■史上最高のストライカーとの呼び声も
新鋭UFCファイターの中でまず名前があがるのは、ステファン・トンプソン(米国)だろう。彼はキックボクシングの戦績においてプロアマ通算で57戦全勝、MMAでは6戦全勝という実績を誇り、なおかつUFCデビュー戦ではノックアウト・オブ・ザ・ナイトを受賞。そしてUFCウェルター級チャンピオン、ジョルジュ・サンピエール(カナダ)が“ワンダーボーイ”と呼び、自身が見たなかでは史上最高のストライカーだと称している。これに加え、トンプソンとその他大勢の選手を区別しているのは、彼が単にMMAのスターになることを目標に掲げているではなく、次世代の旗手となることを夢みていることだ。
「僕が戦いの中で見せたいものは、ただ単に技術や三歳の時からトレーニングしている練習の成果じゃない。空手がもたらしてくれるものを見せたいんだ」とトンプソンは語る。「空手はライフスタイルを向上させ、ポジティブさをもたらし、そして人への敬意を教えてくれる。そんなことを、僕は見せたい。UFCはすでに巨大な産業だけど、これからはお母さんやお父さんが是非息子に見て欲しいと思うようなスポーツにならなければならないと思う。だから僕はMMAのロールモデルになりたい」
現在29歳、自身を「道場ねずみ」と語るサウスカロライナ出身のトンプソンは、UFCでの試合を控えるなか、父が経営する道場のキッズクラスのヘッドインストラクターとなった。「サウスカロライナ一タフな男」と言われるレイ・トンプソンを父に持ち、二人の兄弟・姉妹とともに拳法空手を学びながら育った。戦う事だけでなく「礼儀、敬意、不屈の精神、忍耐力を学んだ」という。
<ウェルター級/5分3R>
ステファン・トンプソン(米国)
Def.1R4分13秒 by KO
ダン・スティッジン(米国)
GSPが最高のストライカーと認めたステファン・ワンダーボーイ・トンプソンが、オクタゴンデビューを迎えた。ガードを下げてハイキックからスイッチし、サイドキックをジャブのように使うトンプソン。オーソに戻しローを蹴って、スティッジンの前進には、スッとステップバックする。
ローからハイ、スイッチしてサイドキックを見せたトンプソンにスティッジンが距離を詰めが、組みつくことはできない。蹴りだけでなく、左ストレートも伸ばすトンプソンは、右ローから右ハイでスティッジンを混乱させていく。そのスティッジンが警戒し過ぎているので、トンプソンも勢いのある打撃を入れづらいかと思われたが、ミドルからハイに軌道の代わるブラジリアンキック一発でスティッジンをKOした。「ここで戦えてうれしい。ここは最高の舞台だから」と語り、「押忍」とともにオクタゴンを下りたトンプソン。新たなスター誕生の予感がする。
■ブラウン戦で空手の復活を誓うトンプソン
トンプソンのトレーニングは拳法の練習からはじまる。拳法は打撃だけでなく、柔術やレスリングの要素もあり、それがトンプソンの強みにもなっている。また、彼はテキサスにいる義兄であり、ブラジリアン柔術の達人であるカルロス・マチャド(ブラジル)の元でも練習している。足りない時はさらに、ラシャド・エヴァンス(米国)といったスター選手達と練習する。しかし、彼の一番の強みは、もっとも馴染んだ空手である。
「拳法空手では、自分の動きや速さをうまく使うことができる。自分のスタンスとして、普通の人よりも少し横に構える。こうすることで自分の前足を上手に、良い角度で使える。僕の打撃の根本は他の人と同じだと思う。でも、彼らよりいい動きをしていると思うしノックアウトされる事はないと思う。自分の距離で自分のしたい事ができる。もし、相手がその距離から外れようとしても、そのための手は打ってあるし、もし近づいてテイクダウンしようとするなら、その時はレスリング技術を使う。ブラウンがどんな事をしてこようと対処法は考えてあるよ。ただ、相手がスーパー・タフであるというのも理解している」
この戦いを制することができれば、彼の衝撃的なデビューはフロックでなかったと証明できるだろう。「時々、あれはラッキーショットだった、っていう人がいる。デビュー戦はたった4分だったし、みんな僕の力を測りかねていると思う。でも、次の相手が有名で実績もあるブラウンだからこそ、ステップアップにつながる。自信があるし、とてもいい試合になると思うよ」
日本時間の4月22日、テクニカルなトンプソンは攻撃性のあるブラウンと対戦する。「空手を復活させるよ」そうトンプソンは言う。「UFC初期に空手はボコボコにされた。でも、空手から学ぶべきことはたくさんある。この事をみんなに見せたいんだ」
今後、UFCで大注目の選手。
心技体全てにおいてハイレベルな選手である。
Posted at 2012/04/12 13:31:39 | |
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