きリぎリすのブログ一覧

外車には左ハンドルしかなかった子供のころ，伯父のベンツに乗せてもらった。
ドイツ車の重いドアを開け，おもむろに助手席に座ると…
え？イス硬（かた）っー！とびっくり。
友だちのお父さんのクラウンは超ふっかふかで，それこそが高級車の風格を備えたシートだと思っていた。
きっと舶来品は値段が高いだけで，日本製品のクオリティーが，世界を席巻する夜明け間近であることを，子供ながらに感じていたのだ。

時は過ぎ，ベンベーが六本木カローラと呼ばれていたころ，知人のベンベーで出掛けることになった。
うううっコレは…
子供のときに触られた感覚を，私のお尻は忘れていなかったのだ。
知人に言わせると，最初は硬く感じるが，時間が経つにつれ気にならなくなる。
特に長距離運転したときの疲労感は，国産車のシートとは比べ物にならないよｗ

それから自分でもクルマを乗り継ぐにつれ，知人の言葉が嘘でないことを実感している。
多少シートポジションが合わなくても，硬ければ何とでもなる。硬さこそ「命」と思い込むようになった。
時折り読む試乗記では，シートの硬さは評価されないが，路面の突き上げについては，上手くいなす足回りが良しとされている。
しかし，それとてフニャフニャシートでは分からないではないか！

アストン・ヴァンテージのシートはひどかった思いしかない。
本革張りで，いったいボタンが何個あるのか？と覚えられないぐらい多機能で，お前はマッサージチェアか！とツッコミを入れたいほど。
しかし，いくらカネの掛かったシートでも…
００７が敵に捕まり，椅子に縛り付けられたまま，拷問を受けているぐらい苦痛だった。
きっとジェームス・ボンドは，腰痛持ちに違いない。

どんな走行性能の良いクルマでも，座り心地の悪いシートでは運転に集中できない。
案の定，エンジンや足回りのパーツばかりでなく，いつしかシートのメーカーも注目されるようになった。
国産の雄ブリッドを手始めに，憧れだったレカロまで試した私だが，ここ数年はサベルトにハマっている。
あのシートベルトを代表する，イタリアンブランドのサベルトが手掛けたシートだ。

初めてそのシートの存在を知ったのは，アバルト５９５のときだった。
冷やかし半分で５９５の試乗に行った際に，デザイン性やホールド性は元より…
まるで私の背骨から骨盤，臀部の厚みまでトレースしたかのような快適性に惚れこみ，ついつい契約書にサインをしてしまった。

そして今回，フレンチカンカンＡ１１０の純正シートにも，サベルトが採用されている。
ローマではイタリア女性に相手にされなかった私を，いつでも背中から優しく包み込んでくれるので…
振り返って私も抱き締めて上げたいが，バケットでシートが倒れず，エビ反りはキツイ。
ならば，後ろからとも思ったが，２シーターなので，どんな体位を試みても，隙間に入ることは叶わなかった。
まぁ，背後からヘッドレストに腕を回し，恍惚とした表情を浮かべた痴態を，人前に曝しても困るけどねｗ