11か月という長い製作期間を経て、ようやく完成しました。
まずはウンチクから。
ミッドウェー海戦の大敗後、米軍は対日反攻作戦の第一段として「
ウォッチタワー作戦」を発動。その主戦場はガダルカナル島などのあるソロモン海でした。
南洋諸島は日本軍が占領していましたが、そこへ米軍が大挙して押し寄せて攻め落とし、これを奪回するための陸海空の戦いが展開され、多くの艦船が沈んだ海域は鉄底海峡(アイアン・ボトム)とも呼ばれるほどでした。
この一連の戦いの中で1942年8月8日~9日の真夜中に起こったのが
第一次ソロモン海戦、別称ツラギ海峡夜戦です。
夜戦は日本側が重巡5隻、軽巡2隻、駆逐艦1隻の計8隻がツラギ島沖へ殴り込みをかけ、敵重巡4隻を撃沈、重巡1隻及び駆逐艦2隻を撃破し、日本側は軽微な損害のみという歴史的な圧勝に終わりました。

今回の作品では↑の青枠で囲ったあたりの状況を再現したものです。
ではご覧ください。
先ほど「歴史的圧勝」と記述しましたが、いくら大勝利だといってもそれは殺し合いであることに変わりありません。
私の作品に通底するテーマは「戦争の悲惨さ」。
今回の作品では1番主砲、旗甲板、第一煙突に損傷表現をしており、1番主砲後ろと旗甲板にのみフィギュアを配置しています。
艦船模型をリアルに表現しようとすると乗組員をあちこちに配置することとなります。例えば艦橋各フロア、探照灯や機銃の操作員、艦載機周辺などです。しかし今回はあえて2か所のみとしたのは、先ほどのテーマを強調するため。1番主砲は敵弾の貫通によりその後使用不能になっています。明確な根拠はありませんが、主砲操作員の何名かが戦死または戦傷していると思われます。旗甲板には非戦闘員である従軍記者が何名か戦いの状況を観察しており、そこへ敵弾が炸裂し何人もの方が死亡または負傷しています。そのうち負傷されたのがこちらの小説を書かれた丹羽文雄氏。

旗甲板左舷側で座り込んでおり、右肩には赤マニキュアで負傷を表現しました。

言うまでもなく人ひとりの命はかけがえのないもの。大勝利であっても命が軽々しく取り扱われるものではありません。
今回の作品は数十年前設計のアオシマ旧キット大改修や主砲や探照灯電飾の出来栄えなどがメインテーマではなく、
「戦争の悲惨さ」こそが真のテーマです。
と、小難しいことを語ると多分嫌われますね(汗)
では多くの人が期待する部分について。
キットは約40年前に購入したアオシマ高雄がベースです。

高雄と鳥海は同型艦ではありますが、キットの高雄は大改装後なのに対して鳥海は大改装を経ていないので、舷側のバルジ切除や航空機甲板の撤去、艦橋の作り直しなど、かなり大幅な大改造が必要です。とはいえ全長が5mmほど短いという課題を除けば基本的な配置やフォルムは公式図面にかなり近い設計がされており、WLシリーズNo.2と附番された記念碑的キットはアオシマのこのシリーズに対する強い思い入れを感じることが出来ます。
設計の古さへの対策はやはり全面改修。
キットのパーツを使用したのは船体と後部煙突のみで、他の大半はスクラッチし、細部をアフターパーツで補うという工作方針でした。
特に苦労したのは以下の点です。
①船体の改修
・全長を5mm延長したことで整合しなくなった舷側ラインをプラバン貼り付けにより修正
・魚雷発射管を再現するため、シェルター甲板下壁面を作り直し
・甲板上のモールドを全切除後、リノリウム押さえや通風筒などを自作・設置
②艦橋のフルスクラッチ
・極めて複雑な構造を理解した上でフロアごとに全て作り直し
・併せて一部の室内も正確に再現
・着弾による旗甲板の損傷を再現
③徹底した考証
・第一次ソロモン海戦時の鳥海に関し小パーツに至るまでの全パーツについて再検証
・主砲発射による爆煙の生じ方や海面への影響を物理的視点から研究
④海面表現の研究
・夜戦の雰囲気を出すためシーブルーやホワイトの上からスモークを重ね塗り
・透明メディウム重ね塗りによるリアルな表現の実現
⑤探照灯と主砲爆煙の電飾
・探照灯発光は極小チップLED+ボタン電池により実現
・主砲閃光は超高輝度LEDを仕込み、煙は脱脂綿と手芸綿を使い分けて表現
中でも艦橋構造の複雑にはかなり悩み、艦橋だけで約3か月かかりました。
ただその工程を経る中で高雄型の設計者である藤本喜久雄海軍技術少将の設計への思いが少し伝わってきたようにも思えたのは、望外の収穫でもありました。
電飾に付いては主砲閃光に点滅LEDシステムも導入する予定でしたが、はんだ付けが難しいことから断念したのは数少ない心残りです。
もう一つの心残りはこれ↓

軽巡以上の旧キットに入っているネームプレート。これを作品に活用できなかったのは悔やまれます(笑)
製作中盤はプライベートが常軌を逸した忙しさのため中だるみ的な状況ともなり、製作後半は睡眠時間を削る日々が続いたのでかなり疲弊し、完成したのは夜中でしたが、改めて作品を見てみると今の自分の全力を出し尽くしたと言える仕上がりと思え、一人でガッツポーズを作り満面の笑みで「よっしゃー!!!」と叫んでしまったのは内緒です(笑)
4年前に
「駆逐艦桑の最期」を完成させた瞬間にも今回と同じ満足感が得られ、その時は「もうこれ以上の作品は作れないだろう」とも感じていましたが、今回の密かなテーマは「その作品を超える」ことであり、それも実現出来たと感じられました。
一方で細かな作業の連続による視力の低下はすさまじく、これを今後も続けることは不可能です。全力を出しての製作は今回が最後との思いもあったので、思い残すことなく自分なりの傑作が完成したのは本当に良かったと思っています。
いやー、楽しい1年間でした!
■これまでの軌跡です。
2025年03月19日
キットのチェック
2025年03月28日
船体の修正その1
2025年04月13日
船体の修正その2
2025年04月29日
船体の修正その3
2025年06月07日
船体の修正その4
2025年06月14日
船体の修正その5
2025年06月22日
甲板の処理など
2025年06月29日
魚雷発射管設置・艦底板取り付けなど
2025年07月05日
錨鎖甲板の工作
2025年08月29日
煙突の工作その1
2025年09月06日
煙突の工作その2
2025年09月15日
飛行機格納庫などの工作
2025年10月12日
艦橋の工作その1
2025年10月25日
艦橋の工作その2
2025年11月02日
艦橋の工作その3・リノリウム押さえの施工
2025年11月29日
艦橋の工作その4・船体塗装
2025年12月05日
艦橋の工作その5
2025年12月20日
艦橋の工作その6
2025年12月26日
艦橋の工作その7
2025年12月31日
後部艦橋などの工作
2026年01月04日
飛行機格納庫などの工作
2026年01月10日
ジオラマベースの工作・電飾の検討
2026年01月15日
ジオラマベースの製作その2など
2026年01月20日
番外編
2026年01月21日
ウェザリングの施工・ジオラマベースの製作その3
2026年01月29日
ジオラマベースの製作その4
2026年02月15日
艦載艇の検討・後マストの製作
2026年02月22日
主砲の加工など
2026年02月22日
後部マストなどの製作
2026年02月22日
前マストの製作・探照灯の電飾
2026年02月22日
主砲発射の閃光電飾
Posted at 2026/02/23 11:37:06 | |
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