
車好きには酒好きも多い。
ご多分に漏れず私も晩酌は欠かしたことがない。
だから,一杯やってしまうと乗れなくなるので,夜な夜なこんな雑文を書いているというわけだ。
ところで,ずいぶん前にこんなガレージのCMがあった。
夜の帳(とばり)が下りたころ,ガレージのソファーで毛の長い猫を膝に乗せ,くつろいでいる男が一人。
趣味の愛車を前にして,ブランデーをゆっくり回しながら心地よい余韻にひたっている…
愛車を肴に酒を飲めるなんて,車好き冥利に尽きるし,こんなガレージ・ライフを私も送ってみたい。
しかし!現実はそんな甘くはない。
大概は,ドアを開けるのがやっとの狭い駐車場だったり…
縦列駐車の一番奥に追いやられて家族のパワーバランスを痛感したり…
あるいは敷地の片隅で雨ざらし・埃まみれだったり…
都市部では自宅から歩いて5分の月極駐車場や,機械式駐車場では,朝から順番待ちでイライラしたりと,苦労が絶えない。
シティホテルの地下駐車場へ入ると,スーパーカーがずらーっと並んでいることがある。
当然宿泊客の車両もあるが,壁際に鎮座しているザ・高級車は契約車両だ。
地下駐車場は,平置き,屋内,充電スペース,防犯などと良いこと尽くめだが…
それでもオーナーが自分のクルマの前にパイプ椅子を出し,うっとり眺めていたら警備員と間違われるだろう。
私は,通勤用と趣味用を分けたり,手放せないクルマがあって増車していたら,駐車場が4ヶ所になった。
マンション内の自走式と機械式,近隣のエレベータ式2台の計4台だ。
利便性やセキュリティー面,パレットサイズなどで使い分けているが,残念ながら停めたあとにクルマの傍にはいられない。
もちろん猫をなでながら,駐車場の前で立ち尽くしていたら…通報される(涙)
ここまで来ると,やはり男のロマン,夢の,憧れのガレージが必要だ。
それも,できればワインディングロードの麓に建てたい。
私の近所には峠道がない。だから,ウィークデーの夜は,何周しても300円の首都高を走っている。
その反動で,よく晴れた週末ともなれば,愛車をワインディングに連れ出し,爽快感を満喫しに行くのだ。
それならば,クルマは初めから駆け回る所に置いておく方が効率的だ。
駐車場の賃料は思いのほか嵩むので,それを田舎のタダみたいな土地代と建設費に充てれば済む。
現地までの交通費は,ガソリン高騰の折,往復の燃料費と高速代を考えれば,新幹線でかなり遠くまで行けそうだ。
さぁ!そうと決まれば,先ずは候補地選びから始めよう!
酒に酔ってウトウトしていたら,ソファーで寝てしまったようだ。
嫌な夢で目が覚めた。
多忙にかまけて,久し振りに山荘のガレージに行ってみたら…
敷地が落葉や枯れ枝で埋もれ,クルマが車庫から出せないばかりか,シャッターがイノシシの形に凹んでいて開かない。
裏口に回ると,倒木で窓が割れており…
室内は虫虫虫… クモの巣やらハチの巣もあり,慌てて外に飛び出すと,クマの足跡を見つけてしまった(汗)
男のロマン・夢のガレージは,驚愕の館,悪夢のアメージング・ガレージと化したのだった…

腕に覚えのある車好きなら,一度はスーパーカーに乗りたいと思っている。
ところが,スーパーカーに乗っているのは,車好きより富裕層のほうが遥かに多い。
残念ながら彼らは,高性能なクルマにドライブフィールなど求めておらず…
高額なクルマを腕時計のように宝飾品と一緒くたに捉えているだけだ。
その昔,身の程知らずな私はスーパーカーに憧れた。
しかしディーラーには,スタイリングや塗装の厚さ,内装のしつらえを熱く語る営業マンばかり。
日ごろクルマに無知な顧客しか相手にしていないのだろうか?
メーターに刻まれた最高速度をアピールされたときはさすがに閉口し,一瞬で興味は消え失せた。
それにも増してメーカー間のパワー競争は熾烈を極め,気がつけば素人がコントロールする領域は既に超えている。
だいたい自分に取って限界領域など埒外で,豚に真珠でもあった。
ところが近年のスーパーカーは,MT時代の重いクラッチで吹かし気味に煽るなんて苦労はない。
さながら高齢者用サポートカーのごとく,誰でも簡単に,安全に走れるように仕上げられている。
まさに豪華装備満載の高級車で,ドライブフィールのプライオリティが低い購買層に応えた結果がこれだ。
運転しづらいオバQみたいな服装のアラブの富豪や,一昔前までチャリだった中国人に買ってもらうためには…
クルマを電子デバイスにドロドロに漬けるのが値も張るし,手っ取り早い。
その最たる電子デバイスこそが,何を隠そうATである。
大パワーのマシンは,ATでなければ扱い切れず危険であるというのは,メーカーが流布した詭弁だ。
例えば,ハンドリングの応答性や,大型のキャリパーを納めるためには,タイヤの偏平率を下げるのが効果的。
確かにぺらっぺらのタイヤに無暗に大パワーを掛けると途端にホイールスピンを起こし,のたくって真っ直ぐ走れない。
でも,その対策は至って単純。厚いタイヤを装着し,もっとトラクションを与えてやれば良いだけだ。
F1に供給される分厚いタイヤを見れば一目瞭然である。
しかし,意味も分からず,薄いタイヤが格好イイと思い込んでいる素人を,わざわざ説得する必要はあるまい。
ATと絶妙な相性のトラコン等の電子デバイスで武装して上げれば事足りるし,なおかつ利益にも繋がるのだ。
そのうちステアリングすら握らない全自動運転のレースが始まれば,コースレコードは絶えず更新され続けるであろう。しかも,出走前の予想タイムと寸分たがわずに!
しかしこんなレースは見当違いで,運転していないドライバーを誰が応援するのか?
ドライブフィールの欠片もなく,高速移動手段と化したクルマで,リニアや自家用ドローンに太刀打ちできるのか?
気付いたら,運転する喜びを知る世代がいないなんて時代が来はしないか?
時代の変化に柔軟に対応しなければ生き残れないが,忘れてはならぬもの,変えてはいけないものもある。
どうも自動車業界は,自分で自分の首を絞めているように思えてならない。

ご存知,番町皿屋敷という怪談がある。
武家屋敷に奉公していたお菊という下女が,主人の大切な皿10枚のうち1枚を割ってしまい,手打ちを恐れ,井戸に身を投げてしまう話だ。
それから間もなく屋敷には,夜毎に井戸の底から「いちまーい,にまーい…」と皿を数える女の声が響き渡るのだった…
さぞや怨念に満ちた恨めしい哀声だったに違いない。
いちだーい,にだーい…
何度数えても…いくら寝ても覚めても…変わらない…
何が?…
ディーラーに並ぶMT車の台数である。
またその話題かい!とお嘆きの貴兄も,今度ばかりはお付き合い願いたい。
さてこの1年あまり,スポーツカーのスポーツカーたる所以について,自らの偏見を展開させてきた。
実際にそんなモデルが,どれだけ存在するのかを検証してみたい。
まず,どんな要素があったかをおさらいすると…
もちろんガソリンエンジンのライトウェイトスポーツが前提だが,気分が盛り上がるのが,以下の4つだ。
①マニュアル(MT)
②小型車のMTならば左ハンドル
③オープンカー
④2シーター
さらにドライビングプレジャーを高めるために不可欠なのがコーナリング性能。
それに必要な要素が,以下の4つ。
⑤ホイールベース・トレッド比=1・6前後
⑥ミッドシップ
⑦ダブルウィッシュボーン
⑧パワーウェイトレシオ=5kg/PS以下
納車待ちのクルマも含めて,愛車遍歴と照合すると…
見事8つとも該当したのがエリーゼ220Ⅱで,6つ半がセブン480,6つが981GTSと続く。
他のクルマで,この要件を全て満たすモデルはないかと探してみると…
あった!あった!ついに見っけたぞー!
現行モデルではないが,ガヤルド・スパイダーLP550-2とF430スパイダーだ。
どちらもスーパーカーなのにMTというだけで忌み嫌われ,滅びゆくクモみたいなモデルである。
しかしなぁ,ライトウェイトと呼ぶには,2台とも少々ふくよかでボリューミーな1トン半。
私は昔からデブが苦手で,追い求めているスポーツカーとは少し違う。
やっぱり車選びには,MTを条件から外さざるを得ないってことだろうか?
うらめしや~

一見一貫性がないような私の車歴だが,ことスポーツカーに焦点を当ててみると,ある傾向に気づく。
それは,ほぼほぼエントリーモデルであるということだ。
私はライトウェイトスポーツが好きである。
すると,ちっこいクルマばかりになり,おのずと廉価版モデルに行き至るというわけだ。
M2コンペティションはBMW・S型エンジン搭載のMモデルで最もホイールベースが短い。
エリーゼはロータスで,ボクスターはポルシェに於いて,それぞれ最軽量の車種に該当する。
ヴァンテージはベビーアストンの愛称でも親しまれ,その名が示す通り,アストンマーティンで最もコンパクトなモデルだ。
R58はミニ全15モデル中で一番車高が低く,アバルト595はズバリ見た目のまんまである。
何ゆえライトウェイトにこだわるかと言えば,加速力や制動力の優位性ばかりではない。
やはりコーナリングでの快感に尽きる。
ステアリングをしなやかに操り,狙ったラインをトレースする悦びは,何ものにも代え難いのだ。
コーナリング性能を追求すると,あえて安全マージンを取るために横Gを逃し滑りやすくしたドリ車もあるが…
私には滑りを自由自在にコントロールするだけの技量がない(涙)
だからクルマにその性能を求めると,帰する所グリップ限界の高さに行き着く。
それには車重やタイヤだけではなく,ボディ剛性やホイールベース・トレッド比,前後重量バランス,そしてサスペンションが重要なカギとなる。
ボディ剛性を強くすれば重くなるが,最近ではアルミを随所に使ったモノコック構造が一般化しており,安全性の見地からもその水準は高い。
次にホイールベース・トレッド比は,より小さくと言いたいところだが,直進安定性を失うなど極端過ぎるのも問題である。
知識がないので明言しづらいが,経験だけに頼ると私のツボは1・6ほどだろうか?
そして,エンジン搭載位置と駆動方式は,回頭性を重視するならばMRに異論はないだろう。
しかし,限界域が把握しにくい点も否めず,むしろ低重心に着目したほうが賢明と思われる。
目立たないが熟考を要するのがサスペンション。
理論上はメカキングギドラのような,コンピューター制御のアクティブサスペンションが最高峰だろうが…
私は同じ鳥でも叉骨を二つ並べた,ダブルウィッシュボーンに1票を投じたい。
コーナリング中もスプリングやダンパーに余計な力が加わらないため,ストロークがスムーズな上に…
ストローク量に関わらずキャンバー角の変化が少ないので,タイヤと路面の設置面が確保され,グリップ力が失われづらい。
これまでこの方式のクルマには何台か乗り継いできたが…
それらのどれもが味合わせてくれたオンザレールの感覚は,私をダブルウィッシュボーンの虜にした。
こうして整理してみると,自分の好きなクルマが見えてくる。
さて,次は一体どんなクルマが,私を至福の世界へ誘(いざな)ってくれるのだろうか?

幕張メッセで開催された東京オートサロン2024で目の保養をしてきた。
初公開のニューカマーやレストアされた旧車はもちろんのこと,ホイール,ブレーキ,サスペンション,過給機,エアロパーツ各種からバケットシート,レーシングウェア,レーダー探知機の類いに至るまで…
当たり前だが見渡す限り,ぜーんぶ自動車関連。
そう!これでなくっちゃいけない!
テンション爆上がり!これこそ車好きの祭典なんだ!
昨年10月のジャパンモビリティショーで肩透かしを食らっただけに,鼻息も荒く会場を見下ろした瞬間,興奮よりも安堵で力が抜けた。
祭りには付きものの,到着するまでの(友人の運転だけど)渋滞や会場の人混みに疲れ,休憩で美味いビールを飲んだら,ますますマッタリ。
でも,いいんだ!
人混みに阻まれ,隅々までブースを回れなくたって…
久し振りに美人キャンギャルの所に寄ったら,思いの外,劣化が進行していようと…
会場に向かうベコベコのドリ車を運転する女子を見掛けたり,大黒PAの何倍もある幕張メッセの駐車場に集結する,思い思いのクルマを眺めているだけで嬉しくなる。
何よりも仲間たちと一緒に,ライトを浴びた華やかな実車を前に,思う存分クルマ談義ができることが楽しい。
私はこの空気感が,たまらなく好きだ。
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