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むらっち2のブログ一覧

2016年12月27日 イイね!

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第七話

Def busta 第二章 ~Recovery line~ 第七話

後編、登場人物




●輪道 成海 (19歳・女)
 ライムグリーン3眼ライトのkawasaki KX500改(通称サードアイ)を駆り
 下村のデスペラードジャケットを模した、M65フィールドを着るようになった。   







●下村 貴 (24歳・男)
 TEAM SANTANAのリーダー及びGarage SANTANAの代表。
 フルカスタムでスカチューンが施されたKawasaki Z1000Mk2改を駆る。

●上場見 顎 (25歳・男)
 ヘビ顔の男。残忍な性格。麻薬ジャンキー。デリヘル店を経営者していたが
 現在は数多の犯罪容疑で逃走中。

●岩野 剛   (27歳・男)
 Garage SANTANA ~T. P. Special~ という主にトランスポーターのぎ装・販売をしている店を
 下村から任されているメカニック。

●進藤 諒一  (27歳・男)
 TEAM SANTANAのメンバー。職業は北海道警察の私服警官をしている。

●坂本 仁 (22歳・男)
 TEAM SANTANAのメンバー。ドラッグの坂本とも呼ばれている。

●輪道 源三    (65歳・男)
 元国際的な2輪ラリーストで、現役時代は“サードアイ”と呼ばれていた。
 成海と七菜香の祖父。現在は「ペンション輪道」を経営している。











  1 憎しみのウロボロス



季節が移り行き、夏から秋へ、そして冬となり、白金温泉郷の辺り一面が、白銀のヴェールに包まれる時、それは、北海道のバイク乗り達が、ガレージに愛車を仕舞い込み、来季に向け、整備、カスタムに精を出す季節でもある。しかしこの年、旧道・白金峠では、冬期間であるにも関わらず、2ストの甲高いバイクの排気音が、毎日鳴り響いていた。

冬期間の新道は、朝・晩と2回除雪車が走り、そこに暮らす町民の生活と、観光に来ている、スキーやスノーボード客の、出足を支えている。 そしてワインディングとなる、グラベルの旧道は、朝に一回の除雪が入るだけで、冬になると、この道路を走る者は、ほぼ皆無となっているはずだった。

しかし成海は、まともに、手入れがされていない状況の旧道こそが、トレーニングをするためには、最高の状態だと捉えたのだ。 大雪で深雪となる日。放射冷却現象で、冷え込みが厳しくなる日。吹雪でホワイトアウトとなる日。暖気でアイスバーン上の雪が解け、非常に滑りやすい、ウェット・オン・アイスとなる日。来る日も、来る日も、成海は旧道で、KX500 ・ 通称 “ サードアイ ” を駆り、自分の技を磨いた。

また、それと同時に、鍛えた技はもう一つあった。それは、過去、祖父から習った 「 松濤館空手 」 の蹴り技で、エンデューロブーツを履いたまま、毎日、毎日、足場の悪い雪の中で、繰り返し稽古を続けた。 その稽古場所として選んだのは、愛する下村と出会った、あの大きな白樺の木の下だった。ただ、ただ、ひたすら稽古し続けた。

そして、雪解けとなり、春の息吹を感じられる頃には、鋭い体感センサーと、絶妙なバランス感覚をその身に着け、更には、強靭かつしなやかで、鞭のような蹴脚も備わっていた。そんな今の成海には、「時間が全てを解決する」などという、日和りの弱々しさは、一切存在しなかった。












    


「成海や…、もういいんじゃないか?お前…すっかり変わってしまったぞ…」

源三は、MXウェアーに着替えた成海の背中越しに、優しく語りかけた。






「…おじいちゃん…」

以前までは、陽の光を浴びる、向日葵のように、明るい笑顔を振舞いていた成海だったが、その面影がすっかりと消えてしまい、今は笑わなくなっていた。




「ごめんね…」

それは悲痛な哀愁で満たされた、悲しみの表情だった。




「下村くんは、こんな事を望んじゃおらんぞ ! 今のお前を見たら何と言う !? 」

詰め寄る源三。しかし成海の表情は変わらない。

「成海…もういいんじゃないか?」




少し間をおき、同じ言葉を繰り返した。が、成海は静かに首を横に振った。

「おじいちゃん、あのね…今まで黙ってたけど、一つ心配な事があるの…」




ゆっくり頷く源三。

「なんじゃ?」

「アイツ…上場見は…」




それは、まるで呪文のようだった。その言葉を発した瞬間、成海の表情は、見る間に険しく変貌した。その様子を見た源三は、思わず息を飲み込んでしまう。

「アイツはさ、絶対近くに居る。指名手配されたにも関わらず、アタシと下村さんを、執拗に付け狙ったんだから」




更に成海の表情は険しくなった。そこでようやく、源三も口を開いた。

「そんなまさか !? あれだけの事をして、いまだこの地に潜伏しているなんて…」




その続きを聞く前に、成海は源三の言葉を遮った。

「アイツは間違いなく、機会を窺っている。こんな事くらいじゃ、簡単には諦めない」

「それにしたって、警察が…」




成海はまた、源三の言葉を遮った。

「アイツは地の底から、アタシに復讐する機会を “ ジッ ” と窺ってる。でも好都合。今度こそ… 今度こそ下村さんの仇を打つ ! 」




固く握りしめた自分の拳を見つめる。

「それに、そうしないと、次はナナに危険が及んじゃう。アイツの3人目の標的は、ナナだったの… だからアタシが… アタシが囮にならなきゃ !! 」

成海は唇を固く結び、そこで会話を終わらせた。





「そんな…まさか…」

源三の口から悲痛な思いが漏れた。それから成海は、踵を返し、下村のデスペラードジャケットを模した、M65フィールドジャケットに袖を通す。




「そんな…成海…。人を呪えば、必ず自分も、その報いを受けることになるんだぞ…」

源三は、立ち去ろうとする、成海の背中にそう投げかけた。















    



ペンション輪道を出て、成海が向かった先は 「 Garage SANTANA 」 だった。そこで、SANTANAのメンバーに会う約束をしていた。いや、それは約束というより、面接といった方が、適切な表現であろう。彼らに協力を仰ぐつもりだった。だがしかし、その面接は、手痛い “ しっぺ返し ” を喰らう結果となってしまう。









その場で成海を待ち受けていた、SANTANAのメンバーは、メカニックであり、オフロードマニアの岩野を始めとし、Kawasaki 750ターボを駆るドラッグの坂本、HONDA TLM220R・トライアルの進藤だった。




しかもその進藤は、成海に下村の死を伝えた、あの私服警官でもあった。そんな彼等の前に立ち、軽く頭を下げ、挨拶しようとした時、いきなり坂本が、成海に罵声を浴びせかけた。

「よくもまあ、抜け抜けと、ツラぁ出せたもんだなぁおいっ !! 」




怒りの表情で続ける。

「誰のせいで、こんなんなってんのか、分かってんのかぁ!ああ~~ん !? 」




成海には辛い問いかけだった。それに、次の言葉もよく分かっていた。

「俺達は、手前ぇのせいで下村さんを…」




「坂本、もう止めるッスよ !! 」

その言葉を遮ったのは岩野だった。




成海は、今にも泣き出したいくらい、本当に辛かった。だが、ただただ、溢れ出しそうになる自分の弱さを “ ぐっ ” と堪えた。




「くそったれ…今更になって、上場見捕まえんのを、俺達に協力しろだぁ!?それにその恰好 ! 下村さんの真似までしやがって…気に入らねぇ !! 」

明らかに好戦的な坂本に対し、成海はあえて挑発をした。




「だから何だって言うのさ?口じゃ偉そうな事を言ってるけど、誰も下村さんの仇を討とうとしてないじゃないか !! それでもSANTANAなのかい !? 」




「はっはっは…」

一瞬呆れるように、苦笑いをした坂本が、成海の正面にゆっくりと歩み寄り、それから左の平手打ちを飛ばした。交わそうと思えば、いくらでも交わせたが、成海は甘んじて受けた。それは、叩かれた痛みではなかった、心に突き刺さる、悲しみだった。

 











「テメェ、ふざけた事ばっかヌカしてんじゃねぇよ !! 」

「もう止めるッスよ」

そこへ岩野が割って入り、成海から坂本を遠ざけた。そして進藤が静かに語り出す。




「成海ちゃん。実はね、僕は今回の “ 下村殺し ” のヤマを降ろされたんだ。表向きの理由は、私情が絡むからだそうだ。僕は下村に近すぎるってさ」

「だから何?それで、おめおめと引き下がったの?」




坂本に平手打ちを受けたにもかかわらず、あくまで挑発的な成海の言い方は、あえて皆から、咎を受けるために発せられる、贖罪にも似た必死さが漂う。だが進藤は、自分の感情を抑え、穏やかに答えた。

「まさか。僕の本心は、はらわたが煮えくり返っている。だからこうして、個人的に動くことにしたんだ。僕もSANTANAの端くれだからね。上場見は絶対に許せない」




成海は “ コクリ ” と一つ頷き、黙って進藤の話を聞いた。

「でも協力できるのは、あくまで水面下だけだ。それ以上のことは期待しないで欲しい。その辺は察してくれよ」




進藤はゆっくりと一息つき、話を続けた。

「だから、僕がこれから話す事は、全部独り言だ!」




今度は全員が進藤を見つめた。

「上場見は間違いなく、近くに潜んでいる。それは恐らく、僕たちSANTAN…いや、下村に関係する、僕達全てを的にかけている。事実、あの事件以来、僕を失脚させようとする怪文書、つまり、有りもしない、公金の横領について書かれた手紙が届いたり、他のメンバーだって、バイクに悪戯されたり、夜道で何者かにツケられたり…身の回りでおかしな事が、頻発するようになった」




凛々しい表情で、黙って聞く成海。

「でも、僕達だって馬鹿じゃない。ある時、犯人のものであると思われる、バイクを一台押収したんだ。札幌市の街中で、防犯カメラに映った不審人物。どうも上場見と、背格好や特徴が似ていたことから、近くにいた警官が職質(職務質問)をしようとしたところ、急に逃げ出したんで、バイクごと引き倒し、取り押さえにかかった。けどその警官は、上場見の仲間と思われる人物に、後ろから後頭部を鈍器で強打され、いまだ意識不明の重体だ…可哀想に…。で、そのバイクなんだけど、引き倒した際に、どうやら、プラグが “ カブッ ” てしまったようでね、乗り捨てていったんだ。」




息を飲むメンバー。

『まさかZ1000Mk2?』 成海は心の中で、瞬間的にそう思った。しかし進藤は、それを見透かしたように、首を横に振る。

「そのバイクはHONDA CRF450R。本来、公道を走れないレーサーだったんだよ。テンプラナンバーと、ウインカーやライトまで付けてね。当初、盗難車かとも思ったんだけど、どうやら、そうじゃないみたいなんだ。まず、全国に照会をかけたんだけど、この車両…、いや、この車種の盗難届は出ていなかった。もちろん登録番号は全て削り取られていた…。しかも、全ての部品もだ!全ての部品番号がだぞ!! 全く信じられなかったよ。だが、諦めないでもっと調べていくと、とんでもない事が分かった。このCRFは、型が新しいにも関わらず、随分と走り込まれた様子があった事から、エンジンを調べてみると、オーバーホールされた形跡がみつかった」




「じゃあ、交換部品から追跡できたってこと?」

成海は、堪らず口を挟んでしまった。しかし、またもや首を横に振る進藤。




「いや、ダメだった。そこがコイツのとんでもない事なんだ。メーカーに照会をかけて、ここ最近で出荷された、オーバーホールパーツの全てを調べたんだが、全部行先がはっきりしていて、上場見に繋がる手掛かりは、全くなかったんだ。登録台数が少ない車種のうえ、飛ぶように売れるパーツじゃないから、直ぐに足がつくと思ったんだが…」

「つまり、どういう事なの?」

「つまり…あのバイクは完全な幽霊だ。存在していない。戸籍が無い人間と一緒だ。しかも上場見とその一味、数人の仲間がいることも確認されているのに、全く足取りが掴めん!つまりだ…その…」




進藤は言葉を詰まらせた。

「一番想定したくない事が起きている…つまり…、つまり…、誰か強力なバックがいて、奴等を匿っているとしか思えないんだ…」




「SANTANAの敵ってことなの?」

訝しげな表情の成海。




「わからん。そんな事が出来るなんて、相当な大物だろう。しかし、そんな奴にケンカを売った覚えはないし、第一、上場見を庇う理由が、全く分からんのだ」




暫く沈黙の後、何か試案していた成海が、ある提案をした。

「確かに、アタシも最近、人に見られている感覚がよくあったよ。漏れなくアタシも、監視されてるって事だよね !? それならさ、コソコソ隠れてないで、今月末にある “ BIEI RALLY GREAT DAYS ” に参加して、思いっきり目立ってやろうと思うんだ。もしそれで、奴等から何らかのアクションがあれば、足取りが掴めるってもんでしょ?」




進藤は黙ってしまい、容認しかねていた。そして、そこに水を差したのは坂本だった。

「オイ ! 調子に乗んなブスッ !! 何が思いっきり目立ってやるだ !? 誰のせいでこうなってるって思ってんだ?手前ぇのせいで下村さんはなぁ…下村さんは…」




言葉が詰まる。だがそこで、岩野が坂本の肩を軽く叩き、何度も頷いてから。ようやく口を開いた。

「坂本、わかったッスよ。わかったッス。皆で下村さんの仇を討つッスよ !! 」




岩野は、更に坂本の肩を叩きながら、自分の決意を述べた。
成海は下村の事で、責めを受ける覚悟はしていた。しかし、分かってはいたものの、それは心臓を掴み出されてしまったような、苦痛そのものだと感じた。事実上、SANTANAに協力は得られた。しかし依然として、孤独であることに変わりは無い。

とんでもない “ しっぺ返し ” だった。










つづく


Posted at 2016/12/27 16:20:57 | コメント(2) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2016年12月25日 イイね!

ディアトロフィー完成!

ディアトロフィー完成!
焦らしちゃ (*ノ▽ノ)イヤン

ふふふ。ゆくぞ!親不孝娘がぁ~!щ(゜▽゜щ)ウヘヘ















えーと… 酒呑んで昼寝したら

変な夢をみた、むらっち左衛門です(  ̄▽ ̄;)アセ








ディアトロフィーが完成しました♪




ようやく背板が届いたので、ドリリングしながら










完成♪

















腰刀を飾ったり









狩猟道具を飾ったり






マンゾクまんぞく(・∀・)ニヤニヤ












で、 他の装備も




旧ソ連軍のリュックとポンチョ。 あと毛布とかも











毛布を内に納め、ポンチョは外に固定





イイ感じ♪


あとは飯盒をぶら下げたら完成かなw















今年の荒行は、年越し雪中キャンプだ!










がはははは (* ̄皿 ̄)
































ウソです…































ごめんなすって





Posted at 2016/12/25 17:33:23 | コメント(1) | トラックバック(0) | 狩猟 | 日記
2016年12月23日 イイね!

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第六話

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第六話    
    12
 

その一方的な暴力は一瞬でもあり、終わりのない永い時間のようでもあった。息を切らすどころではない。息を吸うのも忘れる程、上場見は鉄パイプを振り続けていた。








「ひゅう、ひゅう、ひゅう」

乱れた呼吸音がおかしい。それから、血が付き曲がった鉄パイプを、自分の後方へ無造作に放り投げた。乾いた音が2度3度と響き転がった。
上場見の手が震えていた。冷汗をかき、顔貌も唇も血色が悪い。完全に酸欠状態であった。しかし何を思ったのか、口元には笑みが漏れる。それからおもむろに、N-3の内ポケットから小さな針の付いた、2㎝四方のチューブを取り出し、首筋に打ち注入。 その途端、顔貌には血色が戻り、呼吸までもが落ち着いてきた。

「ハァ~これでスッキリしたぜぇ~」




グッタリと倒れている成海を満足げに眺め、それから左手のみで引き起こし、壁に押し付け、右手で成海の乳房を鷲掴みにし、力任せに揉みだした。  




頭部からは血を流し、苦悶の表情の成海。 

「げひゃひゃひゃ!このクソアマがぁー ! 少しは女らしい声でも出してみろやー !! 」

「うっ…くっ…」




それから上場見は、雑巾でも捨てるかのように、路上へ成海を放り投げる。

「今日テメェ等がここに来るのは調べがついてたぜぇ~。下村のクソも始末できたし、今日はツイてんなぁ~ひっひっひっ」



下卑た薄笑いを浮かべる上場見。

「テメエの事も、しっかり調べさせて貰ったぜぇ~このクソアマァ~」




成海の頭を踏みつける上場見。

「ヤサも分かったしよぉ~。あのメガネっ娘は妹なんだってなぁ~ひっひっひ。お次はあの美味そうな妹を、たぁ~ぷり可愛がってやってから、俺ぁトンズラする事にするぜぇ」




ヘラヘラと笑いながら踵を返し、その場を立ち去ろうとする上場見。

「ひーひっひっひ」








だが、その後ろで、傷だらけの成海が音もなくユラリと立ち上がった。






上場見は完全に油断していた。それは想定外の出来事であった。 『 ジャリッ 』 靴音に反応し、後ろに振り向いた瞬間だった。 成海の鋭い回転と全体重を乗せた浴びせ蹴りが、斜め上から鋭く落ちてきて、オフブーツの右踵が上場見の右頬に深々とめり込んだ。










「アッ×▽+ガッ*>=―― !? 」









声にならない呻き。グラつきながらも数歩後ずさり、なんとか倒れず踏み留まった上場見であったが。その顔貌は血の気が引き、頬が大きく陥没してしまっていた。




血走った目を大きく見開く。

「カアァーー ! 」




そしてまた、さっきのチューブを取りだし首筋に打つ。




そんな成海もアドレナリンが痛みを掻き消していた。満身創痍であるものの、ここで倒れられない理由が出来た。全身全霊、腹の底から叫ぶように吠えた。

「ふざけんなぁぁぁーーー!絶対に行かせるかー !! 」









『七菜香の元へは絶対に行かせない !! 』 暗い闇へ意識が落ちて行きそうなところであったが、奇しくも先程の上場見の一言で、アドレナリンが脈を打ち、一気に覚醒したのだ。








「げひゃひゃひゃひゃ」

上場見は再び鉄パイプを拾い、大きく振りかぶり、成海めがけて振り下ろした。









『クソッこれ以上体が動かない!殺られる !! 』

鉄パイプが迫る。絶体絶命であった。覚醒したものの、身体に残るダメージまでは掻き消せなかった。ガードを固め目を瞑る成海。




夜空にニブイ音が鳴り響く。頭頂部で十字受けの構えを取っている成海の姿。しかし鉄パイプは身体のどこにも触れていなかった。
恐る恐る目を開けた。一瞬何が何だか分からなかったが、それは束の間、すぐに理解した。目の前にあったのはデスペラードジャケットの背中だった。下村が上場見の鉄パイプを受け止めていた。




「成海っ ! しっかりしろ !! 」

「下村さん !? 」




しかし、急に下村が後ずさり、吐き捨てるような嗚咽が漏れた。

「がっ…くそっ…」




そのまま後ろへ倒れこんでくる下村の体を、成海は受け止めた。




「あっ !? 」

成海の瞳が大きく見開かれた。




信じられない光景だった。 『まさかこんな !? 』

そのまさかは、下村の腹部に大型のコンバットナイフが刺さっていたのだ。




凶悪な蛇顔で高笑いする上場見。

「げひゃひゃひゃひゃ~~。いい加減くたばれ下村ぁ~」





ナイフの柄尻が蹴飛ばされた。
そのナイフは下村の体を貫通し、傷口からは激しく血が噴き出て、成海を真っ赤に染め上げた。








「… ~ !! …」

ナイフを抑え、無言の慟哭を放つ下村。




「うそ、うそ !! なにこれ ? なんなの !? 」

成海もナイフに手を伸ばした。




成海の左頬に血まみれの右手を伸ばす下村。

「なる…み」




刹那、その手が力なく崩れ落ちた。反射的に落ちた手を握る成海。

「うそ ! うそ ! やだ、やだよぉ !! 」




下村を抱きかかえ叫び声を上げた。

「いやあああーーー ! 」





必至に傷口を抑えても、出血が止まらなかった。 だがそこへ、無情にも上場見の右脚が顔面に飛んできて、成海は蹴り倒されてしまう。 またもや生温かいアスファルトへ投げ出されるように倒れた。




凶悪な蛇顔で高笑いする上場見。

「げひゃひゃひゃひゃひゃ !! ようやく女らしい声で哭きやがったなぁ~~ !! げひゃひゃひゃひゃひゃ !! 」






成海は、血まみれの状態で涙を流しながら路上を這った。

「やだ…やだよぉ…下村さん…」






その這いずった先には、下村のバイクZ1000MkⅡが倒れていた。アクセルに手を掛ける成海。




そこへ上場見が歩み寄ってきて立ち止まる。上場見を見上げる成海。
またもやヘラヘラと笑っていた。

「ひっひっひ。下村のバイクで逃げようってか?」




上場見は、おもむろに鉄パイプを振り上げた。

「テメエもいい加減死ねや。ひっひっ」




が、成海の眼は死んではいなかった。凛と厳しい表情で上場見を睨みつけた。

「チクショー ! ふざけんなぁぁーー !! 」




セルボタンを押し、アクセルを全開にした。Z1000MkⅡは一瞬で目覚めた。KERKER KR管サイレンサーから獣の咆哮にも似たエキゾーストノートが吐き出される。 リヤタイヤが回転し路面を滑った。 次の瞬間、ジェネレーターカバーが路面を削り、バイクが立ちあがった。 それは羆が獲物に襲い掛かる様にも似ていた。







立ちあがったバイクのフロントタイヤが、上場見の顔面に直撃する。
足掻らいようのない衝撃は、脳髄にまで嫌な音が響いた。自分の中で何かが壊れる音だった。それで終わりであった。上場見は倒れたままピクリとも動かなくなった。




その様子を見届けた成海は、最後の力を振り絞り、再び倒れている下村の方向へ這い出した。

「くっ…くっ…下村さん…」




何度も意識が遠退きそうになりながら、ようやく下村の手を握った瞬間、今度こそ成海は完全に力尽き、気絶してしまった。 

そこには、血まみれで倒れている3人がいた。

遠くにパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
   















     13


あれから一ヶ月後。ペンション輪道に成海の姿があった。少し片足を引きずりながら歩く彼女の顔には、まだ痣が残っている。
ペンション入口から出て来た成海は、ガレージに向かった。まだ傷の癒えていない身体に、オーバースライドドアは少々キツかったが、なんとか開けた。

「っしょ…と…」










ガレージの中にはすっかり修理されたKX500があった。以前より小型化された3眼ライトが気高く輝いて見えた。









そこで成海は今回の事件を思い返していた。

『病院のベッドの上で、包帯だらけのアタシは、2人の私服警官から事情聴取を受けた。このとき信じられない事実を聞かされた』




新しくなった3眼ライトを指先で “すっ“ と撫でた後、拳を握り固めた。そして凛々しい顔で唇を固く結ぶ。

『下村さんは殺害され、犯人の上場見はZ1000MkⅡと共に姿を消した…。そう下村さんのバイクでいまだ逃走を続けている』 急に悔し涙が頬を伝った。




オーバーオールのポケットからSANTANAのワッペン取り出し見つめる。

『アイツは絶対に許さない ! 』 悔しさが歯ぎしりと共に溢れ出す。




KX500のアクセルに右手を置いた。

「下村さん…




“ すっ ” と軽い動きでKX500に跨り、キーを捻る。それから軽くキックを踏み下ろし、上死点を探した。カシャカシャとメカニカルな音が静かに響く。




『必ずアナタの仇を討ちます!そしてアタシ達を繋ぐライン (Z1000MkⅡ) をリカバリー(取戻す) する !! 』

“ガシュッ” 一気に勢いよくキックを踏み下ろされた。2ストの初期始動の排気音が高らかに鳴り響いた。





『絶対に取り戻します!!』




3眼ライトKX500のフロントマスクが “ ギラリ ” と鈍い光を放つ。

『このサードアイと共に ! 必ず !! 』





ファンファーレではない。これは、成海の孤独な闘いのゴングであったのだ。











前編終了。後編へとつづく












Posted at 2016/12/23 20:43:58 | コメント(3) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用
2016年12月23日 イイね!

今年4発目の低気圧だそうだが…

今年4発目の低気圧だそうだが…
一晩明けて家の外に出たら…

タンマリと…

でもまだ、ホワイトグレネード級ではないかな…







ども! 顔洗う前に海に飛び込み、朝食のお魚捕ってきました~♪ 的に

雪山にダイブしてみた、ウミンチュむらっち2です(  ̄▽ ̄)



とりあえず目が覚めましたw










腰まで積もってるけどね(^_^;)









んで、我が家の自慢の YAMAHA は12馬力!








ハイパワーで蹴散らし!









キレイキレイ♪










さて









執筆しよ…










ごめんなすって φ(゜゜)ノ゜




Posted at 2016/12/23 15:30:29 | コメント(2) | トラックバック(0) | その他 | 日記
2016年12月13日 イイね!

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第五話

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第五話  
     10


街灯が点在する薄暗い夜の田舎道。いつもの普段着にバイク用ウインドブレーカーを着用し、KX500を走らせる成海の姿があった。






先程嬉しい知らせがあり、なんとも飛び上がらんばかりに、ワクついた気持ちに占拠されてしまった成海は、ついヘルメットの中で笑みが漏れてしまう。 その喜々たるニュースは、数時間前に源三から知らされた。




「成海や。下村くんから連絡があったぞ。お前を正式にTEAM SANTANAに迎え入れたいそうだ。それでチームワッペンをお前に渡したいから20時に旭川の堀内繊維店へ来て欲しいと言っておったぞ」




予想していなかったと言えば嘘になるが、いざその知らせを聞いた時は、歓喜のあまり、小躍りしたくなる衝動に駆られたが、その気持ちをぐっと抑え、赤い顔をしたまま無言で頷いた。




KX500の甲高い音が心地良かった。そこで下村の笑顔を思い出しながら、またもや成海はニヤついてしまう。

「SANTANAかぁ。下村さんアタシのこと認めてくれたのかな♪それとも…(悦)」




妄想に喜びむせぶ。 遂には、バイクの上で身体をクネらせる程に気分が昂ぶった。

そんな時、ふと悪い事、いや、喉の奥に引っかかっていた魚の小骨のような不快感も込み上げてきた。 急に上場見のヘラヘラした表情が脳裏をよぎる。

「それにしてもアイツ…」




先程とは打って変わり、厳しい表情になる成海。 嫌な瞬間を思い出してしまった。 それは、七菜香の乳房を鷲掴みにする上場見と、泣き叫ぶ七菜香の姿であった。




思わず歯ぎしりをしてしまった。

「チクショウ ! もう一発ぶん殴ってやりたかった」




届きそうで届かない魚の小骨。もはやどうしようもないだけに、悔しさばかりが募る。

「チクショウ…」




成海は乱暴にアクセルを捻り、KX500を加速させた。







        11


旭川市街の車の通りは少なかった。平日だったせいもあるのだろうが、それでも変な静けさを感じてしまう。時折すれ違うタクシー以外に一般の車両があまりいない。
それでも成海は、街中で乱暴な走りはしない。KX500を極々スムーズに走らせる。穏やかなリーンアウトで交差点を曲がり、更に人通りの少ない一方通行の4条通りに入る。もう2丁も行けば『堀内繊維店』だ。







その時だった、成海の右前方から黒い影が勢いよく飛び出してくる。 『 あっ !? 危ない !! 』 視界の端に捉え、反射的にブレーキを握りそうになった瞬間だった。その影は鉄パイプで成海に殴りかかり、ヘルメットの上から頭部を強打されてしまった。

成海はバイクから転落し、路上に叩きつけられ転がった。火花を散らせながらアスファルトを滑るKX500。ライトとミラーが砕け散った。




「…あ…ぐっ…」

気は失っていない。生暖かくザラつくアスファルト。倒れた状態で潰れたヘルメットを脱いだ成海は、あちこち服が破け、擦り傷だらけになった身体を、震える手で触診し、骨折が無い事を確かめた。




「クッソ…誰が…」

それからフラフラした様子で立ち上がり、“ぐわんぐわん” と鐘の音が鳴り響く頭を押さえながら、周囲を見渡すため顔を上げると、先程の自分と同じく、アスファルト上に沈む、ある物が目に映った。




「えっ?動物…?」

だんだんと頭がはっきりしてきたと同時に、とんでもない事に気付いた。




『ちがう ! 動物なんかじゃない !! 』 眼を見開く成海。 それはうつ伏せに倒れている人間。 しかも動物に見えた毛皮は 『あれはデスペラードジャケットだ ! 下村さんっ !! 』












Z1000MkⅡも近くに倒れていた。

「下村さん !! 」




呼びかけ歩み寄ろうとした時、後方から “ジャリッ” という小石を蹴る靴音がした。 なんとも嫌な雰囲気を感じた。成海はゆっくりと後ろに振り向く。するとそこには、黒いN-3とカーゴパンツ、ジャングルブーツを履いた上場見が、鉄パイプを右肩に担ぐ様な格好で立っていた。

「よう」












成海は震える声を絞り出した。

「お前まさか下村さんを !? 」




ヘラヘラと笑う上場見。

「ひっひっひっひ」




成海は下村の元へ歩み寄ろうとした。しかし行く手を上場見に阻まれる。
一気に頭に血が昇った。歯を食いしばる成海。

「ふざけんなー ! お前、下村さんに何したんだぁーー !! 」




言うや否や、得意の右前蹴りを放つ。が、キレが悪い。転倒のダメージが残っている。上場見はあっさりとかわし、今度はヘラヘラと薄笑いを浮かべながら、鉄パイプを振りおろす。やはり今の成海はそれを捌くことが出来ず、ただ左腕でガードした。

“ガツッ” 『 痛っ !! 』 骨身に突き抜ける、耐え難い痛みが響く。
そこから一方的に滅多打ちにされた。成海はほとんど抵抗ができず、頭部をかばう形でガードを固める。 “ ニヤリ ” と口角を吊り上げる上場見。 今度は隙とばかりに、ガラ空きとなった成海の腹部に前蹴りを叩きこんだ。




「ぐふっ」

体がくの字に折れた。たまらず膝をつき地面に倒れた後は、亀のように丸くなるしかなかった。




「ひ~っひっひ」

それから上場見は、倒れた成海に容赦なく鉄パイプを打ち込み続けた。












つづく








Posted at 2016/12/13 22:31:57 | コメント(0) | トラックバック(0) | Def busta≪デフバスタ≫ | タイアップ企画用

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