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2012年05月16日

セカンドラン〜路面電車たちの「第二の人生」

セカンドラン〜路面電車たちの「第二の人生」 中国地方の政令指定都市、広島市には今でも活発に路面電車が走っている。

グリーンライナーやグリーンムーバーと命名された5車体連結の近代的な
長い電車は、郊外の宮島口から廿日市、五日市といったベッドタウンを貫き、
目抜き通りの繁華街を通って、広島駅まで直通している。
市内区間の均一料金は150円という優秀さだ。



市内の各所、広島港や各JR(元国鉄)駅を結ぶ市内線には、12mくらいの1両で
走る普通の路面電車が走っている。この単行用の電車には、地元広島用に近年製造
された新車も走っているが、大阪市、京都市、神戸市からそれぞれの市電廃止後、
譲り受けた車両が、かなりの勢力(台数比率)で走っている。




大阪や神戸で、路面電車が走っていたことを覚えている人も、今は少ない。
大阪万博(1970年)前の1969(昭和44)年に大阪市電は全廃した。
東京都より早く、「ええかっこしい」のナニワッ子は近代的な地下鉄だけに、
バス以外の交通機関を絞り込んだ。古くさい「チン電」など要らないと
決断したのだ。神戸もほぼ同時期、京都は少し遅く昭和53年まで市電の姿が
見られていたが、30〜40年以上前に、その頃の大都市では次々と姿を消した。

この事実は、鉄道マニアは「常識」だが、彼らは意外と周辺的なものの見方を
する人が少ない。反対にやや、一般の人の鉄道知識と、時刻表が「読めない」
電車に乗れないことを揶揄することもあり、「特殊な人々」と思われてしまい
損な部分がある。一般の人との歩み寄りが出来ていないと思う。

環境問題面でいうと鉄道は優等生である。さらに、鉄道車輛は規格さえ合えば、
どこに持って行っても使える。だから中古車両の譲渡と言うのは「まだ使える」
なら当たり前であった。
大阪や京都から、大量の電車が転入したのは、それぞれの大都市で路面電車の
廃止が「世論」として巻き起こり、使用中の電車の大半が耐久年数に達して
いないのに淘汰されることになり、新車の車両を購入したくても、予算のなかった
広島が「これはありがたい」と譲り受けた。40年以上前から「リサイクルする」
ことは、普通の思想であったのである。




それぞれの街のカラーをそのままに、「塗り替え」なかったことも結果的に
良かった。茶色と濃いクリームの大阪市の色。緑とクリームの京都、濃淡グリーン
の神戸市。今は落ち着いた佇まいを見せる広島市内でこれらの電車が走って来ると、
時がタイムスリップしたような気分にさせる。
原爆ドームの公園から、古い各地の市電が走っている姿を見て脳裡に何が浮かぶか。
私は深い平和のありがたさを考えられずにいられない。日本は半世紀以上も交戦も、
戦端を開くこともしなかった。
原爆の「あの瞬間」に広島の電車も多くが生き地獄となり炎上した。何所の街の
市民より、広島の人のDNAとなって、それだけは風化させずに受け継いで来た。
京阪神の古い市電が集まったことは偶然だが、40年以上も大事に保守して使い続けた
こと。それはものを大事に使い続けることの大切さを、もう一つの平和教育のように、
町に戦火が二度と訪れないことの「約束」として、大切にしているのではないか。




さて、第2の人生のことを語ろう。彼らの職歴は、もはや前身の大阪や京都に
いた時間より、広島で働いた時間の方が長くなりつつある。これを人の人生に
例えてみよう。
大阪市、京都市といった大きな組織に胸膨らませて雇用されたが、交通方式の転換で
あえなく失職。同僚たちと共に地方に流れて来て、そこで再雇用。これは電車の
世界では、以前は珍しくなかった。特に状態の良い都会の電車は、粗末な車両を
やりくりしている地方では、貴重な戦力であったのである。
今はどうかというと、新幹線が極端な例で、命が短い。トップ企業で働くことは、
相当のストレスなのか。JR東の近年の通勤電車も、製造コストを下げ、短期間に
リプレイスする性質である。普通の電車が40年くらい使うのに対して、あまり
エコじゃない?と思われる。



機械には与えられた運命があるとはいえ、第二、第三それ以上の人生を送る
ものもいる。
最後はぼろぼろになって、形もうんと改造されて。第一線を走った栄光の日々を
遠く思いながら、車庫の隅で業務用となり、働けるだけ働くのも、たまに居る。
鉄道って、面白いなと思うようになったのは、そんな存在を知り、気が付けば自ら
も歳を重ねて来たことにもよる。
広島で働く彼らは非常に運が良い。広島市の都会化が進み、第二の職場が安定した
境遇であり、職場が急に無くなったり、新しい電車の投入が郊外区間用に集中した
ことにもよる。

広島という町を訪れる観光客は多い。この文章を英訳、中国語訳、韓国訳できない
のが残念であるが、心ある人はそっと、この平和の瞬間を噛み締めながら、古い
電車たちが一瞬歌うブルースに、身を揺られてみて欲しいものである。




ブログ一覧 | 鉄100% | 旅行/地域
Posted at 2012/05/16 11:24:07

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