エンジンとモ-タ-の違いについて。
近年、自動車産業にも取り入れられている「モ-タ-」
「電気自動車って加速が良いの?」
こんな声をよく聞くので、この世の中の「モ-タ-」について超簡単にお話しましょう。
あらゆる産業で活躍するモ-タ-は、特に、交流誘導モ-タ-を中心にこの25年間で大きな進化を遂げてきました。
皆さんが、あまり目にしない産業に於いて、特に高精度なモ-タ-の進化が大きく進んだと思います。
そもそも、モ-タ-とは?
大きく分けると、直流型と交流型の2タイプあります。
特徴として
直流タイプは、回転、トルク制御がし易すいが、整流子ブラシが必要でメンテが定期的に必要。
交流タイプは回転、トルク制御が難しが、整流子等が無く、電気的な消耗品のメンテが必要ない。
※特殊型は交流でも回転子ブラシが有る。
しかし、近年のベクトルインバ-タ-技術のおかげで、回転、トルク制御が難しい交流かご型誘導モ-タ-があらゆる産業で使用される様になりました。
※ベクトルインバ-タ-技術「磁界を作る成分、トルクを発生させる成分に分離し、両成分を独立に制御する方式。」
主な使用先
各種生産産業
ビルエレベ-タ-・空調・クレ-ン等
電車・自動車等
では、交流かご型誘導モ-タ-を制御するものを、一般にインバ-タ-と言います。
産業用のシステムの場合、電源が交流ですので、下記の様に変換します。
※以後、交流かご型誘導をモ-タ-と呼びます。
(誘導電動機)
交流電源 → 整流装置(直流コンバ-タ)→ 各インバ-タ-(周波数発生、電圧/電流制御)→ モ-タ-→ P G よりモータ回転情報をインバーターにフィードバック。
最近の産業用の場合、直流コンバ-タ-が単独でありますので、各インバ-タ-の力行/回生電圧は、直流コンバ-タ-の判断で、交流電源母線へ返送するか、同コンバ-タ-内のインバ-タ-で消費する。
※自動車の場合、交流モーターだが電源は直流ですので、効率が良い。
※インバーターで有れば電源の交流直流はどちらでも対応します。
高精度なインバ-タ-は指令に対して、回転数制御、トルク制御を可能とする場合、モ-タ-の回転とトルク成分の計算をする必要があります。
また、モ-タ-の回転状態をインバ-タ-は高精度に把握する必要があります。(PG 等によるフィードバック)
このシステムをの総称をベクトル制御インバ-タ-と言います。
※この方式には、色々種類がありますが、代表的なシステムでお話ししています。
たとえば、フィルムの様な薄い物を巻く行程では、その性能がダイレクトに係る場面でもあります。
フィルムの様な巻き物を巻く場合、巻くフィルムの速度、巻く径に応じた引く力(テンション)を常にモ-タ-はコントロ-ルしながら巻きます。
巻く側では、巻き径が小さい場合から大きくなる間の回転数と必要軸トルクの連続計算し指令。
巻き出し側では、巻き径が大きい場合から小さくなる間の回転数と必要軸トルクの連続計算し指令。
(巻径が小さい時は力は少なく回転数は高く、巻径が大きい場合は力が大きく回転は低く)
どうでしょう、この簡単に思える巻き物の行程、実は、巻く側と巻き取られる側では、まったく逆の力が必要なのです。
巻く側は「力行」方向で、巻き出す側は、連続的な「回生」方向なのです。
※車や電車の場合、回生制動。
このような、場面でも、最近のベクトル制御技術を取り込んだインバ-タ-が多様され、回転数(周波数)とトルク(力)をモ-タ-の性能範囲内であれば、お互い自由に変化させる事が可能となりました。
極端な話、回転数が0回転でも、そのモ-タ-システムが持つ範囲内の150%トルクを発生させる事が可能な物もあります。
これは、回転数が0rpmですので、完全なブレ-キ停止している状態です。
巻工程では、フィルムを所定のテンションで張って停止するストールテンションでは実に大切な動作です。
また、回転数は1rpmでも100%以上のトルクを出す事も可能です。
※一般的なPG付きリアルセンスドベクトル制御型の場合です。
・力行と回生
力行とはモ-タ-が指令に対して能動的に回転する方向を指し、電源電圧を消費する方向。
回生とはモ-タ-が指令に対して能動的にブレ-キ(制動)を掛ける方向を指し、電源電圧に対して発電する方向。
又、この事を以下に呼びます。
第1象限(正転力行)
第2象限(正転制動)
第3象限(逆転力行)
第4象限(逆転制動)
この感覚、綱引きを思いだしてください。
「中心のラインを真ん中に保ち、お互い綱引きしなさい」
こんな事もリアルセンスドベクトル制御型のモ-タ-を二台使い連続的に行う事ができます。
どうでしょう?
各種自動化産業で使用されるシステムには、常にトルクと回転数(回転角度)は上位より指示があります。
その指示にモ-タ-は沿って動きます。
話は、長くなりましたが、単純に「モ-タ-」と「エンジン」の違いは分かったでしょうか?
そうです。
最近のベクトル制御モ-タ- → 極論は停止していても力が出せる。(性能範囲内で)
エンジン → 特定の回転数域で無いと力が出せない (性能範囲内で
※モータもエンジンも同じ出力での比較です。
最後に。
自動車のモ-タ-に対する指令・・・・・・
難しいのでしょうね・・・・
なんたって!
我が儘な人間がメイン指令するのですから・・・・
発生トルクパタ-ンや、速度、トルク制限等を自由に変えられたら面白いでしょうね!
バッテリ-が持たないでしょうが。。。。
※私は、車の開発者ではありませんが、車で使用されている基盤技術は同じ考え方だと思います。
※エンジンとモーターの特徴をお話している趣旨ですので、宜しくお願いします。
御清聴ありがとうございます。
※一般的な「ベクトル制御交流誘導電動機」の用語を使用しています。
※電源には、交流用と直流用があります。
※モ-タ-回転のセンシング方法には各種あります。
※仕様でサ-ボモ-タ-とラップしますが、あくまでもベクトル制御交流誘導電動機について話しています。
※一般的なベクトル制御交流かご型誘導電動機システムについて書いていますので、各種産業に於いての安全装置やフェ-ルセイフ の考え方、トルク制限、速度制限方法等は各業界のシステム枠を参照願います。
※最近の永久磁石を利用した高効率ベクトル制御交流かご型誘導電動機も同等と扱います。
※高精度位置決め用途のモーターは除外して説明しています。
※エンジン、モーター共に変速機やクラッチ等を含まない状態での比較です。