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2012年10月22日

メーカー別 ダウンサイジング考 日産編②

最近パソコンが壊れたり勤務先が変わったりヴィヴィオの電圧計が壊れたりしてなかなか記事を書く時間をとれなかったんですが、気を取り直していきましょう。
HR12DDRの紹介です。

前回紹介したHR12DEは、4気筒エンジンを3気筒エンジンに置き換るだけで、排気量はそのままでした。
しかし、HR12DDRは、1.5L・NA・4気筒のエンジンを1.2L・過給・3気筒に置き換えるという、真のダウンサイジングエンジンです。
欧州仕様のマーチに搭載された後、国内のレギュラーガソリン用に調整されて新型ノートに搭載されました。

HR12DEとHR12DDRは名前こそ似ていますが、全く別物のエンジンと言ってもいいぐらい違います。
日産車で例えるなら、ジュークとジュークRぐらい違います(笑
早い話が、俗に言う「魔改造」というやつで、現時点でできる事全て詰め込んでみました!というエンジンなんですね。
HR12DEというエンジンを言葉で表すと「DOHC直列3気筒」で事足りますが、
HR12DDRだと「DOHC直列3気筒直噴EGRミラーサイクルスーパーチャージド」となります^^;

後ろにくっついた言葉はどれもかなりの効率向上が見込める技術ですので、これらを理解する事が「これからのエンジン」を理解する事に繋がります。
それでは順番に解説していきます。

まず最初に「直噴」です。
これは「筒内直接噴射」の略で、燃料をシリンダーの中に直接噴射してますよ~という意味です。
これまでのエンジンの主流である、吸気バルブ裏側のインジェクターからインレットポートに燃料を噴射するPFI(ポート・フューエル・インジェクション)方式と比べて、
1,ポート内壁やバルブに燃料が付着しない為、吸入空気量に対して最適な量の燃料が噴射できる。
2,あらかじめ空気と燃料を混ぜ合わせてから吸入するPFIと違い、吸入空気圧縮後に燃料を噴射する為、より多くの空気が吸入できる。(シリンダの体積を100とすると、PFIが空気と燃料合わせて100吸い込むのに対し、直噴は100の空気を吸い込んだ後燃料を噴射する為、結果的に吸気量が増える)
3,圧縮後に燃料を噴射すると、燃料の気化熱で混合機の温度が下がり、最高燃焼温度も下がる為、圧縮比を上げてもノッキングしにくい。
等が主なメリットとしてあげられ、これらの効果により、PFI方式と比べて、充填効率が6~8%向上すると言われています。

次にEGR。
これは「エキゾースト・ガス・リサ―キュレーション」の頭文字で、日本語に直すと「排気再循環」となります。
燃焼後の排気ガスを吸気系統に混ぜる装置の事を言いますが、そんな事してなんのメリットがあるのか?というのがちょっとわかりにくい技術です。
もともとは三元触媒が無かった時代に、最高燃焼温度を下げてNOxを低減する目的で使われていました。(排気ガスには3原子分子であるCO2・H2Oが空気より多く含まれるので、より多くの熱を吸収し、燃焼温度が下がる)
現在でもNOx低減はEGRの重要な役割ですが、それに加えて「ポンピングロスの低減」という効果が注目されています。
通常、大気中に含まれる酸素(O2)の割合は約21%で一定ですので、必要とする酸素量が常に変化する自動車用エンジンには、吸入空気量(=酸素量)を制限する為のスロットルバルブが付いています。
ところが、このスロットルバルブというのが厄介者で、吸入空気量を減らそうとしてバルブを閉じると、エンジンが空気を吸い込む際の抵抗になってしまいます。
「なんとかスロットルバルブを開いたまま、酸素の量だけ減らせないか」というわけでEGRの出番です。
排気ガスは(理論上)空気と燃料が完全燃焼した後の気体ですから、もう一度燃焼室に入れてもなんの化学変化も起こしません。そのまま出てくるだけの「何もしないガス」です。
と言う事は、エンジンが必要な酸素量を賄えるだけの大気を吸入したら、余った空間に「何もしないガス」を詰め込んでやれば、あら不思議、スロットルバルブを開けたまま酸素の量が変えられちゃいました!という理屈で、吸入空気に排気ガスを混ぜるとポンピングロスが減るんです。
ただし、現在のガソリンエンジンでは排気ガスの割合が20%を超えると、CO2・H2Oが火炎伝播に必要な熱まで奪ってしまうので、更なるポンピングロス低減の為には後述するミラーサイクルのような、バルブの可変制御が必要になってきます。

さぁ、ドゥンドゥンいきます(笑
続いてはミラーサイクル。
これは、圧縮行程初期に吸気バルブを開きっぱなしにすることで、一度吸い込んだ空気をインマニ側に押し戻すことで、圧縮比<膨張比を実現する技術です。
エンジンは膨張比が大きい方がよりパワーが出ますが、普通のエンジンでは膨張比=圧縮比ですので、上げすぎるとノッキングが発生します。
しかし、ピストンがある程度上昇するまで吸気バルブを開けておくと、圧縮開始時のピストン位置と膨張完了時のピストン位置が変わり、実質的な圧縮比が低くなります。
ミラーサイクルエンジンの圧縮比が高くなるのはこの為で、HR12DDRでも圧縮比は12.0(欧州仕様は13.0)ですが、実質の圧縮比は10程度だと思われます。
更に、実際に必要な量よりも多くの空気を吸い込むため、普通のエンジンよりもスロットルバルブを大きく開く事ができ、ポンピングロス低減効果も望めます。
この技術の問題点は、せっかく吸い込んだ空気を押し戻してしまっているので、スペック上の排気量に見合ったパワーが得られない(小さな排気量のエンジンを積んでるのと一緒)ことで、日産の技術者の話では、HR12DDRが街中を走っているときの実際の排気量は約900ccらしいです。
しかしながら、コンパクトカーで街乗りする程度なら排気量は900ccもあれば充分なので、これはデメリットになり得ないのです。
もしパワーが必要な場面になったらどうするのって?そんな時の為に過給器があるんですよ( ̄ー ̄)

これでラスト!スーパーチャージャーです。
先ほどパワーが必要な時の為に過給器があるって言いましたが、HR12DDRに付いてるスーパーチャージャーはまさに言葉通り、パワーが必要な時しか動きません。
エアコンのコンプレッサーと同じように電磁クラッチが付いていて、低負荷領域では切り離されています。
高負荷になるとスーパーチャージャーがONになり、直噴・EGR・ミラーサイクルの利点を総動員して、過給しながら実圧縮比10以上というスポーツカー顔負けのエンジンに表情を変えます。
こうすることで、1.2Lながら1.5Lエンジン並のパワーを絞り出しているわけです。

長々と解説しましたが、日産がこのエンジンで何を目指したかをまとめると、
「900cc~1500ccまで排気量が可変する低抵抗エンジン」ということになります。
ここで紹介した技術以外に、日産が開発中の技術として、VCR(ヴァリアブル・コンプレッション・レシオ=可変圧縮比)という技術があり、こちらはバルブの制御に頼ることなく連続的に圧縮比を可変するもので、試作段階で圧縮比が8~14まで可変できるそうです。
HR12DDRの様なエンジンにVCRが加われば、更なる高過給化が可能ですので、やり方次第で1.2Lから2.0L並の出力を得る事も可能なはずです。

日産の目指す所は間違いなく「可変排気量エンジン」だと私は思っています。
将来的には、巡航時は軽自動車並みの燃費・アクセルを踏み込めば2.0L並の加速、という車が完成するでしょう。

気が付けばとんでもない文字数になってしまいましたが、次回はもうちょっと短くすむはず^^;
次はミツビシ編の予定です。
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Posted at 2012/10/22 22:16:49

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この記事へのコメント

2012年10月26日 22:26
なるほど… 流石黒鉄さん、勉強になります!(^^
コメントへの返答
2012年10月28日 12:06
実は書いてる最中は「これってこういう表現で間違ってないのか?」とか、「この単語は解説した方が良いのか?」とかビクビクしながら本のページをめくりまくったりググりまくったりしてます。

どの程度の知識を持った人を対象に、どの程度の説明をするのか。
これもまた勉強です、ハイ^^;
しかし写真や図が使えないのは結構辛いですね・・・。
2015年3月4日 21:59
初めまして。
>HR12DDRが街中を走っているときの実際の排気量は約900ccらしいです。
なるほどです。
長男がHR12DDRに乗っています。
ごく普通のアクセルワークの場合、
HR12DEよりも、もわーんとした加速で、HR12DEの方がキビキビしています。
緩めのスロットル開度ではHR12DEの方がトルク感も加速感も感じます。
どこかで読みましたがHR12DEは最終減速比がローギヤで加速重視である事、
1500ccから300ccもダウンしたので、試乗された時にパワー不足を感じないように
CVT制御を変更し、スロットル開度が低くてもゆっくり踏んでも
意図的に早く回転を上げパワーダウンを感じさせないようにしてあるとか。
でもそれって燃費にはよくないのでは?と思いました。

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