2024年01月29日
今更ながら学歴社会
もうすぐ新社での勤務開始ですが・・・・
転職にあたり実体験した経験を語りたいと思います。
まず、今回の転職は控えめに言って“ヘッドハンティング”的要素が高かったです・・・
ただその経緯は世間的なヘッドハンティングではなくて、自身が登録していた転職仲介業者が案件を探してきて自分のことを売り込んだから実現した、という経緯です。
なので自身から転職先に売り込んだわけでもなければ、転職先が自分に接触してきたわけでもありませんので、普通に適格確認のための面接はありました(‘ただし筆記テストはなし)。
ただこの面接というのも知識の確認というよりも、自分が提出していた職歴や経験の情報確認と言うもので、当時の自分の動き方や考えなどを質問してそれに答える、と言う流れでしたし、おそらくは自分の人物評価(他の社員との衝突を起こさないかなどの確認?)も含んでいたように思います。
それで最終的に決定に大きな影響があったのは直近の業務の遂行能力(経験)と博士号所持という点でした。博士号を取得して約20年経ちますが、ここでようやく博士号が役に立った気がします。
別の話題として、近年博士課程に進学する学生数が減り特に科学技術分野での研究力の低下に繋がっている、という問題提起がここ何年もなされています。
自分は博士課程に進みましたが、当時は結構進学する人もいて、不合格者もいたと思います。その時代に比べ現在は学生数が2〜3割も減っているようです。
この対策として各大学(文科省も)は奨学金制度の充実や学費免除の拡大などを打ち出しています。ですが自分が言うのはなんですが、こんな施策では学生なんざ増えないと思います。
こんなところで欧米至上主義っぽいことを言いたくはないですが、特に米国では博士号取得者を高く遇するケースが多いのに比べ、日本国内では博士号を取ることのメリットが本当にないんです。
ヘルスサイエンス研究の最先端と世間的には考えられる製薬業界ですら博士号持ちの優遇は一切ありません。唯一あるとしたら在学期間を就業功績と見做しその分の昇給を織り込んだ初任給を設定してくれているくらいかな。
お恥ずかしい話、自分は博士課程を修了しているくせに母校では博士号が取得できず、就職後に共同研究の一環で所属した大学での研究を認めてもらい、入社後約10年を経過したのちにその大学で博士号を受けています。ですが会社では“博士号”に対する優遇は一切ありませんので、博士号なしで就職した後で“博士号”を取得してもなんの上乗せもありません(手当みたいなものはない)。
製薬業界ですらこの状況ですから、日本の企業に入る上では博士号をとるメリットって本当にないんですね。
博士課程というのは制度として存在する最も高レベルの修学の機会となり、そこでの高度な研究を行い、その功績が認められて初めて博士号というものがいただけます。そんな稀有で高度な研究を経てきた身にほとんど優遇がされない、というのでは普通の感覚ではそんなことしたいと思わないんじゃないかと思います。
まぁ、実家が大金持ちで純粋な興味にだけ没頭できる環境を持っているならそれもありでしょうが、自分のように普通に勤め人になるべく進学してきた身にはなんのメリットもない、と言うのはずしりとくるわけです。
また大学院生(博士課程、修士課程)を抱える大学側にもいろいろな問題があります。今の制度はよくわかっていませんが、大学院生が所属する大学の研究室は大学院生を所属させることで研究費の配分がいただけます(大学や国や地方自治体などから)。なので単純に研究室は大学院生は居るだけでもありがたい存在です。
加えてポスト数が厳しい昨今大学では正規の職員が少なくなり、でも一定数こなさなくてはいけない講義や実習を大学院生に手伝わせ(下手したら)肩代わりさせる行為も横行しています。要するに大学院生は研究室の教授や准教授らの体のいいアシスタントにされています。そんな状況でも大学院生は自身の研究をまとめ、論文を書かないといけない、しかもその指導や審査には教授や准教授の手助けが必須・・・まぁ歪な力関係ですね。
こんな状況ですから大学の研究室では大学院生の研究指導はある程度したとしても卒業後(修了後)を見越した人材育成なんてまず期待できません。なんせ多くの大学教員は社会人経験なんてありませんから、社会のニーズ把握の機会は限定的です。なので時間をかけて研究バカを育成し、学位を持ってるけど社会常識がない新入社員を企業は他の新卒者と同じに扱って一から育成、となるわけですからそこには博士号(またはそれを得るのに培った研究力)を活かす機会はすぐには出てきません。
この様に大学側は育成の方向性がずれているし、企業側は学位取得者優遇の姿勢がない、となれば必然的に、
そんな苦労してなんも変わらんのやったら行く必要なくね?
となりますね。これは在学期間の生活を少しくらい支えたってどうしようもないんですよ。
と転職前の会社(内資)では全く優遇されないまま29年過ごした身でこれはしょうがないんだな、と思っていた時に今回の転職のお誘い、さらに転職先(米国の会社です)では学位所持を評価して採用の決定打となった、のは学位取得後初めての具体的なメリットだったと思った次第です。
近年日本の基礎研究のレベルの高さを表す成果としてノーベル賞の獲得が相次いでいます。これは科学者の端くれとしては喜ばしく思う一方で、今のアカデミアの研究環境では先細りしかねないな、と危惧します。
何年にもわたっての問題として続いていますから、1箇所を改善して劇的に状況が好転するとは到底思えないし、どこか一点に責任をおっ被せても無意味です。自分レベルでも思いつく問題点として、①大学の教育の根本改善(アカデミア志望と就職志望では明確に教育を分ける)②企業側の採用枠やロールの見直し③省庁の大学院生の取り扱いの刷新(単なる研究費助成や奨学金付与だけではダメ)④学生側の意識改革 など、手をつける所はたくさんありそうです・・・・
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Posted at
2024/01/29 08:59:15
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