![[本の小並感 128]戦略PR 民主主義で大衆を無意識に操る技術のカジュアル版 [本の小並感 128]戦略PR 民主主義で大衆を無意識に操る技術のカジュアル版](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/044/211/035/44211035/p1m.jpg?ct=238440c85ebd)
いつの頃からか日本社会を覆う「空気」を意識しだし、そしてそれを作るPR戦略というものを意識し出した。
メルカリのポイントが余っており、なんとなく購入したのだと思うが、後から気づいたが、田端さんとの共著「広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。 」の人だった。
全体的に軽い感じの作りで、多分1時間くらいで読んだ。山本七平が格闘した
暴走する怪物としての「空気」ではなく、あくまでもマーケティングのツールとしての空気の作り方だが、事例の紹介はなるほどと思わせられるようなものがあった。いくつか挙げてみる。
・ピロリ菌とLG21
LG21というヨーグルトをPRする前に、日本人の50%がピロリ菌に感染しており、それが胃がんや胃潰瘍の原因になっている、というピロリ菌悪のイメージをまず作る。そこでLG21という商品を投入する。この本では「気づきを与える」と表現しているが、新たな価値を創る(この場合ピロリ菌除去)、と言って良いだろう。
・冷え知らずと生姜
永谷園が冷え知らずさんという生姜を使った商品を開発したが、そのPRはまず生姜が流行っている、生姜が冷え性に効くという空気を作っていった。新聞やテレビ、女性誌などを訪問し、編集者が記事にしやすい情報を提供していたった。
ここでステマではないのは、あくまでも記事にする・しないの判断が、メディア側にあるということだ。PR企業にとってメディアはお客様に当たり、記事にしやすい情報を微に入り細に入り提供する。この点は、「戦争広告代理店」でも一緒だった。
・おむつと赤ちゃんの健康
新商品のおむつは吸水性とフィット感を高めたが、どう訴求していくかで、赤ちゃんの睡眠を取り上げた。おむつの性能よりも、赤ちゃんの睡眠を重視しない親はいない。赤ちゃんの睡眠は重要、という空気のPR。
そのほかにも、洗剤の性能をPRするのではなく、洗濯機がバイキンの巣になっている、というイメージ作りから入る事例などだ。
マクドナルドはわざと椅子の座り心地を悪くして客の回転率を上げていると聞いたことがある。客は自分の意思で出ていくのであり、店に追い出されたとは思わない。
この本は全体的に「
戦争広告代理店」のカジュアル版といった趣で軽かった。アメリカ大統領選についても若干触れられているが、民主主義国家において大衆を無意識に操作する技術というのは、制度の正統性を致命的に歪ませ得る。意図的にそのような側面には触れなかったのだろう。メタ的な価値観の訴求は私の仕事もそういう側面がある。
Posted at 2020/07/24 22:55:10 | |
トラックバック(0) | 日記