今でもたまに「丸目4灯のジャガーを買いたい」という方が居られます。
でも丸目4灯最後のモデルとなった私の車でも新車で販売されていたのは2003年から2010年までで、一番最後のモデルの販売が終了して6年が経ちます。そうなると故障やメンテの心配が当然出て来るだろうと思われます。
ところが他のメジャーなモデルと違い、ネットで検索しても実際にユーザーにとって有益な情報が極めて少なく、その少なさを逆手に取って間違った情報を流す業者が存在する事が気になりました。
この業者は中古車販売が中心になると思われますが、私が知る限り在庫情報は囮広告が殆どで、既に売却済みの情報を取り下げずに延々と掲載しているようです。メンテに関してもジャガーの経験豊富さを謳っているようですが、その実些細な故障でも大袈裟に「ディーラーならすごく高額な修理代になりますが、ウチならお安く出来ます」的なセールストークを持ちかけているようです。しかし知人から聞いたその金額はディーラーと比較してほとんど変わらず、状況によってはディーラーより高い話も耳にします。その話をディーラーですると「ああ、あそこですか(笑)」と失笑気味に「あそこの業者さんは自分で分からないとウチに持ってきますね」との事なので推して知るべきなのでしょう。
(それでも最近は「ジャガーは金にならない」と判断したようで、あまり大書きは潜めたようですが)
そこで、この車と10年付き合ってみた真実の部分を少しご紹介出来ればと思います。確かに国産車に比較すれば信頼性の部分でもコスト面でも負担になる部分は否定出来ません。が、車そのものはとてもしっかりしているので、もしこれからこのモデルを買いたい方には是非知っていて頂きたいと思うのです。
まずは年度による違いの部分ですが…
X350が正式なマイナーチェンジでX358になるまでの間、小さなチェンジが2回行われています。私の2006年後期からの2007年モデルを中心に、違いを挙げて行くと…

私の350後期型はグリルのインナーがメッキのメッシュになっています。これが前期と中期は格子状のインナーグリルになり、サラウンドは前期がメッキ、中期がボディ同色、後期はメッキに戻っています。この部分は部品として入手可能ですので、お好みに合わせて何とでも出来ます。

このフォグランプの横の黒い樹脂部品ですが、前期と中期は光沢のあるブラック塗装仕上げになります。後期は無塗装で梨地ブラックで、何となくコストダウンを感じなくもありません。尚窓周りのメッキはX308までの硬質クロームとは違い、他の輸入車同様に雨ざらしでは白い曇りが発生する樹脂メッキとなります。

前期の前後ウィンドゥの周囲にはクロームの枠が付いていましたが、中期と後期は写真のようにクロームの枠が廃止されています。ビジュアル的には枠がメッキのほうが雰囲気ありますが、無いものは掃除が楽です。

前期と中期はドアにボディ同色の樹脂製サイドモールがありますが、後期では廃止された事に伴ってフェンダー部分のウィンカーデザインが楕円形に変更されています。

リアのランプもXJRは前期から後期までブラックですが、それ以外の中間グレードでメッキモール付きなのは前期だけになります。私はそれが気に入った為にランプユニットごと交換してもらいましたが、社外品で後付のクローム枠だけのものもあります。が、私的にそれは何か厚ぼったさを感じてイマイチでした。。尚、スーパーV8、ソブリン、ディムラーは前期、中期、後期共にメッキ仕上げとなります。
加えてランプ関係では、ドアロック時にウィンカーでの確認が出るのは後期のみになります。

トランクの右側にグレード名を表すエンブレムが入ったのも後期からになります。

このクロームのドアミラーカバーはディムラー用の純正品です。以前社外品で同様のパーツが販売されていましたが、何故か純正品の何倍もの価格設定で販売されていました。もしこのパーツをお求めであれば断然純正品を購入すべきです。
内装関係では…

XJR以外のV8モデルは全てウッドとレザーのコンビになります。このXJ6はディーラーオプションで10万円程度と記憶しておりますが、その際に一台一台木目の色や模様が違うので「極力他のパネルと色を合わせて下さい」とお願いした記憶があります。

オーディオは前期と中期がMDデッキが装着され、後期は一枚掛けのCDデッキに変更されています。尚これは予告なしでの変更で、私は納車後にディーラーオプションでCDデッキを付ける予定でしたがその必要が無くなりラッキーでありました。
細かな部分ですが…

前後ヘッドレスト根元の樹脂パーツが前期と中期はクロームメッキなのに対し、後期はごく普通の内装色の樹脂パーツにコストダウンされています。当初私は前後合わせて8個の交換を考えましたが、フロントのヘッドレストが電動である為にシートから抜けず、無理に交換するとかなりの金額となる為に断念しました。

リアの電動ブラインドとサイドの手動ブラインドはSCモデルには標準装備となり、後期のNAモデルには当時65000円のオプションでありました。これはスモーク嫌いな私は即決で選択しました。
よくこのモデルの鬼門と言われるエアサスペンションの故障ですが、年数に関わりなく前期モデルにトラブルが集中し、保証期間内に2回のユニット交換を経験されたオーナーさんも居られました。実際はフロント部分の故障が多いようで、エンジンを切ってから一日以内に車高がペタペタの状態になっているものはそろそろ修理の覚悟が必要となります。エンジンを掛ければ車高は元に戻りますが、コンプレッサーが過負荷となる為にコンプレッサーの寿命も縮める結果となるので要注意です。
その時によって部品の価格は違いますが、フロント部分とリア部分を一度に交換すると今なら60万円超えで、そこにコンプレッサーのお値段が大体15万円くらい見ておく必要があります。社外品でメカサスキットもあるようですが、このエアサスの乗り心地こそが350の個性だと思うので、個人的にはオススメしません。一般的には前と後は分けて交換するのが良いようで、私もある程度の段階で交換を考えておりましたが、ディーラーさん曰く「壊れてからの交換で大丈夫で、予防として交換する部分ではありませんから」との事でした。この部分は幸いにもトラブルに見舞われた事は皆無で、エンジンを停止して一週間以上停めておいても車高が落ちる事は一切ありませんでした。
もしこの部分を一気に直すと100万円近くになる場合もあるようですが、元々車両価格が800万円台から1500万円台までの車であることを考えると、それほど法外とは思えないのですが…
ZF製の6速ミッションも台数が少ない為かBMWほどのトラブルは聞きません。がやはり前期から中期モデルは発進直後に軽い「ガクっ」というショックが出るものが多かったようですが、これはプログラムの書き換えで直るケースと直らないケースがあり、試乗して少しでも不安を感じたらその個体はパスするのが正解だと思われます。本気でミッションを交換するとなれば100万円以上の出費となり、今の中古車の値段を考えると得策とは考えにくいところがあります。
そして初期モデルの一部のブレーキ関係はブレンボ製のもので、こちらも通常のものより高額になります。中期の中頃からテーベスというメーカーのものに変更されたそうで、こちらは輸入車としては常識的な価格になっています。

後期モデルから全てのグレードで18インチが落とされて、NAモデルは19インチ、SCモデルは20インチが標準となります。18インチはレクサスLSと同じサイズなのでタイヤの選択肢も豊富ですが、それ以外のものは選択肢が少なくタイヤの価格も高価になる事を覚悟する必要があります。
最後は天井部分の内張りですが、この350も例外なく布が垂れて落ちてきます。そうなると内装屋さんで修理が一般的で、ジャガーの事例は結構豊富なのでどこでも綺麗に出来ると思います。ただサンルーフ車は形状的に面倒なようで、もし私の車を修理した場合はディーラー経由で専門業者価格で11万円くらいとの事です。
もともとこの年代の車はコンピューターの塊なので、メカの部分でDIY可能な部分は極めて少ないと考えるべきです。前出の業者などは「ディーラーより安い」という部分を売りにしているようですが、その実あまり大きく値段が違うとは思えませんでした。なので実際には「ディーラーよりほんの少し安い」のでしょうが、それは「ディーラーより良い」訳では無く、迷わずディーラーに依頼するのが正解だと思います。ジャガーディーラーは輸入車ディーラーの中でも工賃はリーズナブルなほうです。
長文になりましたが、これはジャガーのみならずベントレーでも同じで他のブランドに比べて正しい情報が少なく、これからこの車を買おうとする人の参考になる記事が無かったので記しておこうと思ったものです。中古車の場合はある程度予算と程度の兼ね合いもあると思いますが、私の経験上では2006年以降のものを選ぶのが正しいように思います。これを御覧になると色々面倒な車に思われるかも知れませんが、10年を経ても乗る喜びは私の手元にある車で一番なのでもし今後トラブルが出てきてもとことん直して乗る覚悟を持つに相応しい存在だと自信を持って言えます。
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2017/05/21 17:21:36