
普段は記事のクオリティの低下で、手にとることがほとんどない車関係の雑誌でも、26日に発売されたばかりのWRC+の特集を見た瞬間、久々に”らしい”ものだったので、つい手に取ってみてしまいました。
日本メーカー、中でもトヨタはWRCに意欲的で、88年に165セリカで本格的にタイトル争いに挑戦すると、90年、92年にカルロス・サインツがドライバーズタイトルを、93年はカタルニアではユハ・カンクネンがドライバーズ・タイトルを決めるとともに、後半戦のオーストラリアでは、同じくユハ・カンクネンのドライブする185セリカの優勝によって、日本のメイクスでは初のマニュファクチャラーズ・タイトルを手にしました。 その初タイトルの余韻に浸っている時期に、トヨタは実践の場に投入する新機軸を開発するテストベッドとして、2台のプロトラリーカーを開発。うち、一台が画像の表紙を飾っている90系カローラベースの
IS2(
IS=アイデアル・サクセッサー)と呼ばれるモデルです。
そのIS2はカタチこそカローラFXですけど、中身は競技専用車に相応しい機構満載で、エンジンはセリカと同じ3S-Gながらも、縦置きレイアウト、トランスアクスルで、無論、駆動は4WDであることはいうまでもありませんが、驚いたのはサスペンションで、前後ともマルチリンクというこだわり。 おそらく、開発したチーフ、ディエター・ブーリングがベンツ出身のレーシングカー畑を歩んできたことも影響しているのでしょうか。 ラリーカーにレーシングカーの要素を盛り込んだ点で、フォード時代のジョン・ウィーラーが、RS1700Tにトランスアクスルを取り入れたところと似ています。
ただ、ウィーラーがエスコート・コスワースで成功したのと対照的に、このブーリングは巡り会わせが悪かったというべきか、このIS開発の後に、複雑なSストラットで開発が難航したST205セリカの初期のチーフに就任。 ハングオンクラッチ、弱点だった2段重ねタイプからストレートタイプのステアリングラックへの変更など多くの改良を盛り込んだものの、185のような成功は果たせず、あの有名なリストリクター・スキャンダル後、不遇の内にTTEを去ることになってしまいました。
当初、16年前のラリーXでこのカローラFXを知ったときに、個人的に後のWRカーのためのテストベッドとばかり思ったものでしたが、そうではなく、純粋に新しいラリーカーの構想のための試作車だったようです。とはいえ、特徴的なフロントサスも含めて、不遇の内にTTEを去ることになってしまったものの、後のフォーカスWRCが登場するはるか昔にこのような凄いラリーカーを開発していたブーリングの先見の明には驚くばかりです。 これ以上はWRC+で是非、楽しんでください(笑)。
Posted at 2011/04/28 18:49:54 | |
トラックバック(0) |
WRC | 日記