レクサス NXハイブリッド

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2021年式NX350h感想文 - NXハイブリッド

試乗

2021年式NX350h感想文

おすすめ度: 3

満足している点
1.パワフルな動力性能
2.回生ブレーキのマナー
3.クセのないスッキリした操縦性
4.パワートレーンの選択肢の多さ
5.NXファンを裏切らないエクステリア
不満な点
1.荒々しいE/Gの振動騒音
2.左折時の死角が大きい
3.大型ディスプレイが悪目立ち
4.PDAの可能性
5.質感面で割切り過ぎ(レクサスとして)
総評
●足し算開発の頂点
レクサスというブランドは飽くなき理想の追求を具現化したLSとともに北米市場で1989年に誕生した。徹底的に背反の両立を追い求めたプロダクトはプレミアムセダンの世界に新しい選択肢があることを示した。

こうして歩み始めたレクサスの次なるイノベーションは1998年にデビューしたRXだ。平凡なFFセダンベースでプレミアムSUVを仕立てて世に問うた例はこれまで無く、SUVが持つ快適性とちょっとした冒険心をラグジュアリーな雰囲気で満たしたRXは世界中にフォロワーを産みだした。新たな市場を開拓したRXは北米を中心に大ヒットを記録し、順調に進化を重ねたRXはいつしか大きく立派になった。

2014年にデビューしたNXはそのRXがカバーしきれないスモールSUVクラスのプレミアムカーとして企画された。それまでのレクサスのヒエラルキーのエントリーモデルはハッチバックのCTであり、上にセダンのHSがあったがNXは待望のSUVのエントリーモデルであった。

海外専売だった4代目RAV4をベースにレクサス初のダウンサイジングターボ(2.0L直4ターボ)を搭載した。当時試乗したがエグいというかとんがったデザインながら、前述のターボもトヨタ自慢のHEVも選べるトヨタ的な安心感があるモデルだった。

今回取り上げるのは2021年にデビューした2代目である。実に7年ぶりの全面改良だが2019年に日本で発売されたRAV4をベースにレクサスブランドに必要な要素をアドオンされた成り立ちでは変わっていない。下から覗けばよく似ている。



ボディサイズは下記の通り。見事にRAV4→ハリアー→NXというヒエラルキーが見えてくる。



先代よりも全長+20mm、全幅+20mm、全高+15mm、軸距+30mmと少しずつ大型化している。

TNGA採用の兄弟車の資産を元に先代の正常進化を思えるエクステリアデザインを与え、そこにプレミアムカー的な先進テクノロジーをアドオンしたのが新型NXである。全くの新型モデルとして勢いのあった先代と比べればそのインパクトは小さい。しかし、大抵の2世代目というのは正常進化版となるケースが多く、インパクトが小さいこと自体は悪いことではない。NXとしての顧客層を継承し、足場をしっかり固めることが必要だったのだ。やはり売れたモデルは次期型のために投資して貰えるが、市場が小さいと判断されたCTは決して不人気というわけでも無かったのに1代限りで廃止するのはプレミアムブランドのあり方として疑問に感じている。

それはさておき、実際のNXは2021年らしいハイテクデバイスがちりばめられて見たことが無いものに対する驚きは与えてくれる。乗り込む際にドアハンドルを握るところから変えたのは演出としてうまい。その電気式ハンドルを活かして後続車を検知するとドアが開かない機能と抱き合わせたのもうまい。他にもレーンチェンジをアシストしてくれるとかスマホ操作で降車してても駐車をしてくれるとか先進装備類は今後普及が始まりそうな安全装備を一足先に楽しめるという優越感もある。カラフルな全面液晶メーターや14インチの超巨大液晶も液晶ディスプレイの物珍しさはあって良いが、こちらは時計のように「手仕事感のあるアナログが使いやすい」なんて言われる日もいつかは来るんじゃ無いかと思う。ハイテク感とクラフトマンシップの両立は今後のNXのような中途半端な価格帯の課題になるだろう。

試乗してみると時代が進化した分の進化が十分感じられるが、「TNGAの子供はTNGA」であり悪さをそのまま継承しているのが残念だ。特にE/Gが起動した際のエンジンの騒々しさがプレミアムブランドからかけ離れた粗雑な印象を与えてE/Gがかかる度に興醒めさせてしまう。この辺りは燃費だけを追求してプレミアムブランドに必要な機械が黒子に徹する感じが足りない。燃費に命をかけるキャラクターではない上に、試乗車で600万円を超える高価格車なのだからのだから最低限のデリカシーはあって良いはずだ。



価格帯は先代より値上がり傾向だが先代の2.0Lガソリンに変わり普通の2.5Lが追加されているので内容的にグレードダウンしている。もっとも先々代のRX270(FFのみ)が街でそこそこ見かけたように需要はあるのかも知れないが。日本ではNXでしか楽しめない2.5Lと8ATとの組み合わせや、トップバッターの2.4Lターボ、兄弟車よりパワフルなハイブリッド、或いはレクサス初のPHEVなど走りの面で選択肢が多い点はNXなりに力を入れたところなのかも知れない。

個人的にはせっかくレクサスを選ぶのだからお家芸のハイブリッドを選びたいところだが、あのE/G音が気になる・・・。少しでもE/Gが起動する頻度を減らすにはプラグインハイブリッドになる。その場合、ノーマルの見た目が好みなので必然的にVersion Lになるのだが714万円の価値があるかと問われると、払いすぎのような気もしてしまう。結局普通のガソリン車に肩肘張らずに乗るのが良いのかも知れない(笑)が走行中あのTNGAエンジンがずっと作動しているのも耐えられるだろうか。それなら、動力性能に余裕があるいっそ2.4ターボなのかな・・・とこんな風に決定打に欠けるのが現状だ。

NX350hは先代の味を引き継ぎながらも、TNGAの資産を活用して全体的なレベルアップを図りながらハイテク装備で高級感を演出した成り立ちだが、走りの面でもその印象は変わらない。100を105に、105を108にという弛まぬ改善の賜なのだが、一方で欧米の素早いBEVシフトや日産のe-POWERなどHEVの競合相手も進化している。「燃費が良いですから」だけで押し通しにくい時代になってきた事にトヨタは気づいているだろうか。ゆでガエルになっていないか?

私は中学生の時に初代プリウスが発売されて感銘を受け、以降いろんなTHS車に乗る機会があったのでどちらかと言えばTHSを応援している側だと思う。心の中では「あの頃より良くなったやん!」と思っていても取り巻く環境の変化に対応する必要があると私は思う。新世代TNGAの燃費性能を多くの人に認めさせる為には、そろそろフィーリング面のギャップを埋める活動を開始しなければならない。将来的にNXのHEVが今の走りを維持したままリッター40km/Lになる時代が来ても、周囲がBEVばかりになったときにこのNV性能では立ちゆかなくなる。E/Gそのものに手をつけられなければその周囲にふんだんに対策を入れるなど次の一手を考えなければ生き残れないのでは無いかと心配になった。

デザイン
3
●先代継承だけどよく見ると全然違う外装

エクステリアは一目見てNXの新型とすぐに分かる正常進化型のため、先代のエクステリアデザインが市場で高く評価されていたことがよく分かる。先代の横機長から縦基調に代わったグリルパターンは緻密な形状が刻まれているが、複雑な基本面に対して穴を開けているので色んな角度から見ても違和感が出ないように形状を調整することは非常にテクニックの要る作業だっただろう。フロントマスクはUXから始まったL字ガタDRLを眉毛のように配置したヘッドライト造形を継承しながら、つり目形状やクラムシェルフード、分厚いグリルのバランスでNXらしさが出ている。



サイドビューは先代のようにダイヤモンド型のキャビンから4輪がはみ出してきたような造形から一転、少し特徴が無いぼんやりした印象に見えたが、よく見るとドアハンドル付近の高さにあるキャラクターラインがRrドアで日本の分岐して消えてしまう。Rrコンビランプ付近のキャラクターラインと繋がっているようで繋がらないトリッキーな造形は、レクサスらしいと言えばその通り。

リアビューは先代の固定側と可動側のコンビランプが繋がって見える新技術が採用されていたのに新型ではあっさり捨て去り、横一文字にラインが広がるようなクリアランスランプを採用した。このモチーフの先頭バッターのUXは120個ものLEDを採用したそうだが、恐らくNXでは光らせ方を工夫しているはずだ。メインのコンビランプはL字型で一文字ランプとインテグレートされた形状となっている。最も特徴的なのはブランド創設以来守り続けてきたLマークに代わってLEXUSの離れ文字エンブレムに一新されたことだ。

いま、世界中の多くの自動車メーカーがエンブレムに離れ文字を採用する例が増えているので、時流に合わせたのだろうが、正直なところ私はどうでも良い。致命的に似合わないとまで思わないが果たして必要だったのか・・・。自動車もまだまだ耐久消費財の範疇にあるので旧世代商品の計画的陳腐化が必要なのだろう。



パッと見ただけだと、ルーフラインのピークがAピラーとルーフの接続部では無く、Rrドアフレームに来るクラウチングスタート的に見える造形や鋭利なQTRウインドウなどNXらしさを十分残しているので挑戦のない退屈な正常進化と思われがちだが、細かい部分はさりげなくエネルギーが費やされている。

一方で残念なのはそろそろ計画的陳腐化で廃止されるという噂が絶えないスピンドルグリルには縁取りのメッキモールが無くガンメタ塗装のみという事だ。

455万円スタートのプレミアムカーでありながらコスト的にケチった感があり寂しい時代になったものだ。

●とにかくディスプレイが悪目立ちする内装

内装は質感でハリアーに負けていた先代と比べて大きく進歩した。時代進化分の変更としてはスピードメーターが全面液晶タイプに変わり、シフトレバーがプリウスのようなエレクトロシフトマチックとなり、センターの液晶画面が馬鹿みたいにデカくなった。なんと14インチもあるそうだ・・・・・。初代NXデビュー時の標準は7インチだったので7年で2倍だ。もはや圧迫感を覚えるレベルだと私は感じてしまった。

ナビ画面が大きく、周辺カメラが大きく映ることも頼もしいのだが視界に入り続けるこの液晶のせいでインテリアの造形を楽しむ事がやりにくい。機能という意味では液晶画面は大きいに越したことはないのだろうが、本当にこんなに大きなサイズが必要なのか。



このペースなら2028年にデビューするかも知れない次期NX350e?には28インチのディスプレイが備わるだろう。私はこんな馬鹿馬鹿しいことは早々にやめるべきだと言いたいのだが、自動運転技術が進化して移動中にNetflixやAMAZONプライムビデオが合法的に楽しめる時代になれば当てこすりの嫌みでは無く本当に28インチディスプレイが実現される日が来るかも知れない。

先代のNXでは金属調塗装(ちょっとチープだった)センターコンソールを中心とした左右対称デザインだったが、新型になるとドライバー席優先のコックピット感のある内装になった。メーターと連続的なピアノブラックの樹脂で囲われて隣の14インチディスプレイまでをカバーするから視覚的にはここまでがコックピットの連続性を連想させる。左右の温度調節ダイヤルの下にはECO/NORMAL/SPORTSの3種から選べるドライブモードスイッチがある。試乗時に目立ちにくく「あれ?」と探してしまうほど地味なのでダイヤル色などもう少し目立たせても良かった。(下手したらここだけはRAV4の方が金がかかっているのでは無いか?)

センタートンネル上はRX程の広大な幅寸法は取れないが、北米で必須の大型カップホルダーとワークスペースを最小化できるエレクトロシフトマチックが配置され、その後にはEPBスイッチとEVモードスイッチなどが並ぶ。ピアノブラックなのは良いが試乗車は小傷が目立つし、光の反射で樹脂のヒケがかなり目立っている辺りはモノ作り大国のプレミアムブランドとしては恥ずべき体たらくだ。

大衆車では割り切りとか言い訳も立つだろうがレクサスNXは高級車で無ければならないのだ。

助手席側はソフトパッドで覆われて先代より一気に質感が上がったが、内装デザインとしてはあまり見るべきところが無く没個性的に感じてしまった。

先代はLFA流用の飾りボルトをあえて見える場所に採用したり使い道のない意味不明な手鏡など、良くも悪くもちょっとした遊び心も感じられた。UXでは和紙の質感を再現したセーフティパッドなどプレミアムブランドらしい挑戦もあるが、NXは大型ディスプレイに集中投資し、そこで力尽きた感がある。私にとってそのディスプレイに価値を見出さないのだから物足りないという感想になるわけだ。

評価するなら、外装は世の中のNXに対する期待を裏切らなかった意味では良かったが、何となくそこで止まってしまった感があり3。内装は先代の使いにくいタッチパッドがなくなり、植草教授大喜びの手鏡も無くなったのは良かったが、そのほかは凡庸でありむしろ、10インチ版の方が調和が取れているではないか。(敢えてナビの仕様を下げており存在自体に疑問符がつくが)

自動車ライクな訳でもなく、テスラほどの割り切りもない。質感は残念な部分もあるが鋭利なパーティングラインが当たるとか、硬質ハードプラスチックがテカテカしているほどでもないので3。総合3である。

レクサスのエントリーSUVとしてはUXがあるが、私にはUXはSUVには見えない。現時点のエントリーSUVはやはりNXである。その意味でやはり冒険は出来ず難しい判断の末に中庸を選んだのだろう。
走行性能
4
試乗車はNX350hのVer.L(FF)である。

スマートキーを持って乗り込む。ドアハンドルを握ったときに新鮮な感触がある。ドアハンドルが固いのだ。e-ラッチと呼ばれる電気式ドアハンドルとはハンドル裏面に電気スイッチがあり、スマートキーを持っているときに解錠して乗り込むことが出来る。ハンドルを握って引っ張る一般的なドアハンドルは「握る→引く→開ける」という動作だが、「握る→開ける」と動作が省略できる分スマートに乗り込むことが出来る。意外とこのe-ラッチでドアを開けるのは気分が良いもので新しい感覚が乗り込む度に味わえるのは良い。

ドアを閉めたときの隔壁感が高い事に気づく。NXはドアガラスにも中間膜を持った合わせガラスを採用して耳元の静かさを演出しているが、ドアミラーがブルブル振動しているのはガッカリポイントだ。

運転席に座るとRAV4やハリアーを経験した人ならスッと馴染むような感覚がある。TNGAは基本的な着座姿勢も揃えるので同じプラットフォームのSUVなら着座姿勢も共通だからだ。つまり、オルガンペダルでドアガラスにはミラーを見ようすると三角窓があって、ステアリングは中央にオフセットしている。

TNGAのハイブリッドはかなり電池のマージンを削った様子で先代プリウスや現行RAV4でも電動走行出来るレンジが広くなったと感じていたがNX350hも1.8t近い巨体を悠々と引っ張る。35km/h程度でE/Gが起動するが、他のトヨタ車より車速が低い起動回転数のためか高い回転数(最大効率点)に張りつく感覚が無いのは意外だった。トヨタのハイブリッドの商品としての弱点はEV走行からの落差である。E/Gが起動するや否やファーストアイドルが高いキャブ車のように2000rpm以上の回転数で車速と連動せず回り続けるため、フィーリング的に非力なCVT車のような空走感を感じてしまうのだ。



THSを弁護すると、この振る舞いは燃費の為には絶対的に正しい。燃費の最良エリアだけを狙って運転させて走らせているからだ。エンジンを最も効率の良い状態で動かし続けようとするのがTHSなのだから、筋は通っている。理屈は正しくとも人間の感覚に合わないところがトヨタにとっての悲劇である。

NX350hの場合は起動時のE/G回転数が低めでモーターアシストが強め?の印象を受ける。モーターが強力だからだろうか?起動後、加速させていっても比較的リニアに回転が上がる為、まるでハイギアードな車に乗っているかのような伸びが感じられるのは美点だ。TNGAエンジンのあの雑味のあるE/G音は前述の優れた制御でもレクサス級の防音材を以てしても食い止めることが出来なかったようだ。燃費が良いのは分かるがプレミアムカーの世界観をぶち壊すのに十分な音量でステアリングもそれにつられてブルブルと振動を伝えてくる。タコ表示によれば1500rpm~2000rpmから振動し始める。ステアリングラックは井形サブフレームに取付けられているが、そのサブフレームはE/Gを支えているのでE/G振動と連動している。E/Gが強烈な震動源だったとしてもステアリングを共振させなければ不快な思いはせずに済むのだが・・・。

市街地走行ではバッテリーの充電状態を示すSOC(State of Charge)が十分にあればアクセルワークを工夫することで思いのほかEV走行が楽しめる。

知人の愛車で運転する機会が多かった3代目ハリアーHEVを思い出すが、少しでも加速させるとE/Gが起動した。高速道路でSOCをフルにした後、一般道で細心のアクセルワークでEV走行をさせて悦に入っていても2kmも走らないうちに電池切れで充電始動してしまう。それと比べると、NX350hは「いいね!」と言ってもらえる進化を果たしている。

市街地走行ではモーター走行によるレスポンスの良さや信号待ち時の静けさなどHEVを選んだ人が優越感に浸りれるポイントは抑えている。惜しいのは左折時の死角が大きいことだ。スモールキャビンに見せる為ベルトラインが高めでかつAピラーが寝ているからドアミラー付近の空間が狭く、邪魔な感じがするのはマイナスポイントだ。NXらしいエクステリアデザインの為とは言え、この点はオーナーが慣れるしかないが、アラウンドビューモニターをこまめに使うなど巻き込み事故や縁石乗り上げに注意されたし。最小回転半径も5.8mという大回りのため、私はあまり旧市街地に踏み込む気にはなれなかった。先代は5.3m~5.6m、
現行型ハリアーは5.5m~5.7mなので10cmしか変わらないじゃないかと言われても絶対値として小回りが利かないなと感じてしまう。普段から5.0m前後の車に乗っているので曲がらないなという印象だが、車幅も広いので無理は禁物である。



新型NXは市街地走行中、前方で減速車が居ると早めに自動的に減速する機能があることに気づいた。前が空いていて惰性走行している際でも意図しない減速をする。これは全車速レーダークルコンを使っていなくても前方の車両の減速を検知するPDA(プロアクティブ・ドライビング・アシスト)が作動していたと分かった。作動するとメーター内にブレーキランプ点灯を示す表示が点灯する。

ドライバーの安心の為に車両側で危険から遠ざけるのは市街地で起こりうる追突事故の軽減に役立つ。横断者やカーブを検知して自動的に減速してくれる。この機能が役立つのは混雑した道路でよそ見をした間に前方で急減速・停止があるようなシーンだが緊急時自動ブレーキのように急ブレーキにならず、もっと手前で作動するのが特徴である。

私にとっては運転の裁量を奪われてしまった感じがあり、緊急時のみ働く自動ブレーキよりも煩わしいと感じた。決してブレーキをギリギリまで我慢してチキンレースがしたいわけでも無いが、自分の思い描く走りに対して高頻度でブレーキランプが点灯するような介入は私のイメージと違う。

普段の運転で意図しないタイミングで介入されるものの、多くの人の安心に繋がると言えばその通り。交通事故ゼロという誰も否定できない美しい目標の達成の為には人間に判断(必ずミスする)をさせないのがてっとり早い。しかし、自分の思うまま移動したいという欲求に対しては背反があり、想像以上に拒否反応が出たなと自分でも意外であった。幸いこの機能は設定画面でOFFして自動ブレーキのみを働かせることも出来るので今のところは個人的な問題にならないが、この機能をONにしておけば市街地でブレーキを踏まなくてもある程度走れてしまうからPDAに慣れてしまい運転に対する意識のレベルが低下する可能性を持っている。この装備がOFFに出来なくなる日が来るとすれば看過できない。今後の技術動向を注視したい。

(乗り心地項へ続く)
乗り心地
3
NXのNは「Nimble:すばしっこい」という意味で初代からRAV4譲りのキビキビした感覚を大切にしてきた。そんな新型NXをワインディングに持ち込むと確かによく走りよく曲がった。

余裕ある駆動力を活かしてサッと加速してコーナー手前でアクセルを軽く抜いて侵入する。EPSは軽すぎず重すぎず適度にステアリングを操舵させてくれる。スポーティにしたいから過敏な程曲がるようにするほど演出過剰ではない。奥でRが小さくなる複合コーナーではステアリングを切り足すが、鼻先の重さ(本当は相当重いと思う)を感じさせない。めちゃめちゃハイペースな走りでもある程度着いてきてくれそうなセッティングで、最量販の2.5HEVのFFがこの味付けなら全体的にNXは元気な車と言えそうだ。カタログによればバリアブルレシオのEPSを採用しており、ワインディングのきついカーブでも(切れ角が大きくなるので)よく舵が効く感じが追加されているのだろう。



タイヤは235/50R20のランフラットタイヤである。サイドウォールが固いので乗り心地に不利なタイヤを履いているがこのキビキビした操縦性にNXは助けられている。ふんわりした高級車然とした乗り心地ではないが、操縦性から考えれば上出来なコンフォート性能だ。

揺れがスッと収まる感覚は上質感に繋がっているが、NXは早くからLSW(レーザー溶接をスポット溶接の増打ち目的で使う工法)や構造用接着剤でボディのフランジを接着して剛性・減衰性を高めるなど当時欧州車で採用が進んでいた技術を少しずつ取り入れていた。



新型も同じようにレーザーピーニング溶接が採用された。知らない技術だったので調べてみたが、金属表面にレーザーを照射してストレスを与えることで表面に圧縮方向の残留応力を与えられる。これにより疲労破壊・応力腐食割れを防ぐことが出来る技術なのだそうで、恐らくLSWで処理された打点の寿命が延びることで今までよりも信頼性が必要な溶接箇所にも適用できるようになったと言うことだろうと想像した。(誰か教えて下さい)

ピーニング技術で有名なのは焼き入れした硬球を金属表面にぶつけて疲労強度を増すショットピーニングが有名で、この技術が戦後になってRS型トヨペットクラウンの高級車らしい乗り心地を実現する3枚リーフスプリング(4枚が普通)の実用化に貢献した。

余談はさておき、NX350hの操縦性は良好だが決して度が過ぎてクセが強い訳でもない。「すっきりと奥深い」走りという言葉をレクサスはスローガンに掲げている。爽健美茶が掲げている「澄み切って香ばしい」と似ていて頭の中で混乱しそうになるが、きっと初心者に優しくも厳しい審美眼がある人からもリスペクトされる乗り味を目指しているのだろう。自分は初心者寄りのスキルしか持ち合わせていないので案外NX350hのフレンドリーさと操縦性の良さは好意的に受け取った。例えばステアリングやサスをもっと固めて指一本分の操舵でグイグイ曲がりたがるような車に仕立てた方が個性的だと喜んでくれる人も居るだろう。ある範囲内でクセがある方が対象が好きになれるのは、わざわざMTを好んで所有する私にはよく分かる感情だ。

しかし、多くの一般のドライバーにとっては必要十分レベルの操縦性で満足できるだろうと感じた。それでいてRFTながら乗り心地も納得できるレベルだと評したいところだが、先日の一部改良でノーマルタイヤ仕様が追加された。市場では高級車としてはまだ不十分と認識する顧客が多かったのかも知れない。選択肢が増えたことは好ましい。



最後に自動車専用道路を気持ちよく3区間(!)走らせた。ETCを超えてアクセルを深く踏み込むとぐーっとトルクが立ち上がってあっという間に制限速度まで到達する。システム出力は243psを誇るのだから確かに自然吸気3.5L相当のパフォーマンスは伊達ではない。制限速度一定でクルージングさせていればE/Gも2000rpm以下で回っており、存在感は感じるものの音量は減って存在感が減ってくる。新型NXの為にウェザーストリップやガラスランを新開発した成果なのだろう。



先代は高速を走らせるとフードがブルブルと振動しているのが運転席からでも見えるほど情けない一面があったが。これも欧州車が当たり前のように採用しているツインフードロックを採用することで、ラジエータサポートとフードを合計4点支持することでフード自体の振動を減らすばかりかフード断面を活用してねじり剛性を高めて操縦性にも役立てている。フードロック一点だとピン支持的な回転をしてしまい、フードの剛性を利用できない。

NXはレクサスの中では元気なキャラクターでノンプレミアムのトヨタブランドでは採用しないような各種アイテムが織り込まれているが、次期トヨタブランド車にも良い技術は採用を拡大して高性能を民主化して欲しい。



7年間で進化したNX350hの走りに4だが、プレミアムカーとして残念なE/Gノイズとステアリング振動が気になって乗り心地評価は3。ただし、プレミアムカーとしては2.5とする。
積載性
3
室内空間は想像通りというか兄弟車の範疇を全く超えていない。RAV4やハリアーとよく似た感覚だが、Aピラーが寝ていたり14インチの巨大ディスプレイの影響でパノラマ感が無くそれがタイトなパーソナルカー感覚と言えば確かにそうかも知れない。個人的にはセダン系も保有しているので特に悪い印象はないが、人によってはSUVなのに圧迫感を嫌がる人が居てもおかしくない。

後席の印象も散々書き尽くしたTNGAのアレである。シートを直接ボディに取付けることで操縦性を高めたのだが、その分Rr席のゲストの足入れ性が悪い。運転席と後席の座っている中央座標点がズレているので気持ちよく足が入らない点が本当に気持ち悪い。後席を重視するならホイールベースが長いRXがあるとは言え、全長4.6m級の車体でこれかよ!と毒づきたくなるレベルにはある。

これはNXが悪いわけでは無くて生まれ持ったTNGAが悪いのでTNGAのP/Fを企画する際のパッケージングミスだ。線を引いた人はこれくらい許容できると思ったのだろうが私は感心しない。ちなみにRrホイールハウス部分は先代はソフトパッドが配されておもてなしを感じたが新型は硬質樹脂剥き出し。他にリクライニング段数が減るなど後席が相当軽視されている。

我が家のようにRr席にはCRSしか乗せないからと言う場合は十分なスペースがあり問題にならないが、大人4人がくつろいで旅行に出かけられるような空間になっていないのが残念なところだ。もう少しキチンと座らせればこのサイズでも満足いく居住空間が作れるのだが、この辺りがスタイル優先の陰の側面である。NXのスタイルが好きな方なら何ら気になる事ではないだろう。



後席居住性が割を食った一方でラゲージは520L(VDA法)と先代より小さくなっているが現行ハリアーの409Lよりは大きい。RAV4は580Lあり、広さは三兄弟のヒエラルキーに必ずしも比例しないようだ。ただ、先代のいかにも遮音性の良さそうなトノボードがペラペラの薄型になり、折りたたんでデッキ下に容易に収納が出来ることで使い勝手の面では悪くなっていなさそうだ。このトノカバー、ペラペラで華奢な割に使用時に撓まずに真っ直ぐ取りつけられる点は作り込みの成果を感じる。

全面毛足の長いカーペット貼りのラゲージは荷物を大切に積載できそうだ。私の(初代)RAV4は樹脂剥き出しのデッキサイドトリムが着いているが、油断すると簡単に傷がついてしまい気を遣う事この上ないが、カーペット張りだとその点が有り難い。(泥汚れに対する掃除しやすさでは逆転しそうだが)

デッキ下はサブトランクがあるが、サブトランク左側は補機バッテリーによって陣取られている。先代も同じ位置だったのだが、RAV4やハリアーはデッキサイド右側にバッテリーがあるのにきっとデザイン的な絞り込みがきつくてこうなったのだろう。(そう考えるとハリアーは頑張って成立させているなと思う)
試乗車はHEVだが、ガソリン車(NX350/250)は機内持ち込みサイズの小さめのスーツケースなら収納できるらしい。やはり補機バッテリーが利便性を損なっている。

先代NXはカーペットを敷いた床と前後左右の壁が別々の部品で出来ているが、新型はトレイ形状の一体部品で出来ている。樹脂部品には抜き角度という製造上の要件があるので、深さがあるほど手前よりも奥行き方向ですぼまるので容量的には不利だが部品の合わせがない分だけ建付けが容易で隙間も生じず一体化によるメリットは大きい。

SUVとしては必要十分レベルの積載量なので★3つ。
価格
2
新型NXの2021年当時の価格は下記の通り。



先代のNX200t標準車が428万円スタートなので比較すると27万円アップしているが、公称排気量(後期はNX300を名乗った)の差額0.5L分を考えると82万円の値上げに相当する。

NX300hが492万円スタートであり、差額は28万円新型が高いのだが、上記と同じ考え方を適用すれば新型はむしろ27万円安くなっている。

NX350(599万円)とNX200t(518万円)とFスポ同士で比較すると公称排気量0.5L分の価格差55万円を差し引いて26万円アップ。そこに専用のボディ補強が追加され、専用の4WD制御(50:50になるのがウリらしい)が採用されるなど旧来のクルマ好きには魅力的に映る人も居るだろう。

PHEVの場合、EV走行が出来るなど価値換算が難しいが、公称排気量350h→450h+を110万円として認めてやれば79万円高は決して高くない。(いや高いけど、、、。)

先代NXからの買換えを考えるなら350hが最もお買い得感が高い設定だ。

兄弟車と比較すると、日本で売られているRAV42.5ハイブリッドの最廉価仕様は353.8万円。ハリアーの場合371.8万円で対するNX350hの最廉価仕様は520万円と飛び抜けている。或いはPHEVとの比較ならRAV4が563.3万円、ハリアーが620万円でNXは714万円である。

NX250の場合、2500cc乗用車(275万円)+SUVプレミアム(30万円)=305万円からの差額150万円がレクサス代と大まかに捉えることが出来る。その追加料金によってトヨタブランドでは採用できない先進技術や世界観、おもてなしサービスなどのブランド体験を内包している。

後発のレクサスは競合するジャーマン3と比べて装備が充実しており、欲しいものは最初から着いているのが強みだった。元々のレクサスにはカーナビが標準装備というウリがあったが新型の標準モデルに備わるマルチメディアは9.8インチのコネクテッドナビに格下げとなり3年間しか無料で使えず、以後はコネクティッドサービスに内包される定額ナビとなってしまう。

3年で車を買い換える人なら良いのだがトヨタのこのやり方は少々セコい。結局車載ナビが載る14インチの方を選べば問題ないのだが、プレミアムクラスを選んでいるのにこのセコさはちょっと引っかかるものがあるが、将来中古車市場に流れるNXの9.8インチディスプレイ車はApple Car Playを使ってスマホ地図を使うのだろうから実害は無いかも知れないが、従来オーディオレスだった車種で3年間限定だけナビゲーションがあるならユーザーメリットもあるが、元々標準装備だったNXのナビが時限課金式になってしまうのは純粋なスペックダウンだ。

加えて先代の場合はI Packageというお買い得グレードが存在し、NXの世界観をお得に楽しめるようになっており、Version Lは本革シートをはじめとする高級装備が楽しみたい人向けに存在していた。

新型は何となく標準グレード(I Package相当の合皮シート)には噛ませ犬感があって、Version LやF SPORTを買わないと一人前として認めない感がある。お買い得感は目減りしたと言うことはレクサスブランドが認められたという自信から来るのだろうか。恐らく上位グレードを残価設定型クレジットで契約させて定期的に代替を促す為の施策の一つなのだろう。最廉価とて決して安くない対価を求める割に簡単に満足させないプレミアムブランドの厳しさを思い知らされた。

先代と価格帯は近いが、装備内容がしょぼくなっている点はバリューフォーマネーの観点で評価できない。ボッタクリとまでは言えないが敢えてプレミアムクラスを買おうとしている人たちにもう少し配慮があって良い。

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