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かつて子供たちのアイドルはスーパーカーだった!おじさんしか知らない、スーパーカーブームを振り返る
2022年4月19日
クルマに興味のある人なら一度は聞いたことがあるのが「スーパーカーブーム」でしょう。この「スーパーカーブーム」とはどうやった生まれたものなのでしょうか? その昔に盛り上がった「スーパーカーブーム」について、スーパーカーブームに真っ只中に少年時代を過ごした筆者が検証します。
発端は少年ジャンプに掲載された漫画だった
1975年、集英社の少年ジャンプである漫画の連載が始まりました。それが池沢さとし(現・池沢早人師)氏の作による「サーキットの狼」です。
一匹狼の走り屋である風吹裕矢が公道レースからサーキットレースへステップアップ、最終的にはF1にまで登り詰めるというサクセスストーリーです。
この物語(とくに前半)では、、主人公の風吹裕矢がロータス・ヨーロッパをドライブ、ライバル達がポルシェ・カレラ、ポルシェ・ターボ、フェラーリ・ディーノ、フェラーリBB、ランボルギーニ・カウンタックをドライブするなど、その時代を代表する世界のスポーツモデルが漫画のなかに登場しました。
その世界のスポーツモデルがスーパーカーという名前で呼ばれたのです。
1975年と言えば、日本では昭和50年の排ガス規制が行われた年で、国産車は元気がなかった時代です。そこにとんでもないハイパワーなエンジンを搭載したクルマや、ミッドシップという国産車にはなかった駆動方式を採用するクルマが劇中に登場するわけですが、それらのクルマが実際に街中を走っているということがポイントでした。
今のアイドルと一緒で「会いに行ける」存在だったわけです。ウルトラマンや仮面ライダーも“ショー”を見に行って会うことはできましたが、子供でもそれが作られたもの、仕組まれたものであることは知っていました。しかし、スーパーカーはリアルに「会いに行けた」のです。
子供達は自転車を走らせ 大人は商売を考え始めた
リアルにスーパーカーを見たい子供達は自転車に乗ってスーパーカーが置いてある中古車店や並行輸入業者の店舗を目指しました。
当時から正規輸入は行われていましたが、正規輸入業者は屋内にクルマをしまってあり、あまり見ることができなかったのです。聖地は東京の世田谷区から大田区あたりの環状八号線沿い店でした。
筆者も中野から自転車に乗って毎日のように通いました。当時の注目店はチェッカーモータースとオートロマンという2店でした。とくにオートロマンはレストランも経営していて、レストランにはスーパーカーに乗って食事にくるセレブたちを写真に収めるのが目当てでした。
これだけ子供が集まるのだから、大人は商売を考えます。スーパーカーのカードや本はもちろん。スーパーカーを扱うお店では生写真も販売、お店のステッカーなども売られました。
さらにスーパーカーショーというものも開催されるようになり、晴海の見本市会場や後楽園球場を使ったショーも開催されました。
歯磨きなどを販売するサンスターが同社の販促キャンペーンとして行った晴海のショーでは、ものすごく長い列ができ大きな話題にもなりました。
また、スーパーカー消しゴムというものも登場。スーパーカーをかたどった消しゴムをBOXYというボールペンのバネを使ってはじき出して机の上でレースをするなどして遊んだものです。
テレビ番組も始まるなど 大ブームであった
スーパーカーブームの過熱ぶりは凄まじいもので、テレビでは「対決!スーパーカークイズ」というスーパーカーを題材としたクイズ番組も放映されました。
回答者は小学生や中学生で、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」や「テレビチャンピオン」に似たような雰囲気の番組作りでしたが、実際にスーパーカーをサーキットで走行させるなど大がかりな仕掛けが見物でした。
また、焼き肉店で一定額の食事をするとランボルギーニ・カウンタックの横に乗ってドライブが楽しめるといった販促企画を始める店舗なども登場。スーパーカーブームの波及効果は非常に大きなものでした。
スーパーカーを追いかけるために子供達は自転車に高性能さを求めるようになり、ドロップハンドルが装着されたスポーツタイプの自転車を買い求める子供が多くいました。
さらに、いい写真を撮るためにいいカメラを欲しがる子供もたくさんいました。筆者はオリンパスペンという、小さく安価なカメラを使っていましたが、当時人気のあった一眼レフカメラのオリンパスOM-1を持っている子供もたくさんいました。
当時は少年ジャンプの欄外に「○○先生に励ましのファンレターを送ろう」と題して、作者に直接ファンレターが送れるようになっていました。
個人情報を大切にする現代では考えられないようなことですが、池沢さとし氏は自宅住所を掲載していたのです。
筆者は地図を便りにその住所を訪れ、写真を撮らせていただき、サインもいただきました。クルマメディアの仕事をするようになってから池沢氏にお会いした際にその話をしたところ「君はいい子だったんだね。ボクはあまりサインしなかったんだ」と返していただきました。
いい時代に少年時代を過ごし、いい時代にこの業界にいると感じた一瞬でした。
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