近畿地方中部に、「名阪国道」と呼ばれる道路がある。
奈良県天理市と三重県亀山市を連結する自動車専用道路である名阪国道。通行料は無料。総延長は73.3km。片側二車線で、29個のインターチェンジと、4箇所のサービスエリアを持つ。
あくまでも一般の国道であり、制限速度は60km/h。だが、高速道路である東名阪自動車道と西名阪自動車道を接続する国道25号線のバイパスということもあり、走行する車輌のアベレージスピードは走行車線で80km/h~90km。追越車線では100km/h超である。
この道路の着工は昭和38年4月。「1000日で完成させる」ことを目標に建設が開始され、事実、昭和40年12月には開通することとなった。このことから、「千日道路」と呼ばれることもある。
建設の中で、準高速道路とされることにもなった。だが、現在の名阪国道は、高速道路と呼ぶにはあまりにも荒れた路面の道路となっており、道路の起伏や傾斜、湾曲なども非常に強いものとなっている。
特に、福住ICから天理東IC間にある「Ωカーブ」と呼ばれるカーブの連続する地帯は、高低差350m、距離10kmであり、高速道路の建設基準ギリギリのRと勾配であるとも言われている。そんな所へ、軽自動車から10トントラックまでもが、90km/h~100km/hオーバーのハイスピードで突入してゆくのだ。
結果、名阪国道は、10kmあたりの事故発生件数がなんと日本で一番多い道路となった。まさに、名実ともに「日本一危険な道路」である。
そんな名阪国道の42.3キロポスト付近。上り車線側に五月橋SAと呼ばれるサービスエリアがある。五月橋SAは、決して大きなサービスエリアではなく、駐車可能台数は100台にも満たない。同道路の針ICにある道の駅「針テラス」が500台以上の収容力を誇るのに比べれば、見るべくもない規模である。
しかして、1965年以来、45年以上も共用されている五月橋SAは、売店や自販機コーナーはもちろんのこと、小さいながらも友人の食堂も設置されており、いつも大型車輌で所狭しと駐車されているのを見受けることができた。
五月橋SA内の「さつきレストラン」のメニューは50品目以上。中でも、「ドライバー定食」と呼ばれる定食は、ボリューム満点の一言。知る人ぞ知る五月橋の名物として語り継がれていた……。
だが、そんな五月橋SAにも遂に終焉の時が訪れることとなる。五月橋SAの直前に位置する五月橋IC、それの拡張に伴って、五月橋SAも廃止されることとなったのである……
名阪国道のサービスエリアと言えば、名阪の超危険地帯であるΩカーブ途中に位置する高峰サービスエリアがあった。高峰と言えば、下り側では加速車線とは名ばかりの合流レーン、上り側では、もはや普通の駐車場から出るレベルの出入り口から時速80km/hの流れに合流せねばならないという愉快な仕様のサービスエリアであったのだが、2009年には上り側のサービスエリアが閉鎖されたばかり。それに続く五月橋SAの閉鎖は、名阪国道ファンにとって大きな衝撃の知らせであった……
五月橋SA閉鎖は2012年3月31日。さつきレストラン閉店は、3月20日――。ならば、行かねばなるまい、五月橋SAへ。そうだろう? 名阪ランナーの諸君。
てなことで行ってきたのぜ、五月橋SA。3月19日の話だけどね……。本当は20日の閉鎖の日に行きたかったけど、20日は木崎行きだったからさ……。18日は18日で名華祭だったから、五月橋行きもどうしようかと迷ったけど、結局行ってきましたよ。
天理ICから、Ωカーブを駆け上がり、福住を越え、針を越え、山添村へ。奈良と三重の県境、名張川のほとりに佇む、ここが五月橋サービスエリア。階段を上った所にレストランがあるサービスエリアって言ったら、奈良の人はなんとなく知ってるんじゃないでしょーか。
さらにここの名物は、実はトイレ。ガラス張りになっている男子用トイレからは、山添・月ヶ瀬の山々を見下ろすことが出来ます。まさに「絶景かな」ですよ、色んな意味で(爆) 小学校の手洗い場を思い出させる洗面所と、レモン石鹸もナイス(笑)
この五月橋SAの直前には五月橋ICがあり、それの拡張に伴って、このサービスエリアも廃止になるのだとか……。
コンクリート造りの階段をえっちらおっちら登って、『さつきレストラン』へ入る。店に入るなり、目に飛び込んでくるのはズラリとメニューサンプルの並んだガラスケース。耳に入ってくるのは哀愁ただよう歌謡曲。
注文するのはもちろん、「ドライバー定食」。さつきレストランならではの名物メニューですね。レジで食券を受け取ると、オバちゃんが厨房に「ドラ定二つ~!」と叫んでました。
店内の一番奥に陣取ると、これまたガラス張りの店内からは、月ヶ瀬と名張川が一望できる。
月ヶ瀬って言ったら梅林が有名ですが……ひょっとしたらこの辺りも、もうちょっとすると梅の花が綺麗なのかもしれない。
そして、コレが名阪国道五月橋SA さつきレストラン名物の『ドライバー定食』だ!
大盛りの御飯、大盛りのサラダ、大盛りの豚肉炒め。そしてラーメンかと見まごうぐらいの超大盛りの豚汁。それに、ひじきとお漬物。メニューのガラスケースの所のとはちょっと内容が変わってますが、これで893kcalの800円。さらに昔は御飯のお代りが自由だった!
サービスエリアの定食としては、値段の割にはかなりボリュームがあります。前に恵那峡サービスエリアで食べた、恵那峡定食よりもずっと量が多い……
個人的には、スタミナ定食(960円)や、からあげ定食(960円 862kcal)、焼肉定食(960円 794kcal)、ポークカツ定食(960円 910kcal)にも挑戦してみたかったが……まぁその機会は永遠に失われてしまいましたね……
でも、ドライバー定食も食べ応えありますよ……。いつも食べてるジョ●フルのサバ定食よりも、断然こっちの方が満足度が高い! 食った食ったと、久しぶりに満腹感を味わえましたよ。
……本当は、もっとゆっくりしたかったけれども、レンタカーのプリウスの引き取り時間が押し迫ってくる。あまりゆっくりしてもいられない。
「ごちそうさまでした。今まで長い間、お疲れ様でした」
厨房のおばちゃんたちに挨拶。「また来てねとは、もう言えないんやねぇ……」と寂しそうにおっしゃってたのが印象的でしたね……
さつきレストランの唄 (唄 藤のぶ子)
いらっしゃい! ごはんの大盛りお代り ただでっせ!
一、名阪国道五月橋
ちょっと長距離(ながたび)一休み
名張の川を 見下(おろ)して
街道一の レストラン
おやじの笑顔(かお)と人情と
味が嬉しい五月橋
ニ、伊賀路と大和路 県境
天理の峠を 越した頃
葉もなく赤い山つつじ
裸のままに幾千本
おやじの笑顔(かお)が目に浮かぶ
今日も寄ろうか五月橋
三、季節の変り目四季の山
春から秋への花暦
桑名の向こうの名古屋まで
プロの転がす車でも
おやじの笑顔(かお)が無事故でと
梅の月ヶ瀬 五月橋
『準備中』。この札が、『営業中』に変わることは、もう二度とない――
『名阪国道・五月橋サービスエリア』は、明日の2012年3月31日午後8時をもって、完全閉鎖される。
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Posted at
2012/03/30 14:39:14