あの,ビアダイニング『シュマッツ』が,近所にオープンしたので行ってみた。
2025年現在,首都圏を中心に34店舗を展開する,ドイツビール専門店である。
そのネーミングが,いかにもドイツ語っぽいような,オノマトペのような…
いや,正直,最初に聞いたときは,思わず「ウルトラマンですか?」とつぶやいてしまった。
そう,「シュマッツ」って,ウルトラマンの「シュワッチ」にどことなく似ている。
まるで怪獣退治を終えたウルトラマンが,ビール片手に,「今日もよく働いた」と,ほっと一息ついているような声だ。
でも,よくよく考えると…
ウルトラマンは,300万光年も離れたM78星雲から,相対性理論など物ともせずやって来て…
毎週日曜日の地球の危機には,休日出勤もいとわず,身支度3分以内で急行してくれる律儀な宇宙人。
クリスチャンなのか?十字に交わした手の甲から,謎の光線まで繰り出す。
私たちの想像を絶する,超文明を有した存在なのだ。
それなのに彼が発する言葉は「シュワッチ」だけである。
どう考えても,語彙が乏しい。
グーグル翻訳も真っ青の一言主義。
怪獣の攻略マニュアルを読めるくせに,地球に来たらいきなり単語ひとつ。
どうなっているんだ,M78星雲。
いや,待てよ?ウルトラマンは,地球では母国語でしゃべる相手がいない。
だから,彼は,生まれ故郷とテレパシーで会話しているのではないか?
そう,人類の科学では及ばない,脳波で意思を伝えるやつだ。
それならば,あの「シュワッチ!」は言語ではなく,ただの掛け声だ。
じゃんけんに勝って「イェー!」と叫んだり,タイミングを合わせるときの「せーのっ!」みたいな,あれだ。
それに気づいたら,目から鱗が落ちた。
シュマッツも,もしかしたらそうなのでは?
ドイツ人がビールを持って「シュマッツ!」と叫んだら,それは「お疲れさま!」の意味だったり,「このソーセージ最高!」っていうテンションの現れかもしれない。
ウルトラマンとドイツビール。
共通するのは,気合いと情熱,そして語感の良さだろう。
結局,人は大事なときに「言葉」より「ノリ」で,気持ちを伝えるものなのだ。
そんなことを思いながら,私はシュマッツのカウンターで,弾けんばかりのソーセージを前に,一杯目のビールをあおった。
「シュワッチ!」…じゃなかった(汗)
「シュマッツ!」と(笑)
Wikipedia「シュマッツ(Schmatz)」より―――
「シュマッツ」とは,「幸福の音」を意味する擬音語。おいしいときに思わず舌が鳴る音や大好きな人の頬にキスをするときの音を表している。
車検証に記載された車台番号が,実車と違う!?
ディーラーからそんな連絡を受け…
きっと他のセブンと書類を取り違えたのだろう。
そんな想像を巡らしながら,駆けつけてみると―――
実際は,英数字の羅列の中の「たった一文字」の違いだった。
車台番号は,メーカーごとに意味が込められていて…
ケータハムでは,途中の一文字がハンドル位置を示している。
日本に輸入されるセブンの99%以上は右ハンドルなので「R」。
しかし,私のセブンは左ハンドル。
だから,正しくは「L」なのに,セブンは「R」だと思い込まれ,そのまますり抜けていたのだ。
再度,メーカーから証明してもらい,車検証・車庫証明・保険などの訂正をすれば完了。
いろいろ想像した割には,あっけない結末となった。
とある男が―――
交際を開始して数ヶ月になる彼女と,初めての旅行を計画。しかもハワイ。
二人で意気揚々と旅行代理店に出かけ,予約の手続を進めた。
申込用紙に記入を済ませ,最後にパスポートを提出。
それを見ながら転記していたスタッフの手が,ピタリと止まった。
そして,そっと彼女を覗き込み,次に彼を見てニヤリとした。
書類の性別には二人とも「男」にチェックが入った。
え゛ーーー!
彼が,彼女のパスポートを確認すると,性別は「F」ではなく「M」。
な…何かの間違いだ!彼女も否定している。
たぶんパスポートを発行する際に,何かの手違いで,今日まで気づかなかったのだ。
たった一文字。
けれど,情報化社会に於いては,一文字違えばクルマも人も,別の存在になってしまう世の中なのだ。
2025年4月21日,東京地裁は,67年前に都立病院で発生した新生児の取り違えに関する訴訟で,東京都に対して,生みの親を特定するための調査を命じる判決を下した。
病院で,赤ちゃんが取り違えられるなんて,ドラマや小説の中の話だと思っていた。
しかしそれが,まさか自分の身に降り掛かるなんて―――
いや,正確には「自分のクルマに」だけど。
我が家にやって来るはずだったのは,ケータハム・セブン480。ナロー(細身)ボディのS3仕様。
見た目は小柄だが,(鉄パイプの)芯がある,(アライメントが整った)鼻筋の通っている子だ。
そう思って,名前まで考えていたのに…
納車を控えたある日,ディーラーから電話が入った。
「すみません,ちょっと問題が発生しまして…」
聞けば,ナンバープレート封印の儀式で,その子の車台番号と,車検証に記載されている車台番号が,違っていたとのこと。
―――まさかの他人の子?
真っ先にそれが頭に浮かんだ。
そういえば,初めて面会に行ったとき,隣で眠ていた子もセブン480だった。
セブンは,他の子たちより泣き声が大きく,検査も多岐にわたる。
もしやどこかの過程で,書類が入れ替わってしまったのでは?
隣の子はワイドボディのS5仕様。
顔は似ているが,少しぽっちゃりしている。
どうりで車検証の値が,カタログ値よりも育ち過ぎていたわけだ。
…とはいえ,クルマの「取り違え」くらいでは大事には至らない。
ナンバーはまだ封印前だったし,車検証は陸運局で訂正してもらえば済む話だ。
何よりも,肝心の本人は,ディーラーでお利口さんにして待っていた。
間違って引き取られたわけではないし,それが,せめてもの救いだったのかもしれない。
けれど,ふと…思う。
もしも,他の人のワイドボディのセブンが,そのまま私の元に来ていたら―――
「みにくいアヒルの子」のように,想像していた色と全然違う,なんかデカいと感じながらも,愛せたのだろうか?
おそらく,それでも愛情を注ぎ,手塩にかけて育てるだろう。
のちのち出生の秘密を知っても,それを記した「戸籍」だけは,そっと胸にしまったままで…
駅のベンチで,隣の女性二人が何やら楽しそうに話していた。
「やっぱM3が効いたのよ〜」
「でしょ! 私なんて財布に入れてるもん」
「私は,絵馬も書いたわよ!」
M3ってあのMパフォーマンスの?
M3で絵馬?
マジか!新型?神社で先行展示とかしてんのか?
「御守りもちゃんと身につけてる。パワー倍増って聞いたし」
御守り?
…なるほど。BMW純正のキーホルダーか?
それとも,ECUチューンで,ターボのブースト圧を上げているのか?
あれは,もうすでに御利益の域だな。さすがドイツの縁起物。
「なんか,出会いの運まで変わった気がするわ」
「うんうん,わかる!流れ来るよねぇ〜!」
わかる!
M3に乗っていると,確かに信号も青続きだし,道も空いている気がする。
あれは,気のせいじゃない。たぶんクルマが運を引き寄せているんだ。
間もなく電車が到着し,二人は笑顔で消えていった。
家でスマホをいじりながら,今日のことを思い出し,何となく「M3 絵馬 御守」でググってみた。
う!何だこれは!
「●●天満宮>学業成就・交通安全祈願・縁結び…」
縁結び… え・むすび… エムスリー…
空耳アワー?
完全に,私だけ3シリーズだった(汗)
クルマのエンジンを掛けると,ほんの数秒,インパネが銀座のネオンのように光り輝く。
赤,橙,黄,はては青までも。
注意喚起のためとはいえ,あまりのバリエーションに「お前は占星術のカードか!」とツッコミたくなる。
数えてみれば,そのかず十数種類。
消えればホッと安堵するが,点いたままだと固まる。
それが,現代のクルマだ。
ところが,セブンはそんな常識を易々(やすやす)と裏切ってくれた。
「えっ!これだけ?」
点灯する警告灯は,たったの3つ。
これはもう,場末の酒場横丁レベルで,信号機と一緒だ。
戦に万全の備えをもってした,かの諸葛孔明も驚愕する少なさである。
まずは,その3つの紹介をしていこう。
最初は,エンジン警告灯。セブンにおいて一番恐れられているボスキャラで,最も大忙しのランプだ。
二つ目,バッテリー警告灯。これだけが油臭くなく,なんとなくテクノロジーの香りがする。
三つ目,ブレーキ警告灯。異常を知らせる黄色はないが,故障の際の赤色はある。すなわち異常はないが,故障はあるということだ。
そして,特別出演でメーターの外に,シートベルト非装着警告灯があるが,なぜマークが3点式シートベルトなのか?謎である。
それ以外はというと…
半ドア警告灯?いや,そもそもドアがない。
燃料残量警告灯?燃料計すら当てにならないから,クルマを揺すって確かめる。
ウォッシャー液警告灯?それがなくても,手を伸ばして濡れ雑巾で拭けば済む。
水温?油圧警告灯?男なら,片時も計器から目を離すな。
エアバッグ警告灯?セブンには,風船が膨らむ余地すらない。
ABS?パワステ?AT?ハイブリッド警告灯?SFに出てくるドリームカーのこと?(笑)
もはや「搭載していないものは,点灯のしようがない」という潔さが,逆に痛快である。
この潔さに感心しつつ… ふと気づく。
「あれ?排気温警告灯は…?」そう,あの赤い湯気の立った温泉マークのようなやつだ。
私の知る限り,セブンにこそ必要な警告灯のはずだ。
調べてみると,90年代後半から表示義務がなくなった。
理由は,それ以降のクルマは排気温が異常高温にならないから,とのことだが,「嘘つけ!」と叫びたくなる。
セブンのマフラーは,冬なら薪ストーブで,夏ならBBQの鉄板。
排気温の異常など日常茶飯事。
むしろ「正常な排気温とは何か?」を問い直したい。
まぁ警告灯がなくとも,熱で焦げたズボンの裾が何よりの警告灯となるのだが。
こうして見てみると,セブンの警告灯の少なさは,機能の欠如ではなく,「察する力」の要求なのだ。
ランプの海に頼らず,異音に耳を澄まし,振動を感じ取り,匂いを嗅ぎ分ける。
そう… それはもはや,森の妖精に会いに行く気分。
「考えずに,感じろ」である。
少しばかり簡素すぎて,ちょっと不安。
でも,それが逆に楽しい。
それこそが,セブン。
警告灯三銃士が今日もまた,静かに,だが,確実にセブンを見守っている。
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