東京高速道路ってご存知だろうか?
それって首都高速道路と錯乱してないか?地元の人たちからでさえ,こう言われる。
D8もしくはKK線と言い換えれば,ピンと来る人もいるだろう。
首都高速都心環状線の白魚橋または八重洲線の西銀座から汐留まで,乗継所を経由する約2kmの無料区間があるが,あれが東京高速道路である。
首都高速の一路線と思われがちだが,所有も運営もまったくの別会社。
その歴史は東京高速の方が古く,1959年には一部区間が開通した。
認可の関係で,通行料金を取れないにも関わらず,直近の売上高は36億円を計上する。
これは,道路下に抱える国内随一の地価を背景に,不動産賃貸業を展開しているからだ。
銀座コリドー通りの西側一帯,および銀座ファイブや銀座ナインなどのショッピングセンターが,それらに当たる。
平たく言えば,同じ高さのテナントの軒を隙間なく並べ,その上を道路として供している会社だ。
首都高速は川を埋め立てたり,ビルを縫って走るため急カーブが多い。
Rのきつい魔のコーナーと言えば,4号新宿線・西新宿JCTから参宮橋カーブの88Rや,5号池袋線・熊野町JCTの85Rが有名だが…
それを遥かに凌駕するのが,KK線・土橋カーブの50Rだ。
私はこのコーナーを,ノーブレーキで旋回する。
それはルーレット族だからではない。制限速度40キロだからだw
それでも昔,ここで大失態をやらかしたことがある。
先日,「ドア開けバック」で少し触れたが…
免許取り立てなのに,トラックを運転する,配送のアルバイトをしていた。
教習車の次にハンドルを握ったのがトラックで…
言うなれば,飛行経験23時間のパイロットが,輸送機の操縦桿を握っているような暴挙だ。
ルートは毎日ほぼ一緒だった。
京橋で,ビールのPケースや洋酒が詰まった段ボールを積み込み…
無料区間の西銀座から乗って新橋で降りる。北上しつつ酒を配りながら京橋に戻るルートだ。
そりゃあ最初はおっかなびっくり,ハンドルの10時10分から両手を放せなかったが…
1週間も経つころには,片手ハンドル,くわえタバコで肘を窓枠に乗せ,ラジオのボリュームを上げながら走っていた。
若気の至りで,随分と世間を舐めていたものだ。
そんな私が洗礼を受けるときがきた。(はや!)
いつものようにKK線を走っていると,赤いスポーツカーがあおってきたのだ。
いっくら相手がスポーツカーだろうと…
こちとら路面の小さな凹凸まで熟知した,勝手知ったる庭みたいなもんだ!
それに,この先には高速では曲がれない,魔の土橋カーブがある。
だから,お前ごときに負けるわけにはいかねーのよ!とアクセルを床まで踏み込む。
相手も必死に付いてくる。
しかし,相手がコーナー手前でかなり減速しているのを見て,勝利を確信した。
コーナーを曲り切り,再びバックミラーを見た瞬間…
私は青くなった。
なんと積荷が半分なくなっている。大量の酒を道路にぶちまけてしまったのだ。
消沈する間もなく,トラックを(仕事で培ったドア開けバックで)道端ぎりぎりに停め,散乱した王冠やキャップを拾い出した。
せっかく稼いだバイト代を失いたくない一心である。
なぜ王冠やキャップばかりを拾っていたか?と言うと…バイト初日に,こんな説明を受けていたのだ。
もしも,ビンが割れて中身が漏れても,フタにビンの欠片が付いていれば補償されるので,絶対に捨てて来ないように!
とにかく金属という金属は必死になって拾った。
その間にも,避けて通ったり,見物する車両で,渋滞は始まっていたのだ。
もう引き上げなくてはと焦ったが,私の背中を押したのは,近づくサイレンの音だった。
慌ててトラックに乗り込み,逃げるように帰ったが,この先は余り記憶がない。
唯一,記憶に留めているのは…
リクエストを1回もかけてくれなかったラジオ番組の道路交通情報で「東京高速土橋付近で落下物の…」と流れ,不謹慎にも妙な嬉しさが湧いたのと…
毎日使っていた道路が,首都高速ではなく,東京高速だと初めて知ったことだ。
こんな苦い思い出が残るKK線だが,一昨年,2030年以降の廃止が発表された。
老朽化については,改修も検討されたが,狭い道幅と土橋の急カーブがネックとなった模様。
現在は,空中回廊として利用すべく,公園や遊歩道などの提言がなされている。
まぁ会社としては,裏の顔である不動産賃貸業が主力なので,渡りに舟だろう。
1959年の開通以来,KK線は都心を貫く幹線道路として,高度経済成長と共に日本の経済発展を支えてきたが…
ついにその役目を終え,長い歴史に幕を下ろす。
今まで長い間,本当にご苦労様でした。
ドアを開けながらバックする駐車を「ドア開けバック」と言うらしい。
何のヒネリもなく,つまらないが…
教習所では教わらない,このドア開けバックを,私は免許取得後すぐに活用するようになる。
当時18歳だった私は,運転免許が欲しくて欲しくて堪らず,借金までして教習所に通った。
その早期返済のために選んだバイトが,時給の良かった2トン車での業務。
京橋にあった酒の問屋で,銀座界隈の飲み屋から前の晩に注文の入った,それこそウイスキー1本でも配達するアマゾンの先駆けみたいな仕事だった。
それを翌日,一日何十件も縦列駐車を繰り返しながら配って回る。
駐車の際にトラックを真っ直ぐ停めたり,後方との間隔を掴むため,当時はドア開けバックが当たり前だった。
特に初心者の脳は,ミラーに小さく写った反転虚像より,肉眼で目視した実像を信用するから尚更だ。
おかげで私の縦列駐車は鍛えられ,以来,乗用車でも,この方法だけで通してきた。
ところが最近のクルマは,サイドシルが車体と平行でなかったり…
リアトレッドが広く,思い切り体をせり出さないと,後輪を確認できない。
それどころか,ドアを開けると,自動的にブレーキが掛かってしまう車種さえある。
これは言わずもがな危険防止の観点からだ。
開けたドアで,歩行者や障害物を引っ掛けたり,運転者が転落して,自車に轢かれることなどが指摘されているが…
法律で禁止される前に,メーカーの自主規制で待ったを掛けられた格好だ。
仕方がないので調子は狂うが,死角が多く危険でも,ドアミラーを頼って駐車している。
しかし,1センチ単位の微妙な調整が利かず,自己嫌悪に陥る日々だ。
駐車にそんな精度で停める必要があるのか?と問われれば,実はある。
使用している機械式駐車場のパレットは,幅190センチだが,入れるクルマの幅は187センチだ。
もうこうなると,毎回黒ひげ危機一髪か,ジェンガをやっている緊張感である。
ほんの少しでも油断しようものなら,ホイールをガリってしまう。
そんな私を尻目に,奥さん連中はアルファードをバックでスイスイ入れていく。
しゅ…しゅごい(汗)いつもながら,その秘めた熟女テクには激しい興奮を覚え,舌を巻くばかりだ。
皆さん平行感覚が抜群で,学生時代は,段違い平行棒か?平均台か?奥さんたちのレオタード姿が目に浮かびますw
それとも,ベンツのように,あやしい誘導装置でも付いているのかな?
いずれにしても,私には教習所で習ったはずの車庫入れの基礎がない。
ずっと自己流で上手くやってきたので,今になって苦労している。
そう言えば,カウンタック・リバースの人たちは,今頃どうしているのだろう?
どこかに大リーグボール養成ギブスならぬ,平行感覚矯正ギブスが売っていればな…
取り敢えずググって,アマゾンで注文すれば,明日ドア開けバックで届くかな?
笑ってる!… 怒ってる!… 泣いてる!…
駐車場で人と待ち合わせていた私は,よく響く黄色い声の主を探した。
お母さんに連れられて歩く幼稚園ぐらいの女の子が,クルマを1台1台指で差し,楽しそうに声を上げていたのだ。
眠たーい!… びっくり!… 疲れてる!…
言われてみれば,確かにそう見える。
改めて子供の持つ観察眼と想像力には,驚かされるばかりだ。
キッズ向けTV番組では,乗物や道具に顔が描かれ,擬人化されることもある。
まさにディズニー映画のカーズは,その典型だ。
クルマのヘッドライトやラジエターグリルは,まるで目や口のようでフロントマスクと称される。
しかしそこから表情を読み取る能力は…
いつも他人の顔色ばかり窺っている大人でさえ,感受性に長けた子供には敵わない。
ワンちゃん!… ネコちゃん!… ウサギさーん!…
子供って正直だし,かわいいな…なんて思って眺めていると,私のエリーゼの順番になった。
彼女はエリーゼを一瞬見て面食らい,私の顔を見た。
そしてお母さんの影に半分隠れながら,こうつぶやいたのだ。
カマキリうちゅう人…
うううっ
大人になったら,ゆっくり話し合おうねーw
朝からボーっとして,あくびばっかりしている事務員がいる。
実は彼女,アイドルグループの追っかけを趣味というより生き甲斐にしているのだ。
ライブのチケットが当選すれば片道何時間だろうと出掛けて行く。
翌日,会社があろうが,なかろうがお構いなし。
別に個人の趣味をとやかく言う気は更々ないが最低限の仕事はしろよ。
気はうつろで仕事も手に付かず中途半端で放り出して帰り,明日がんばりますと言ってたくせに,朝からあくびばかりじゃ周りが迷惑だ。
「課長,田中建設の佐藤さんからです」と,電話の取り次ぎをしたかと思えば…
首をかしげながら電話に出た課長が,受話器を置いた途端に「仲田建設の斉藤さんだろうがぁ」と怒っている。
「会長,明成弁ステンレスさんからです」と,聞いたことのない社名を告げたあと…
電話に出た会長の声に耳をそばだてていると「あぁ…メルセデスベンツ(シュテルン)さんかぁ」の一言に社内大爆笑。
別の営業が「この伝票打ち間違えてるぞ。キャッチング・フィルターに打ち直してくれ」
「ちゃんと打ってあるはずです(怒)」
「なに寝惚けてんだ!キャッシング・フォルダーって書いてあるぞ(怒)」
こんなこともあった。
出社時間がとっくに過ぎているのに姿を現さない事務員から電話が入った。
「起きてからずっと頭が痛くて…」
何だ何だ?ズル休みの申し入れか?昨日の夕方は元気にライブに出掛けて行ったじゃないか!
「頭の奥の方からズキズキするっていうのか…血管が心配なのでCT撮ってきます」
翌朝,心配した上司が診断結果を問いただすと…
「写真を見せてもらったら(血栓は)詰まってなかったです」
「プっ!自分でもそう思うのか?やっぱり(脳が)スカスカで詰まってなかったのか?」
バイパスで唸りを上げるランチア・ストラトスとすれ違った。
オイラの両肩には白い自分と黒い自分がちょこんと座り,交互に囁く。
「どうせレプリカだろう」という醒めた大人になったオイラと「追っ掛けて確かめに行こうぜ」という熱い子供だった頃のオイラだ。
そう言えば…ガキのとき小遣ためてプラモデル作ったもんな…
ランチア・ストラトス(成層圏)は,70年代初頭ベルトーネが開発を担い,ランチアが世界ラリー選手権(WRC)制覇を目的に生産した往年の名車だ。
生産台数は2年間で500台にも満たない。
WRCのホモロゲーションをクリアするためだった。
商売や利益は度外視し,まさにワークスチームが勝利の美酒に酔うために用意したとされるマシンである。
エンジンは,フェラーリからディーノ246GTに搭載されるV6ユニットの供給を獲得して,これをモノコックボディに横置きでミッドシップに配し190馬力を発する。
特筆すべきは,ホイールベース・トレッド比の〝1・51〟。
極端に短いホイールベースと派手なオーバーフェンダーまで広げられたトレッドは独特なスタイリングと共に抜群の回頭性を生んだ。
また,そのコーナリング性能を支えるためにピレリに専用タイヤを開発させるが,これが後の高性能タイヤの代名詞となるピレリP7である。
ランチア・ストラトスの走りはとにかく圧巻だった。
WRCでは向かう所敵なしで,74年,75年,76年と3年連続ワールドチャンピオンに輝く。
何よりそのスタイリングが格好よかった。他の参戦車両は,大衆車に毛の生えた程度の車種ばかりだったから,なおさら目を引いた。
今でも目に焼き付いているのが,イタリア国旗をあしらったアリタリア・カラーを身に纏(まと)うランチア・ストラトス。
それは,当時小僧だった大人たちのマインドを永遠に揺さぶり続けるマシンなのだ…
ところで来週オイラの元に新車が来る。
こいつのホイールベース・トレッド比が,何とランチア・ストラトスを大幅に凌駕する〝1・36〟ときたもんだ。
恐らくこの数値は量産車世界一だろう。
見た目は,まるでチョロQを実車にしたみたいだけど,果して真っ直ぐ走るんかい?
気になるインプレッションは,ステアリングを握ってからのお楽しみ。
…と,意気込んではみたものの国産車だけどね。社用車だし…
(醒めた大人になっちまったもんだ…)
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