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Bank2の吸気側VANOS調整ユニットを交換しました。ずいぶん前からISTAではエラーコードを拾っていたため、ソレノイドバルブを交換したり、VANOS学習値をリセットしたり、試行錯誤を行いましたが解決に至らず。最近では警告灯の点灯頻度も上がったことから、この度の抜本的な対策として調整ユニットの交換となりました。交換作業は信頼のSunBeamさんです。なんと日帰り作業で対応して頂きました。
https://sunbeam8.com/17113/ 2
ISTAのVANOS診断結果では、Bank2の吸気側における最大ストップ位置と最小値がそれぞれ規定値を超えています。僅か0.9°ですがエラー検知のしきい値を超えていることから警告灯が点灯したようです。調整ユニット交換後の差異は3.8°となりました。正常値から約4°偏位していたことになりますが、この程度のズレをエンジンの調子から体感することは困難です。ただし、低速時の高負荷時にノッキングに近い異音(カリカリ音)がわずかに聞こえました。高回転に振ったエンジンの特性上、低回転域でのバルブタイミングのズレは異音に関係しているのかもしれません。ユニット交換後はこの異音が減ったように感じます。
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吸気側のVANOSはチェーンを付帯する内側のユニットです。私のM3は走行距離13万キロを超えていますが、シリンダーヘッドの内部はとてもきれいでした。オイル管理の大切さを痛感します。
SunmBeamさんはこの手の作業が得意とあって、午前中に作業を開始して15時くらいには終了していました。当然ですが、ガスケット類はすべて交換となります。また今回は、Bank1排気側のソレノイドバルブも測定値不良により交換となりました。
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調整ユニットを自宅で分解してみましたが、内部機構の破損はありませんでした。そもそもVANOSは丈夫かつシンプルな仕組みで、簡単に破損するようにはできていません。進角・遅角させる内部ギヤが油圧で可動する仕組みで、極めてよく考えられたギミックとなっています。こういうパーツは眺めるだけで惚れぼれしますね〜。
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VANOSの仕組みに興味が湧いたので少し調べてみました。メカニズムはイラストのとおりで、②の油路から③の小部屋にオイルが圧送されるとカムシャフトにつながるギヤが進角します。逆に⑤の油路から④の小部屋にオイルが圧送されるとギヤが戻り遅角します。この偏位ギヤはスプリングで一定方向に押し付けられているのですが、ソレノイドバルブの不具合でオイルの圧送が滞ると、ギヤがフリーの状態で固定側のギヤに激しくぶつかり破損する可能性があると思います。①の特にスプリング固定用の丸溝が切削してある部位の破断が多いようです。ただし、内部ギヤがいきなり破損することはなく、まずソレノイドバブルが不具合を起こし、油圧が不十分になり、その影響で調整ユニット内部のギヤが激しくぶつかり合い破損するという流れではないかと思います。
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私のM3の場合のように、内部ギヤの破断はなく、最大・最小ストップの位相がズレた原因を考えます。BMWの整備書には、VANOS調整ユニットは、カムシャフトに80Nmで締め付けた後に200度の角度締めをするように記載されています。これはかなりの締め付けトルクですが、調整ユニットとカムシャフトの接合部にはスプライン加工がないため、締め付けトルクを上回る強い回転トルクがかかると、調整ユニットとカムシャフトがズレるのではないかと思います。特に吸気側(Vの内側)の調整ユニットはクランクシャフトの駆動がチェーンを介してダイレクトにかかる構造です。
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その圧倒的に強い回転トルクとは、高回転時のシフトダウンによるオーバーレブではないかと思います。私の場合、警告灯が初めて点灯したのがサーキットでした。シフトダウン時に急激にレブアップした可能性は否定できません。統計を取った訳ではありませんが、VANOS調整ユニットのズレが生じている個体はMTが多いのではないでしょうか。オートブリッピング機能を有するDCTでは起こり得ない現象だと思います。
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VANOSの不具合に関する一連の取り組みは、調整ユニットの交換で終焉を迎えましたが、交換後はノッキングに似た異音も減り、快調そのものです。VANOS故障の予防に有効なのは、ソレノイドバルブの早期交換ですが、調整ユニットの回転ズレを防止するには、シフトダウンミスによるオーバーレブを避けることだと思います。特に高回転時は命取りです。この点でストロークが長めになる純正シフトノブが確実なシフト操作には良いと感じます。
作業時期:2024.04.27
走行距離:132,500km
作業場所:SunBeam(サンビーム)
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