ベリリウムもMMCも使えないF1より学生フォーミュラのほうがどう考えても面白いじゃんと思うクリストファです。
名古屋工業大学フォーミュラチームが
3Dプリンタでサージタンクを作ったそうです。
http://news.mynavi.jp/news/2014/09/03/233/
せっかく流体解析して理想的なモデリングをしても
FRPのハンドレイアップじゃ正確に作れないしバリも多い。
じゃあ3Dデータから直接成形しよう…っていう
とても真っ当な3Dプリンタの使い方です。
上智大学のSophia Racingなんかは昔から使ってますね。
写真を見る限り、これはプロユースの3Dプリンタで積層して
外側からFRPのレイアップで補強してるんだと思います。
http://i.materialise.co.jp/blog/entry/1113
上智大学はスロットルまで自作してます。
大学生だったら見学に行きたかった…!
上智大学が使っていたのはガラス繊維強化ナイロンのようです。
絶対圧2.5バールもかかるのに樹脂?と思われるかもしれませんが
高分子材料であるナイロンは、高い強度のわりに非常に軽いため
断面を厚くでき、設計によっては金属よりずっと優秀です。
アルミ溶接よりよっぽど強度も信頼性も設計自由度もあります。
粉末をレーザーで固めていく粉末焼結積層法(SLS製法)なので
面倒なサポート材除去やパリ・剥離とも無縁だしね。
※残念ながら聞き入れていただけなかったのでここに警告しておきます。
吸気系、特にエアクリ下流に熱溶融式積層を使うのは非常に危険です。安価な家庭用3Dプリンタでの熱溶融式積層は剥離がたいへん発生しやすい造形方式です。積層の剥離が発生した場合、NA車であればスロットルもしくはバルブの破損、ターボ車であればタービン破損の危険性があります。また、強度の高いナイロン粉末焼結式であっても、プロが吸気系の試作に使用する場合には研磨と表面処理を行っています。3Dプリンタに対するこれ以上の誤解を防ぐためにも、吸気系に対する家庭用3Dプリンタ部品の安易な使用に関しては、作成者に対しても使用者に対しても強く自制を求めます。
失礼いたしました。
うーん、ここしばらく家庭用3Dプリンタをガッツリ使ってみての感想としては、
やっぱり熱溶融式の家庭用3Dプリンタは
ぜんぜんダメ
です。
コスト以外で粉末積層法に全くかなわない。
PLAはバリが出るしサポート材除去がつらい。
ABSは反るからプリンタの前で監視してないといけない。
ついでに、どれだけ丁寧に積層しても
機能部品としての美観・精度・強度が足りない!
おもちゃとしては楽しかったのですが、
限界が見えてくると途端につまらない。
ヨーダならビレッジバンガードにも売ってるし…
こう思うようになったのは、ナイロン粉末積層の3Dプリントが
わりと現実的な値段になってきた、っていう理由もあります。
実はこのまえ試しにナイロン粉末積層法の部品を外注したのですが、
これが軽くて強度がものすごく高く、綺麗で、精密で、設計も自由度があるので、
やっぱりコストが10倍になってでもナイロンがいいや、っていう結論に達しました。
フィラメント溶かして苦労しながら積層して……ってやってたあの頃は
どんだけマゾヒストだったのかと。
というわけで、
家庭用3Dプリンタの前でウンウン唸りながら積層設定して
ガタガタでバリの多いプラスチックの塊を作るより、
CADデータ作って即送信して宅急便が届けてくれた方が効率的!
業務用3Dプリンタだから綺麗で強度も高いし最高!
…っていう、一周回って実につまらない悟りを開いてしまったのでした。
まさに、そば打ちセット買って打ち始めたらしばらくは楽しいんだけど
どう考えても外で食べたほうが楽だし安いし美味しいしで、
やがては倉庫の奥で盛大なゴミになる的な、そのパターン。
まーそんな生悟りは海外の人もとっくに開いていて、
家庭用の卓上ナイロン粉末焼結プリンタとか出始めたらしいけど、
あれは分子間の結合強度がレーザーの出力に依存するので
家庭レベルの電力では強度が低下するのでは、と思います。
一晩動かしておくと電気代がシャレにならなさそうです。
あと粉は飛ぶし、うるさいし、定期クリーニングは必要だし……
やっぱりご家庭に試作以上の生産設備を導入するのは無理があるよなあ、
というのが、いろいろ使って体験してみた2014年時点での結論です。
オレ達はようやくのぼりはじめたばかりだからな
このはてしなく遠い3Dプリント坂をよ…
3Dプリンタの限界については分かりやすいこちらの記事もどうぞ↓
3Dプリンター騒がれ過ぎ。それで飯食ってる僕が言うんだから間違いない
http://www.gizmodo.jp/2013/09/3d_97.html
Posted at 2014/09/03 18:35:50 | |
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