夕方からの雪はだんだんとひどくなるようだった。会社を出たのが5時過ぎ、早めの帰宅だったがそれでも渋滞にひっかかった。いつもなら30分あれば帰宅できているはずだが2時間たっても、まだ半分も帰れていない。大粒になっていく雪をワイパーがぬぐう。車は20分ほど動かない状態が続いていた。目の前の信号が青になり、そしてまた赤になる。また青になりさらに赤になる。それを何回も何回も見ていた。「まずい。」焦燥感が下腹部をしめつける。雪はだんだんとそして着実に道路に積もっていった。車は進まない。時間は過ぎる。軽量でFRのロードスターにとって雪道は大敵であった。軽いためトルクがかからず、後輪駆動の後ろタイヤは簡単にグリップをなくした。あせる気持ちとは裏腹に渋滞はひどくなるようだった。「仕方がない。」空き地を利用してのUターン。少しもどって裏道を行くことにした。ドキドキしていた。これは賭けである。裏道は交通量が少ないため、雪がガンガンに積もっている可能性がある。でも、これ以上時間を無駄にすることはもっと危険ではないか?裏道はすいていた。車はスイスイと進む。「イケるのか?」微かな望みが呼んでいる。しかし車を進めるうちに真っ白な世界が広がっていく。車は足を取られていく。手のひらにドバっと汗が出てきた。つづく