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2016年11月26日 イイね!

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第三話

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第三話












     5


そこは旭川市郊外、下村の経営するショップ「Garage SANTANA」だった。主にアメ車の中古車を取扱い、トランスポーターとしての偽装などを手掛ける。が、当然バイクのカスタムも行っている。
ここへKX500の改造をするため、バイクを運んできたのである。もちろん他の目的が無いわけでもないが…。










『Garage SANTANA』の室内整備スペースには、Snap on大型工具箱が並び、下村の愛車Z1000MkⅡと、ここでメカニックをやっている岩野のSUZUKI DR-Z400改450SMヨシムラ仕様も置かれている。

その横で岩野は、KX500をいじり始めた。今回はKX500に、17インチスリックタイヤ付きスポークホイールを取り付け、富良野市郊外で行われる「FURANO SUPER MOTO」に出場するための改造を施しているのである。




「いよいよ来週っスねFURANO SUPER MOTO」

メガネレンチを手に成海に話しかける岩野。




「うん。いよいよレース常勝軍団SANTANAに挑戦だよ ! 」

成海はにこやかに答え。右拳を岩野の前に突き出してみせた。

「でも手加減抜きで走ってよね。そうじゃないと本気で怒るからね ! 」




「もちろん ! でなきゃ社長… いやいや下村さんに怒やされちまうっスから」

同じく右拳を突きだす岩野。




それから程なくして、ホイール取り付け作業が終わり、岩野は右腕で額の汗をぬぐいながら、急に違う話題を成海に振って来た。

「ぶっちゃけ聞くっスけど、成海ちゃんて下村さんの事が好きなんスよね?」




急に後ろに向きを変え、KX500を点検し始める成海。顔が真っ赤になってしまったが、声だけは冷静に答えた。

「別にそんなワケじゃ…ただウチのおじいちゃんの代りに、アタシが下村さんと走れればなんて思ってるだけで…」




今度は成海の背中越しに語りかける岩野。

「その下村さんなんスけど、今度のレースは観戦に来るって言ってたっスよ」

体がピクリと反応する成海。




「なんせ成海ちゃんは、レジェンド・サードアイ輪道のお孫さんっスからね~。かなり気になってるみたいっスよ」




成海は真っ赤な顔を更に赤く染めあげ、嬉しそうな表情でKX500を見つめる。

「へぇ~そうなんだ」

しかし後ろを向いたまま、つれない態度で興味が無さそうに答えた。




『ふふふ。後ろを向いてても、耳まで真っ赤っスよ(笑)』 岩野は心の中で微笑ましく成海を見つめていたが、急に気になっていた事を付け加えた。

「あっ、そうそう ! 足回りのセッティングは自分で考えながら出すっスよ ! そうやって少しずつ速くなれるんスから」




ヘルメットを被る成海。聞き流すように空返事をする。

「ふ~~ん…」





「成海ちゃん、いいっスか…」

岩野がそう言いかけた時、成海は勢いよくキックを踏み下ろしエンジンをかけた。無情にも岩野の声が途中で遮られる。それどころか、周りの音すべてを掻き消すような、KX500の炸裂音が響き渡った。アクセルを吹かす成海。FMFサイレンサーから勢いよくスモークが吐き出される。

それからKX500と共に勢いよく外に飛び出し、その場でフロントタイヤをロックしたまま、右にリヤタイヤを滑らせ円を描く。新品のタイヤは激しいスモークを吐きだし焦げ付いた匂いを辺りに振り撒いた。

そして今度は左に向きを変え、更にタイヤを滑らせる。成海は一瞬でタイヤの皮むきを完了させ、ヘルメットの中で “ ニコッ ” とほほ笑み、次の瞬間にはウイリーしながら走り去ってしまった。





茫然とする岩野。

「ふう(ため息)。 たしかに…。あんなじゃじゃ馬ムスメを扱えるのは、下村さんくらいしかいないっスね」




汗をかきながら、苦笑いで遠くを見つめた。













      6


それからあっという間に一週間が経ち、FURANO SUPER MOTO当日を迎えた。




スタートラインに並ぶ15台のバイク。既にスイッチの入った成海の顔は、一見冷静を装っているが、心の中では緊張と興奮と高揚と闘争心が入り混じり、自分自身を押さえつけているのが大変なくらいだった。







その時、オフィシャルがフラッグを構える。横一列、すべてのバイクが一斉にエンジンをスタートさせた。
高鳴る鼓動、そしてバイクに乗るという闘争心。誰の心にも『はやく走らせろ』そんな思いが渦巻く。
回りで煩いくらいに響くエキゾーストノートは、既に聞こえなくなるほど集中していた。アセファルトの陽炎に揺らめくフラッグを、今か今かと待ちわびる瞬間の緊張感がたまらない。成海は、腹の底からゾクゾクと湧き上がる、アドレナリンの感触を楽しみながら、全神経を左手のクラッチレバーに集める。

そして運命のフラッグが振られた。

FURANO SUPER MOTOレーススタートだ。





2ストロークと4ストロークの混走レース。まるで地鳴りのような音が、腹の底に響いてくる。色とりどりのMXウェアー姿のライダー15人が、一斉にスタートを切った。
大混乱であった。だが、ターマックの第一コーナーを抜け、第二コーナーを回った頃には、概ねの集団グループが出来上がる。トップグループは3台のマシンに絞られ、レースを牽引する体制ができていた。




トップはチャンピオンマシンの、ゼッケン#1岩野DR-Z400改450SMヨシムラ仕様。 続く2位は、ゼッケン#9成海KX500。 少し離れた位置には、3位ゼッケン#5上場見。KTM450 EXC SUPER MOTO仕様。がつける。

三つ巴でコースを周回。成海と岩野は僅差のデットヒート。そして少し離れている上場見は、虎視眈々と二台の行方を見つめる。

観客スタンドの中には、源三と七菜香の姿があり成海を応援している。また違う場所には、異彩を放つデスペラードジャケットを纏う下村の姿があった。




3台ともターマックではブラックマークを残しながらドリフトし、グラベルでは必要以上に滑るタイヤをコントロールしながら走る。
一番安定した走りの岩野。それに必死に食らい付く成海。だがKX500は、ターマックにおいてアクセルオンでリヤが沈む姿勢変化を起しており、コントロールが上手くいかずアンダーステアを出していた。





そこで3位上場見の走りが変わった。勝負どころを見極めたのだろうか。荒々しいライディングで各コーナーを攻め出した。

タイヤスモークの焦げた匂いと、泥埃が舞うFURANOサーキット。順位に大きな変わりはなく、いよいよ大詰めのレース終盤に差しかかる。 ゴール間近のグラベル20R左コーナー。そこで岩野が魅せた!お手本のような綺麗なドリフトで、スピードをのせたままRを描き、コーナーを駆け抜ける。







だが成海も負けない。岩野にピタリと張り付き、僅差でコーナーリングする。その時、何かを確信したように、ヘルメットの中で、口元に笑みを漏らした。

「イケる ! ゴール前で差す !! 」




が、そんな成海の企みとは裏腹に、一つの危険が迫っていた。それは3位の上場見だった。スピードを落とさず成海めがけてイン側へ突進してきたのだ。

上場見は、イン側から成海を抜きにかかると同時に、オーバースピードを相刹するため、スライドしながら、リヤタイヤアタックをKX500のフロント部へめがけて敢行してきた。




“ドッ” と湧く観客達。

不安そうに見つめる源三と七菜香。
下村は腕を組みながら、非常に厳しい表情で事の成り行きを見守る。





突如成海の脳裏に、電気信号のような感覚が走る。それは直感だった。上場見のアタックを間接視で捉えたのだ。一瞬で身体じゅうから“ドッ”と汗が噴き出た。
そこからは、まるでスローモーションのようだった。上場見の動きを視界の端でしっかり捉え、次のアクションを起こす。自分の鼓動さえゆっくりと聞え出す。




『ここだ !! 』 コーナーのバンクが見えた。

渾身の力でフルブレーキを敢行。そしてバイクの向きを変えるのと同時に、車体の動きを一瞬だったが無理やり止めた。

重力や慣性、それに摩擦。そんな物理の法則にストップをかけるような、力技の強行はその身に受ける代償も大きい。あらゆる負担が身体に重く圧し掛かる。が、そんな事は全く意にも介さない。彼女には鍛錬による蓄積がある。膨大な時間の走り込みが、技術と自信に繋がっているからだ。




『なんだ !? 』 血走った眼を見開く上場見。アタックを成海に交わされた形となり、勢い余ってコース外へ飛び出してしまった。




「はっ ! 」

事なきを得た成海は、肺に溜まった熱い空気を一息吐き、再びアクセルオンで走り出したのだが、その目に映ったのは、岩野がゴールの大ジャンプをFMXライダーの様に車体を斜めにして跳んだ瞬間の映像だった。







「あっ…チクショー…」

その姿を見た成海は、小さな声で一つ悪態をつき、少し遅れてゴールの大ジャンプを跳んだ。





つづく





Posted at 2016/11/26 18:22:17 | コメント(1) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用

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