新型オデッセイを見に、ほぼ6年ぶりにホンダのディーラーへ立ち寄ってみた
6年前は、MPVを購入するときに、代替候補の1台だったエリシオンを見に行ったときだった
私はかつてアコードを所有していたこともあり、また友人にかつてホンダ車乗りが複数いて乗る機会も多く、当時は他社に比べてボディは明らかに柔いがエンジンの吹け上がりは抜群で、足回りにもこだわりを感じて、「ホンダ車=機敏」、そういうイメージが私の中に残っており、私にとってホンダは好感を持ったメーカーの1つである
しかし、あの時のエリシオンはむしろ「もっさり」といった感じで、カタログ上のスペックは十分だったのに、実際は「走り」とは程遠く、営業さんの「ミニバンですから」の一言で、走りを求めてはいけないかのようなそんな印象を受けてしまった
決定打は、あくまで個人的な嗜好だが、ATのセレクトレバーに±ゲートが付いていなかったこと、そんなつまらないこだわりが私にはあった
さて新型オデッセイ、廃モデルとなったエリシオンクラスの市場も視野に入れ、守備範囲を広げたことで、コンセプトも大きく変わった
1 背高170センチクラス参入の絶好のタイミング
過去2代にわたる「背低ミニバン」から決別し、全高約170センチとしたのも「(エリシオン+オデッセイ)÷2」の産物か?
比較的市場が小さいといわれる170センチミニバンは、プレサージュが試合途中で棄権退場し、MPVも風前の灯火、現在はエスティマの独壇場だが古さは否めず、そこに入ってきた新型オデッセイは絶好のタイミングと言って良い
2 クラスを超えた室内空間の広さ、内装、使い勝手、質感

スライドドアの採用で開口部が大きくなり、得意の低床化を図って乗降し易くなり、3列目への乗り込みも楽になった
何より、しっかり座れる3列目シートは、エリシオンからの「遺言」とでも言うべきであろう
室内空間の広さ、シートの豪華さ、全体的な内装質感のアップ、これらはもはや「オデッセイ」を超えている
低床化により
室内の高さはエルグランドよりも高く、「170センチクラス」の欠点を帳消しにしている

インパネ回りには決して高級感は感じないが、高級車じゃないのだからそれでいい
個人的には、もう少し落ち着いた感じがあった方が好み、これはややキラキラしている
スピードメータが真ん中にドンと置かれ、タコメータは左に小さな水平デジタルバー表示で見にくい
CVTだからそれでいいのかもしれないが、「遊び心」を持ってこだわって欲しかった
右にある燃料の残量計と同じ大きさというのはどういうことなんだ?せっかくあるパドルシフト(アブソルート)の楽しみも半減してしまう
それに平均燃費が一番見やすいところにあるが、それほど重要なことでもないだろう
3 ハイブリッドの未設定は空間的余裕のなさか?

ハイブリッドを艤装するのにどれくらいの空間が必要なのか分からないが、いずれにしてもボンネットを開けると、手前にやや空間が見られるが、
ここに容易にハイブリッドのモーターが入るようには思えない
広い室内空間を確保するため、エンジンルームや床下空間を極力小さくし、
燃料タンクもミニマムの55リットルと設計段階での苦労が伺える
ディーゼルを積むのもけっこう厳しいかもしれない
そうなると、勝負できるのはせいぜい直噴化くらいで、それでもカタログ燃費はガソリンエンジンとしてはクラストップの14キロを実現できたので良しとしたのだろうが、いまひとつ面白みに欠ける気がする
ハイブリッドを積むという噂もあるが、エンジンルームのレイアウトに工夫が求められる
4 室内空間確保最優先で失ったホンダらしさ
エリシオンより低い新型オデッセイに十分な3列目空間を確保するためなのだろうか、
ホンダのお家芸ともいえるWウィッシュボーンをはじめ、全ての独立懸架形式の採用を選択肢から外してしまった
確かに、きれいに舗装された道路を無理せず安全運転に徹し、間違ってもフル定員乗車での限界運転は想定外と考えると、「車軸式」で十分かも知れない
メーカー側も大幅なコストダウンが図れ、一石二鳥なのだろう
しかし、現実にはガタガタ道はあるし、降雪地域を走る機会が多いならなおさらだ(冬、毎週のようにスキー場へ行く隣家では、「ぶら下がっているだけで後輪がついて来ない」と不満を漏らしてエスティマを手放した)
それより、私はメーカーとしてのこだわりや存在意義、そして実用レベルを超えた装備による“商品力”ともいうべき意地があって良いはずだと思う
3列目の空間確保という課題に「車軸式」で一発解決、これがかつてエンジンだけでなく、足回りにもこだわり、見えないところでトヨタとの差別化を主張してきたホンダの出した、あまりにも安易な、そしてトヨタと同じ解答だ
確かに3列目の足もと空間の余裕はMPVよりも広い(マツダは、なぜか「ロングノーズのボンネット」にもこだわりがあって、それさえ捨てればMPVの3列目はもっとゆとりが取れたはず)が、日常的にここに座る機会のあるユーザーがどれだけいるのか、そういうバランスを考えたとき、ホンダの足回りのこだわりを捨てる必要があったのだろうか
5 グレード構成と価格は標準的、オプション設定は不十分
安全装備の充実=標準装備化は今の時代怠ることはできず、その分ベース価格が上がってしまうのは仕方ないのかもしれない
いただけないのは、
メーカーオプションのほとんどがナビゲーションとセットの設定になっていることだ
最廉価「B」は脇に置いて、
281万円のFF車の「G」を見ると、
右側電動スライドドアは、ナビなどとセットオプションで一気に31万円高の312万円になってしまい、
またアルミのオプション設定もない
タイヤとアルミを「差額」でなく、いったんスチールホイールを買い取らなければならないところが痛い
個人的には、エンジン性能や燃費、「走り」を考えると、やはりアブソルートの一択かな
そうするとこれも両側電動スライドドアをオプションに考えると341万円からとなってしまう
安全装備が充実してきたとは言え、ちょっと高いなと思う
6 試乗車は407万円のアブソルートEX~価格を考えなければ面白い~
営業さんの指定ルートを試乗、場所柄起伏の少ない平坦な直線道路が中心なので、若干物足りなさは感じますが贅沢はいえない
ナビの位置やオーディオ、空調の配置は操作性に優れている、MPVの「灰皿特等席」とは大違いだ
CVTなのでDレンジではスムーズそのもの、1.8トンのボディをぐいぐい引っ張ってくれる
パドルシフトでマニュアル運転が可能でこの場合は7段変速となるのはF1譲りのホンダの定番
マツダの「引いて+、押して-」と違い、ホンダの「右手で+、左手で-」は慣れないせいか失敗ばかり、ハンドル硬さはちょうど良い
タイヤがロープロ(225/45R18)のせいか、静粛性は明らかに私のMPV(23S=215/60R17)に軍配が上がる
視線の高さはMPVとほぼ同じなので全く違和感はなかった
いろいろと丁寧に説明してくれた営業さんには感謝いたします
ホンダは、このオデッセイをつくるにあたり、
かつてスポーツをキーワードにしていたクルマ作りへのこだわりを捨て、ある意味ではホンダらしくないトヨタと同じような優等生的なクルマ作りに方向転換をしたように思えた
そんな古い私の固定観念とは別に市場はやはり現実路線に転じたホンダを歓迎し、受注状況も好調のようで、アコードと並んでホンダの3ナンバー車販売も本格的に復活の予感がした今日の試乗でした