約5ヶ月半という長い時間をかけ、ようやく完成しました。
完成画像をご覧頂く前にジオラマの場面設定について少し触れたいと思います。
1944年12月2日、太平洋戦争の主戦場はフィリピンに移っており、島で戦う陸軍へ海軍の船が物資を輸送することが繰り返されていました。名付けて「
多号作戦」。
同作戦は第10次まで続き、竹は第3次、第5次、第7次に参陣しましたが、ジオラマは第7次作戦のいち場面を再現したものです。
7次部隊は駆逐艦桑と竹、そして第9号、第140号、第159号輸送艦の計5隻編成でした。道中の空襲をくぐり抜け、夜間にオルモック湾に到着し物資陸揚げを開始。その時米新鋭駆逐艦3隻が接近してきました。

まず護衛の桑が戦闘を開始しましたが、戦時急造型の桑では装備の整ったアメリカの大型駆逐艦3隻に太刀打ちできず僅か9分で撃沈されます。
残った竹は輸送艦を守るため駆逐艦群に向かい、右回頭中に93式酸素魚雷を2本発射、そのうち1本が駆逐艦クーパーに命中し轟沈させました。
これに驚いた米軍は戦場を離脱、竹と輸送艦3隻は無事マニラ湾まで帰投することができました。
これが日本海軍自慢の93式酸素魚雷による最後の敵艦撃沈です。
という戦いの魚雷発射の瞬間をジオラマ化するというテーマです。
それではいよいよご覧頂きましょう↓
魚雷は「腹打ち」を避けるため回頭中に傾いた状態から発射するとのことだったので、右回頭中で左舷に5°傾けてあります。
その日は北(艦尾)からの風を受けながらの戦いだったようなので、波を作る際に意識しました。
また当日(12/2)は満月でした。

ジオラマ背景に天の川が写っていますが、あくまでも雰囲気重視の場面設定です。ただ背景があると「夜戦感」は増す気がしますね(^^)
構図の基本の一つに「三角形を作る」というものがあるので、ジオラマでは竹を斜めに配置するとともに、ウェーキ、後楼、前楼、水柱の順に高くなるようにしました(12.7cm砲弾では実際の水柱はもっと小さかったと思われます)。なお水柱は点滅LEDを仕込みました。
竹各部ごとの細かい説明はこれまでの製作記で触れてきたので、再び触れません。ここではこの作品を作った感想を記しておこうと思います。
近年、艦船モデルは精密化の一途を辿り、とても1/700とは思えない詳細な表現も多く見られます。私の作品はそうした作品群には遠く遠く及びませんが、唯一自信を持てそうなのが「考証の正確さ」。
入手できるありとあらゆる資料を漁り、コピーした図面には無数の書込みを入れ、様々な写真を繰り返し何度も観察し、それでも足りない部分は極力合理的と考えられる推測で補いました。創作はドラム缶のみです(笑)
完成の瞬間、
・今の自分の力を出し切った
・予想以上の完成度に達した
・連日の細かい作業で視力が大きく落ちた(笑)
と感じました。
前回WLキットを作ったのは学生の頃。当時はまだ今ほどの精密工作をする風潮はなく、元々のWLシリーズの趣旨であるコレクション性を重視した製作が主流で、WLコンテスト等を通じて少しずつ精密工作化が進んでおり、各出版社から図面やイラストなどを含む様々な資料が充実し出した時期でもあり、言わば過渡期だったと思います。
時を経た現在は艦船に関する研究も進み、新たな資料も多く公開され、それらをネットで容易に確認出来る時代。キットのモールドも進化しましたし、アフターパーツも大幅に充実しました。
そんな大きな違いがあれば、当時の私と作品レベルが変わるのは当然です。
(参考画像↓:下が当時の作品)

当時も今回使ったものと同じ図面を使っており、小さな構造物などは図面通りに配置されているので、当時の自分もけっこう頑張ってたんだなと思います(笑)
ただ今回の場合、正面線図を元にした艦首形状修正や各装備の役割や構造の理解、自身初のエッチングパーツ導入による更なる精密化という「進化(深化)」が実行・実現できたのは大きな収穫でした。
無論やり残したこともありますが、小さなことばかりです。
久々のWLモデル製作は想像以上に楽しく、時間を忘れてのめり込むほどで、昔の自分を取り戻したような錯覚に陥ることさえありました。50代になって気力体力とも落ち込みが激しいと感じていますが、俺にはまだこれだけの力が残っているのか、みたいな(笑)
しかし視力の落ち方がかなり大きいと感じているので、WL製作はいずれまたということにして、いったんガンプラに戻りたいと思います。
※最後にこれまでの製作記(全18回)を振り返ってみたいと思います。
松型駆逐艦・竹(キットのチェック編)
松型駆逐艦・竹(滑り止め甲板の検討など)
松型駆逐艦・竹(資料収集と滑り止め甲板製作など)
松型駆逐艦・竹(滑り止め甲板完成&艦首の修正)
松型駆逐艦・竹(魚雷運搬軌条の設置&艦首付近の製作)
松型駆逐艦・竹(中央機銃台&続・艦首付近の製作)
松型駆逐艦・竹(煙突の製作)
松型駆逐艦・竹(舷側と後部甲板室の製作)
松型駆逐艦・竹(艦橋等の製作・海面の試作)
松型駆逐艦・竹(艦橋の製作その2 など)
松型駆逐艦・竹(艦橋と一番主砲の製作)
松型駆逐艦・竹(ジオラマベースの製作)
松型駆逐艦・竹(魚雷発射管と二番主砲の製作)
松型駆逐艦・竹(続・ジオラマベースの製作)
松型駆逐艦・竹(各部のディテールアップ)
松型駆逐艦・竹(ジオラマベースの製作・最終回)
松型駆逐艦・竹(艦体各部の製作・最終回)
松型駆逐艦・竹(塗装について)
駆逐艦竹 製作資料集
Posted at 2020/07/18 20:13:10 | |
艦船模型 | 趣味