むらっち劇場⑲ ≪fascinating≫

Ｙ
「アタシねぇ、結婚するんだぁ♪」



ポカポカと暖かい春の日差し中、その女は唐突に俺のガレージに現れそう言い放ったんだ





む
「ん… ああ… おお」

見事な不意打ちｗ



む
「てか、オメーまぁだ嫁に行ってなかったんか！？」

Ｙ
「ふふ♪むらっちさんには色々お世話になったよね。バイクが壊れた時はよく直してくれたもんね♪」

む
「ははｗ ヨンフォアな♪その後は？調子よく動いてんの？」

Ｙ
「ううん。今はナンバー切ってガレージで保管… 彼がね… あんまり乗るなって…」

む
「ふ～ん。まあ、彼もオメーさんの開けっぷり見て不安になったんじゃネーの？」

Ｙ
「かもねｗ」

む
「そっかぁ… それにしてもよぉ、バイクに乗ってるオメーさんの悩ましい後ろ姿がもう見れなくなるのが残念だねｗ」

Ｙ
「バカねぇｗ そんな事ばっかり言ってると奥さんに怒られるよｗ！」

む
「いやいや！ウエストからヒップにかけてのラインがヨンフォアの純正エキパイ同様に色っぺぇんだｗｗｗ」

俺は「もみじ饅頭」の手つきでラインを表現したｗ
Ｙもノリがよく笑いながら腰をクネらせてみせるｗ

Ｙはススキノで自分の店（クラブ）を構えた頑張り屋だ！
初めて出会った１７年前（俺は焼き鳥屋だったｗ）Ｙはクルマを持たず
バイク（ヨンフォア）で通勤してくるホステスだった！
たまたま俺の働いてた店の前でエンジンが掛からなくなったのを直してやったのが縁でいまだに付き合いがある



そんな昔話を思い出しつつの談笑中、俺の携帯が鳴り響く





む携帯
「チャ～チャチャ～チャ～チャラチャ～チャ～チャ～♪」
（こだわりのボーントゥービーワイルド・サビの着メロｗ）





ハタΣ（￣□￣；）と我に返った


む
「…んあ（￣Д、￣）…夢？」





それは夢だったのだ
俺はガレージ内の手作りの木製ベンチで春の日差しの中うたた寝をしてしまったらしい




む携帯
「チャ～チャチャ～チャ～チャラチャ～チャ～チャ～♪」

更に鳴り響く携帯





俺は工具箱の上に乗せた携帯に手を伸ばした
着信表示は友人のＫだった




む
「はい。むらっち…」

Ｋ
「久し振り…」

む
「お～ご無沙汰じゃネーの！元気してた？」

Ｋ
「ああ…うん」

なんだか歯切れの悪いＫ




む
「なんだよ！何かあったのか？」

Ｋ
「ああ… Ｙなんだけどさ…」

む
「Ｙがどした？」

む(モノローグ)
「今まで夢の中で話してたぞ！相変わらず色っぺぇラインだったぞｗ♪」

Ｋ
「Ｙがよぉ… Ｙがトンじまったんだ（夜逃げ）…」

む
「はぁ～～！？」



つづく