『ああ、この味か・・・!!』
その瞬間は、思いがけずすんなりとやってきた。
2/25(土)のblog記事「やり残したこと」を実現しようと意を決する
やり残したこととは、「最高のBARを探しに、そして日本最高のバーテンダーと言われる上田和男さんから、私がMY SIGNATURE COCKTAILとして四半世紀を超えて飲んできたKing's Valleyを直接作っていただく」というもの
酒飲みにとっては、超有名店
ゆえに、まず席があるかというところからハードルが始まる
そして、上田和男御大に直接作っていただくことができるのか・・・たくさんおられるという御弟子さんが作られるのではないのか、というハードル
クローゼットの中から最も良いスーツを選び、ロンドンで手に入れたネクタイを締める
土曜日の銀座
街行く人もまばらとなった時間
「HARD SHAKE BAR TENDER」へ
店内に入って、上田さんがおられることを目で確認
カウンターは満席であるもののボックス席が空いていたので座ることはできた
まずは、最初のハードルをクリア
とりあえず、ジン・トニックを頼む
ほどなく、カウンターのカップルが帰る
スタッフの方にカウンターへ移動したい旨を申し出る
偶然にも、カウンターの席は、ほぼ中央
ベスト・ポジション
上田さんが、カウンターの中、中央に戻られた時をとらえ
「申し訳ありません。King's Valleyを作っていただきたいのですが」
そう御本人に伝えて、素早く残りのジン・トニックを飲み干す
「King's Valleyを・・・」上田さんがつぶやくように答える
使う酒の壜がカウンターにそろえられたとき
「25年間、King's Valleyを飲んでいます」と言うと、上田さんの動きが一瞬止まる
「あ、他の店でですけど」と、私が言葉を継ぐ
「そう、他の店で・・・。でも、それとは違うと思いますよ。味はシェイクで違ってきますから」と、上田さん
おもむろに、上田さんがシェーカーを持ち上げる
シェイクが始まる
今まで、どこでも見たことのないシェイク
HARD SHAKE BARとの看板から、強振されるのかと思えば、さにあらず
捻りを加えながら流れるように、しかし力強くシェイクされる
そして、振り終わろうとされた時に、明らかに二度シェイクを追加された
氷の融け方を微調整されたのだろう
シェーカーのふたが開けられ、King's Valleyがグラスへ
高い位置へ持ち上げられ、滝のようになりながら最後の一滴までそそぎ切る
「どうぞ。これが本物です」
そう言われて、King's Valleyが、すいっと私の目の前へ
確かに、苔むす美しい谷のような生きた緑色
香りも優しい
ひと口、舌の上をゆっくり流しながら喉へ
『ああ、この味か・・・!!』
そう感想が漏れた
極めて上質な、滑らかな美味
enyaの歌声に通ずるものも感じられる
素晴らしいとしか言いようがない
平成24年3月3日午後9時43分
私は、夢をひとつかなえた
シェーカーを収めながら上田さんは、
私に向かって言われたのか、ただつぶやかれたのか、判然としないくらいの声で
「ロオジエの頃の・・・25年・・・そう、それくらい経ちますか・・・」
そう、口にされた
スタンダードな「Whyte and Mackay」を使ったバージョンの次に、「Old Parr」版のKing's Valleyも上田さんから頂き、店を出る
扉の前で、わざわざ見送りに出てこられた上田さんに感謝の言葉を述べた
「今日は、幸せな夜でした・・・」と
東京
これで思い残すことは何もない
Posted at 2012/03/04 23:55:55 | |
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