走行距離10万キロ超えのベテラン,初めて乗るルーテシアである。
電子制御満載のクルマは,慣れるまでは厄介で,恐る恐る運転していると…
ルーテシアは何を察したのか?首都高の山手トンネルを走行中,ボンネットから白煙が上がった。
こいつ,それはちょっとやり過ぎだろ!
飼い犬に手を嚙まれるとは,まさにこのことだ。
なんとか狭い路肩に無理やり停めたものの…
何を期待しているのか?見ながら通過するクルマで,後ろにはあっという間に長蛇の列。
あたふたしていると,何処からともなく青い制服に身を包んだ首都高パトロール隊が,戦隊ヒーローのように登場。
パイロンを立てたり,レッカー手配も一瞬で,気づけば私はただの背景だった。
それにしても機械とはいえ,時に人を翻弄するこの駄々っ子ぶり。
意思のないはずのクルマたちも,案外こっそり心を持っているのかもしれない。
いや,持っていて欲しいと願う人間側の,ささやかなロマンなのだろうか…
※この場を借りて,今回の故障・渋滞に際し,多くの方々にご迷惑をお掛けしたことを深く陳謝申し上げます。
ドアは半分。ルーフはオマケ。雨と風はフリーパス。
そんなクルマ,セブンには突然の雨に備えて,カッパは自己負担の標準装備だ。
そこで,レインウエアを求めて登山とスキーの専門店へ。
「どちらの山に行かれますか?」と店員に聞かれたので,「ヒルクライムはよく」と答えた。
すると本格的な登山装備を勧められたので,「いや,運転して(汗)」と訂正。
少し考え込んだ店員がパッと顔を明るくして言った。
「あっ分かった!トラクターですね!高原牧場とかの…」
違う…けど,なんか…ちょっと…否定できない。
たしかにセブンは,むき出し・直撃・振動など,農耕機械感が満載だ。
そして帰り道で,ふと思った。
「トラクターのお客さん」なら,やっぱりワークマンだろう。
その足で向かったワークマン。
妙に安心できたのは,言うまでもなかった。
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