
聲の形を読んだ。
もうだいぶ前だが、Bookoffをブラついていて手頃な値段で全巻セットだからなんとなく買った。聞いたことあったし。簡単に感想(ネタバレ)。
顔のXは何なのか?
高校で孤立し始めてから石田から見た他人の顔にはXが付く。このXはほぼ全ての人に付くが、人のよっては付かなかったり、同じ人でもついたり付かなかったりする。この顔のXは何を表しているのだろうか?
植野のX
例えば、小学校時代友達だった植野と再会する時はXはないが、植野が石田と西宮との関係を茶化した時点でXが付く。植野のこのXは石田が退院して再会するまで取れない。植野は石田との関係を修復しようと、西宮とも胸襟を開いて話をしようとするように「聲」に耳を傾けようとする姿勢がある(が、西宮は拒否する)。

西宮に拒否され植野は怒る
川井のX
対照的に常に優等生として振る舞い都合の悪いことには傍観者を決め込む川井のXはすぐ取れるのだ。西宮が髪型を変えた理由を知りたい石田は、似たようなタイミングで髪型を変えた川井にその理由を聞く。その時川井の顔からはXが取れる。
西宮の愛想笑いが示すもの
私にしてみれば植野の姿勢の方が川井の態度よりもよほどこの漫画の趣旨に沿っているように思えた。都合の悪いことは見ないふりをし、お互いが傷つかない適度な距離感の友達ごっこ。それは、自らの意思を示さず曖昧にその場をやり過ごす西宮の愛想笑いであり、一緒にいじめていた仲間が一転自分をいじめてくるような石田が決別したい簡単にプラスとマイナスが入れ替わる関係。それは、伝えたい「聲」・聞きたい「聲」を一層曖昧にするだろう。

西宮の愛想笑いは植野が指摘する「友達ごっこ」だ
友達ごっこの許容と、声をきく意思
つまらない結論だが、これは石田自身の意思の問題だ。その人の声を聞こうとする意思が石田にあれば、その人の顔からXが剥がれる。だから、石田がその意思で学校に登校するとき、全ての人からXが取れる。
これは上記のような友達ごっこの曖昧な関係を全てなくすことはできない(西宮の愛想笑いは消えないし、その必要もない)、だがそれでもそのような「状態」に安穏と胡座を描くのではなく、常に声を聞こうとする意思を持ち続ける「姿勢」を示している。
総じて良かった。このブログも時間がかかった。でも何かしらまとめてまとめておかねばと思わされた。
補足1 植野の姿勢は石田とその周辺に限られる。一方、最後の石田は適用範囲を限定しない。全員の声を聞こうとする。
補足2 西宮の夢に現れる石田が「もうすぐ火曜が終わる」と言って去っていこうとするが、これは石田が西宮を尋ねて手話教室を訪れる日だ。友達になりたいと言うが、元々は死ぬつもりだった。
Posted at 2020/04/12 02:03:41 | |
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