ゴールデン・ウィークが終わったばかりのような気がしているけれども、もう6月。
梅雨入り目前だったこの週末は、とても良く晴れて、最高のドライブ日和だった。
こんな日は、エアコンの無いクルマに限る。
4枚の窓をすべて全開まで開け放ち、クルマ一杯に外の空気を吸い込んで走る。
エアコンのあるクルマでは気付くことが無かったであろう幸せと贅沢を満喫できる。
LEGACYの修理が完了した連絡を受けたのは、先週土曜日のこと。
しかし、富山のディーラに預けていたこともあって、すぐには受け取りに行けず、今週の土曜日に受け取りにいくことにしていた。
朝早く、最寄り駅から電車を2本乗り継ぎ、高崎駅から北陸新幹線のシートに身を埋めた。
ほとんどトンネルなんじゃないかと思うほど、長大なトンネルが連続し、ウトウトしていたのもあって、気付くと糸魚川。
どこまでも続く青い空と、日本海の境目は、あやふやだった。
それくらい、良い天気だった。
10時にディーラについて、クルマの状態について聞いた。
なんでも、燃料ポンプのカプラが接触不良を起こしていたらしい。
ハーネスは新品部品が無いため、端子清掃して、端子を少し整形して、エンジンは掛かったそうだ。
たったそれだけのことだけど、それでクルマは動かなくなる。
難しい乗り物だ。
2週間ぶりに愛車のコクピットに乗り込み、キーを回す。
エンジンが掛かった。
それだけで、とても嬉しい。
嬉しいついでに能登半島へとクルマを進めた。
高速道路で七尾まで行き、能登島へと渡る。
たぶん、20年ぶりくらいの能登島。
記憶は、ほとんどなかった。
とても海が近くて、どこからでも最高の景色が見渡せた。
のとじま水族館にも行った。
ここも、20年前に行ったハズだが…イルカショーでステージに通され、イルカだったか、クジラだったかに触ったことと、水槽のトンネルがあったことくらいは覚えていた。
少しリニューアルしたようで、ブリやカンパチが泳ぐ水槽が、とてもきれいだった。
能登島から再び能登半島に戻り、2年前の忘れ物を取りにいくことにした。
2年前、2016年9月。
能登半島一周ドライブに出掛けた私は、愛車の電源トラブルに見舞われて、途方に暮れていた。
雨の降る夜だった。
オルタネータにつながる配線が切れかかっていたせいで、充電ができず、バッテリだけでの走行になっていた。
そして、バッテリが尽き果て、辿り着いたのが、西岸駅だった。
そこはアニメ『花咲くいろは』に登場する湯乃鷺駅のモデルだったようで、無人駅の駅舎には、訪れたファンが書き残す交流ノートが置いてあった。
私はこのアニメを見ていなかったのだけれども、とりあえず、ノートを開いた。
ほぼ毎日のように描き込みがあるノートで、すでに30冊を数えていた。
そこに、この駅に辿り着いた簡単な顛末を記し、また来ると誓った。
幸い、何度かエンジンを掛け直したら、たまたま接触が改善され、バッテリに充電できた。
どうにかこうにか、群馬に帰り、自分で修理したのだった。
そんな西岸駅に、訪れた。
交流ノートは35冊目になっていた。
やや、訪れる人のペースは鈍ったのだろうか。
でも、この日も私以外に一人、ファンがいた。
書き残した、過去の自分を確認し、そして、新たなノートに足跡を残す。
2年前のあの日、トラブルに見舞われなければ訪れることも無かった駅。
今年、こんなことにならなければ、再訪しなかったであろう駅。
愛車が故障したことで、2年前の私と、今の私はつながったのだ。
ちょっとした時間旅行をした気持ちになった。
西岸駅に、またいつか来ることを誓いつつ、羽咋市へ向かい、宿泊。
そして、今日、日曜日。
今日も、どこまでも青空が続いているような、最高の晴天。
昨日より暑く、日差しが強い。
国道415号を東に向かって走った。
子供のころ、よく魚釣りに来た富山新港を、ここ数年でできた巨大な新湊大橋から見下ろす。
釣り人は減ったように感じた。
国道8号に入り、黒部まで来て、2週間前よりも東までクルマを進められたことにしみじみした。
天険 親不知は、何度走ってもすごいところに道がある。
朽ちた旧道を見ながら、よくもまぁ、こんなところに道を通したものだと感心する。
海が青い。
お昼を過ぎ、そろそろ何か食べたいと思っていた上越市内。
急激にアクセルからのレスポンスが失われていった。
クラッチを切った瞬間、エンジン回転がゼロになった。
パワステが切れ、とてつもなく重たいハンドルが、能天気だった自分を殴りつけてきた。
最悪だが、国道8号の流れを止めるワケにはいかない。
急遽、ぽっかりと口を開けていたバスポケットにクルマを滑り込ませた。
ハザードを焚いて、サイドブレーキを引いた。
まったくもって、意味が分からなかった。
エンジンが止まった、それ以外の感情が無い。
300km走って、急にエンジンが止まるなんて、悪い夢だった。
何度かエンジンを掛けようとするけれど、掛からない。
仕方なく、キーを抜いた。
数分、頭の中で様々な選択肢を並べてみた。
どれも、これも、残念な結果にしかならない。
もう一度、キーを差し込み、回した。
すると、エンジンは掛かったが、とても低い回転数で数秒アイドリングして、落ちた。
また数分待って、同じことを繰り返した。
エンジンが掛かった。
とにかく、狭いバスポケットから脱出するべき。
その思いでクルマを出し、少し行ったところにあった休憩所にクルマを停めた。
エンジンを掛け直しても、掛かる。
よく分からない。
原因はなんなのか…。
燃料ポンプのメンテナンスハッチを開けてみた。
カプラはきちっと刺さっている。
とりあえず、一度抜いてみた。
特に傷んでいる感じも無い。
まったく分からない。
カプラを差し直す。
エンジンは掛かる。
とにかく、クルマに乗ろう。
治ったものだとばかり思っていた。
けれど、本質的な解決は得られていない。
国道8号に別れを告げ、国道253号で十日町、南魚沼を通って、三国峠を進む。
これを越えれば群馬県だ。
エンジンストールは、上越市で発生して以来、出ていない。
原因は不明なまま、三国峠の下りに入った。
前のクルマが極端に遅い。
と思っていると、何かに気付いた。
『CHECK ENGINE』が点灯している…。
なんなんだ一体。
クルマを停める場所もない。
CAN通信でとっている情報モニタをパチパチと切り替えていく。
どうせO2センサだろう。
しかし、O2センサは数値が出ている。
もっとも、リーン側は0.00Vで振り切っている。
やはり、O2センサか。
以前、O2センサが壊れたときは、ずっと0.30Vのままだった。
今回は、リーン側こそ振り切るものの、リッチ側は正しい様子。
確かに、若干、トルクの出方がオカシイ。
制御に介入している。
三国峠を下っていたら、CHECK ENGINEは消えた。
クルマを停めて、エラーコードの呼び出しをしたが、残っていない。
とにかく、トラブルだらけだ。
それでも、今回は一つだけよかったことがある。
自宅まで辿り着けた。
エンストに恐れながら、CHECK ENGINEに頭を抱えながら、それでも今回は、自宅に戻れた。
自宅の駐車場にLEGACYを入れるのは実に1か月以上ぶりだ。
今年度、ほとんどLEGACYに乗っていない。
この週末、およそ600km、LEGACYをドライブしたけれど、いろんなことにビクビクしていた。
なんとか。
なんとか、また。
何も考えることなく、感じたままにアクセルを踏むだけの週末を迎えたい。
そのためには、今のディーラに通うだけでは、不十分であることだけは、身にしみている。
好きなクルマに、好きなように乗ること、それがこうも難しいこととは。