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ひろくん@北海道のブログ一覧

2013年07月07日 イイね!

「音」が紡ぐ物語

突然ですが、「妙に懐かしさを憶える音」って有りますよね?
言葉や音楽なんかもそうですが、「音」が人間の記憶や心理に与える影響力ってのは決して馬鹿に出来ないものがあると思うのです。

例えば、昔良く聞いていた曲が不意にラジオなどから流れてきた時に、妙に懐かしさがこみ上げてきたりとか、歯医者の診察室から聞こえてくるリューターの音を聞くと、待合室で順番待ってるだけなのに妙に歯が疼くような錯覚を覚えてみたりとか(^^;
まじめな話をすると、全然泣き止まない赤ちゃんに心臓の音や血流音を聞かせると、とたんに泣き止むことがあるそうで、胎児として母親の胎内にいるときに聞いていたものを潜在的に記憶しているらしいという学術的な研究結果もあるそうな。

つまり、音というのは過去に経験した記憶や心理状態を探すためのインデックスの役割を持っていて、精神的なダメージの度合いによって「思い出」もしくは「トラウマ」として脳に刻みつけられるという訳なんですな。
…こういう解釈であってるかどうかは別として(笑)

ところで、私にとっての「懐かしさを憶える音」はこれです。



これは、1970年代前半辺りまで生産されていた日産ディーゼル製バスのエンジン音。
当時、この特徴的なエンジン音を轟かせて走っていたことを懐かしく思い出される方も少なくないでしょう。
ここ札幌でも例外ではなく、私が住む札幌市南区をテリトリーとするじょうてつバスにもまとまった数が在籍していました。

…いや、正確には「在籍していたはず」になります。

というのも、リアウィンドゥの上に「定鉄バス」とややかすれた赤文字で書かれていた、上の動画のサムネイルと同じモデル(と思われる車輌)後ろ姿を、小学校低学年ぐらいの頃辺りに「チラッと」見た程度でして(^^ゞ
しかも、それが最初で最後になってしまいました。

歴史をたどると、私が生まれた1972年、その前年に一部開通したばかりの地下鉄南北線の輸送力調整のため、当時じょうてつが運行していた路線と所有していた車輌の一部が札幌市交通局に譲渡していて、このとき日産ディーゼル製の車輌が相当数移り、じょうてつに残った車輌も早々に引退したものと考えられるのですが、あのエンジン音だけは私の脳裏に強烈に刻み込まれました。

しかし、「記憶の断片」しかない手がかりを基にしても、こうして「懐かしい音」に巡り会え、さらにその音の根源についてさらに深い知識が得られる事に、今更ながらインターネットの便利さを実感させられます。
勿論、音や文字といったデータをネット上にアップした方がいたからこそではあるんですが…。

そこで、このバスの搭載されたエンジンについて調べてみると、これが実に面白く、興味深いものであることがわかりました。

このエンジン、「ユニフロー掃気ディーゼルエンジン」といって、なんと、今や希少となった2サイクルなのです(^^



上の画像は、同じ機構を持つアメリカ・デトロイトディーゼル製の直3エンジン「3-71」型の断面図で、日産ディーゼルの前身である「民生デイゼル工業」がこのエンジンをライセンス生産し、国内唯一の「自動車用2サイクルディーゼルエンジン」として1955年にデビューしたのが「UDシリーズ」となります。

国産で唯一無二のエンジンというと、やはり、



このロータリーエンジンが余りに有名ですね(^^;
正直、UDシリーズはその影にすっぽりと隠れてしまう訳ですが、ロータリーにせよ、ユニフロー掃気式2サイクルエンジンにしろ、大本は外国の技術で有り、その技術を日本で熟成させたという点に加え、技術面から見ても特筆すべきハイライトが多数あったことは言うまでも無いことです。

そのハイライトとは、2サイクルエンジンというだけで無く、その機構にあります。



上は一般的な2サイクルガソリンエンジン4サイクルエンジンユニフロー掃気2サイクルエンジンの概念図を並べてみたのものです。

「2サイクルエンジン」といっても、ガソリン・ディーゼルを合わせると数種類あり、今回取り上げているユニフロー掃気タイプは2サイクルディーゼルエンジンのうちの一つで有り、2サイクルのガソリンエンジンによく使われているタイプ(上図左上)は発明者の名を取って「デイ式」と呼ばれています。

デイ式2サイクルの場合、ピストンの上下運動により掃・排気ポートを順次開閉させることで4サイクルの「吸排気バルブ」の役割をしているのに対し、ユニフロー掃気式にはシリンダ頭頂部に4サイクルエンジンのようにバルブが設けられていることが特徴で、4サイクルエンジンと同じようにカムシャフトを介して開閉されます。
しかし、これはあくまでも「排気側」のみのバルブであり、掃気ポートはデイ式と同様にシリンダ側面部に有り、シリンダ内の空気の流れは「下から上へ」の一方通行となります。これが、「ユニフロー(単方向)掃気」と呼ばれる所以です。

ちなみに、掃気を促すためにルーツ式ブロア、即ち「スーパーチャージャー」が使われているわけですが、あくまでも「強制的に新しい空気をエンジンに送るための装備」であって、今日、一般的に理解されている「出力向上目的」という位置づけではないようです。
尤も、「排ガスを素早く外に出し、新気をいかに素早く詰め込むか」というのは出力向上策の基本でも有り、「パワーアップのためのスーチャー搭載」と理解してもあながち間違いではないのですが(^^ゞ

このエンジン、2サイクルエンジンの特徴である「コンパクトで単純な構造」に加え、吸気・圧縮・燃焼・排気の4行程を行うのにクランクシャフトを2回転させなければならない4サイクルに対し、2サイクルはクランクシャフト1回転で済ませられる、つまり、単純に言えば燃焼回数が4サイクルの倍に増やせる事もあり、4サイクルより少ない排気量で、遜色ない出力が得られるという利点は変わリません。
このため、他社が4サイクルの大排気量エンジンを投入する中、日産ディーゼルはユニフロー掃気式2サイクルエンジンで渡り合うことが出来たのです。

また、ユニフロー掃気の場合、デイ式2サイクルで行われる「クランクケース内での予備圧縮」行程が不要で、クランクシャフト等への潤滑のために従来必要であった「専用オイルの必要性」と「燃料とエンジンオイルの混合」が不要となるため、4サイクル用のエンジンオイルと共用でき、コストやメンテナンス面にも非常に有利になっています。

こうして、3気筒から始まったUDシリーズは4、5、6気筒とマルチシリンダ化していき、最終的には、



この「国鉄ハイウェイバス」にも搭載され、「国鉄専用型式」となったV8RA120型搭載のV8や、公道外ダンプなどに搭載されたV12にまで拡大することになりますが、排ガス規制が強化された1974年、すでに同時並行で開発・搭載が始まっていた4サイクルディーゼルエンジンにバトンタッチするように、登場から数えて20年ほどの歴史を刻み自動車用エンジンの第一線から退くことになります。

余談ですが、UDエンジンのベースとなったデトロイトディーゼルの「シリーズ71」は、日産ディーゼルが生産を終えた後も改良を加え「シリーズ91」に発展し、アメリカ名物で有り、私らアラフォー世代には懐かしい鈴木英人氏のイラストでおなじみのグレイハウンドバス(これ、バスの車名だと思ってたら、アメリカのバス会社の名前なのね…)の長距離路線用バスにも搭載され、最終的に1990年代まで生き残ることになります。
全くの偶然とはいえ、根本が同じエンジンがアメリカと日本で長距離バス専用車両に搭載されていたって言うのも不思議な縁を感じますね~。

…と、ここまで読んでいただいた車好きの方には何となく察しが付いてる思うのですが、日産ディーゼル製トラック・バスに必ず付いていた「赤丸にUDの白文字」バッジの由来でして、ボルボグループと日産グループの一員となった現在の社名、



「UDトラックス」へとつながっていくことになります。

元々はUniflow-scavenging(ユニフロー掃気) Diesel-engine」を意味していたUDは、4サイクルエンジンへ移行後も日産ディーゼルの象徴として、そして、「Ultimate Dependability(究極の信頼)」という意味に変わった現在も、その伝統は連綿と受け継がれているのです。

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「とりあえず現地報告-その2- http://cvw.jp/b/929608/41169412/
何シテル?   03/03 00:46
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