S60のレビューの今回は3回目です。
ボルボS60のレビュー その1
ボルボS60のレビュー その2
今回は、安全装備について書く予定ですが、その前に前回の訂正を。
前回、パーキングブレーキで書いた内容に誤りがありました。
前回の記載
「シフトレバーをニュートラルにしてパーキングブレーキをONにすると、シフトレバーをDレンジに入れられなくなります。」
正しくは下記です。
「シフトレバーをニュートラルにしてパーキングブレーキをONにすると、
ブレーキを踏まないとシフトレバーをDレンジに入れられなくなります。」
さらに、シフトレバーがDレンジにある状態でパーキングブレーキがONの場合、アクセルを踏むとパーキングブレーキは自動で解除されます。
なので、信号待ちでニュートラルにしてパーキングブレーキをONにした場合、ブレーキを踏んでDレンジに入れてアクセルを踏むだけでパーキングブレーキを手動で解除する必要はありませんでした。
もっと言うと、Dレンジに入ったままでもパーキングブレーキがONであれば、車両は停止した状態になります。
この状態でアクセルを踏み込むと自動でパーキングブレーキが解除されるので、ずぼらな使い方もできます。
ちょっと危ない気もしますが...
もうひとつ。
前回、エンジンブレーキがちっとも効かないと書きましたが、その後、家にあるティーダに久しぶりに乗ってみると、エンジンブレーキの効きが大して変わらないなぁと...
その後、S60に乗り越えてみると、それほど効かないと大げさに言うほどのものではないなぁという印象でした。
前置きが長くなりましたが、ここから安全装備について書いていきます。
本文のほうはもっと長くなると思いますので、例によって興味のある方だけお読みください。
自動ブレーキに代表される先進安全装備、巷では、スバルのアイサイトが有名ですが、当初お役所は自動運転に発展しかねないこれらの技術についての導入には否定的でした。
このお役所の壁を突破したのは、実はボルボです。
例によって海外メーカーの押しには弱いお役所ですから、ボルボからの要請を跳ね除けることはできなかったようです。
そもそもボルボは安全を第1に掲げているメーカーですから、このあたりの研究は熱心です。あまり知られていませんが、アイサイトよりも日本国内への導入は早いのです。
ボルボのFF車(FFベースのAWD含む)の6気筒エンジンが、横置き直6なのも安全上の理由からです。
V6だとエンジンブロックが厚くなり、前から押されたときにエンジンが室内まで到達してしまう可能性があるため危険だとの立場をとっていたため導入できなかったのです。
あっ、また脱線してしまいました。
では、今度こそ本題...
S60のカタログの安全対策の欄には、これだけの項目が記載されています。
安全対策
○ボディ
衝撃吸収バンパー/ケージ/クランプル組み合わせ構造
SIPS(側面衝撃吸収システム)/ROPS(横転保護システム)
○室内
デュアルモード・エアバッグ(運転席/助手席)
助手席エアバッグ・カットオフスイッチ
サイド・エアバッグ(フロント2席)
プリ・プリペアード・レストレインツ・システム
IC(インフレータブルカーテン)-頭部側面衝撃吸収エアバッグ
プリテンショナー付シートベルト(全5席、フロント:高さ調整機構付)
シ ート ベ ル ト・フ ォ ー ス リ ミ ッ タ ー( フ ロ ン ト )
3点式イナーシャリールシートベルト(全5席)
セーフティヘッドレスト(全5席、リア左右ワンタッチ前方可倒式)
WHIPS(後部衝撃吸収リクライニング機構付フロントシート)
難燃性室内マテリアル/サブマリニング防止シート(フロント/リア)
スプリット・ステアリングコラム/安全合わせガラス(フロント)
ISO FIXアタッチメント(リア左右2席
○インテリセーフ1 0
歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム
(ミリ波レーダー、デジタルカメラ、赤外線レーザー方式)
全車速追従機能付ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)
車間警告機能
DAC(ドライバー・アラート・コントロール)
LKA(レーン・キーピング・エイド)/LDW(レーン・デパーチャー・ウォーニング)
BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)
LCMA(レーン・チェンジ・マージ・エイド)-急接近車両警告機能
CTA(クロス・トラフィック・アラート)
R S I(ロード・サイン・インフォメーション )
フル・アクティブ・ハイビーム
リアビューカメラ
○その他
IDIS(インテリジェント・ドライバー・インフォメーション・システム)
ハイマウント・ストップランプ /サイドマーカーランプ(フロント/リア)/リア・フォグランプ
アダプティブ・ブレーキライト
EBD(エレクトロニック・ブレーキフォース・ディストリビューション)機構付ABS(アンチロック・ブレーキシステム)
HBA(ハイドロリック・ブレーキアシスト)およびRAB(レディ・アラート・ブレーキ)
スポーツモード付ESC(エレクトロニック・スタビリティ・コントロール)
アドバンスト・スタビリティ・コントロール
コーナートラクション・コントロール
ボディ/室内の項目については、もし事故を起こしたときの安全性についての項目です。
ここについては、いざというときの保険であって、通常意識する部分でありませんので、今回のレビューの対象にはなりませんねぇ。
ただ、アメリカでスモールオーバーラップ衝突実験が導入されたときに、各メーカーが追加の対策検討を余儀なくされたのに対して、ボルボは優秀な成績を収めていました。
テストのための安全対策ではなく、本来あるべき安全な車両とは何かをまじめに考えている証だと思います。
でも、そのおかげで車重が...
「その他」の項目は走行時の安全確保のための技術で、インテリセーフ1 0はいわゆる先進安全装備に分類される機能ですね。
走行時の安全確保についても、作動させるにはかなり危ない状況になった場合であることが多いので、今回は主にインテリセーフ1 0の機能について記載したいと思います。
実はアクセラにもほぼ同じような機能がついていましたので、こちらも比較しながらのレビューを行ってみたいと思います。
■歩行者・サイクリスト検知機能付追突回避・軽減フルオートブレーキ・システム
50km未満の車速で機能し、30km/h未満の速度で完全停止できるというものです。
歩行者や自転車も認識可能ということですが、自転車は70cm以上のところに反射板のついたものを後ろから見た場合のみという条件があります。
アクセラにもスマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)というほぼ同じ機能がありました。
システムとしてはミリ波レーダー、赤外線、カメラを使うというところは同じだと思います。
しかしこちらは、歩行者や自転車が検出できるとはうたっていませんし、作動速度も4~30km/hまでとちょっと低め。
しかし、最近のものは少しバージョンアップしていて、AT誤発進抑制システムが追加されています。これは低速での前進、または後退時に、障害物があるのにアクセルを踏み込んだ場合に、加速させないものです。
どちらシステムも、衝突の危険があると判断すると警告音が鳴り、S60はフロントウインドウに赤のLEDが写り、アクセラはヘッドアップディスプレイに警告が表示されます。
それに反応せずにいれば、次は自動ブレーキとなりますが、どちらの車両でも、実際に自動ブレーキ作動まで行ったことはありません。
この警告ですが、S60はかなり頻繁に出されます。
アクセラのほうは、時々、前走車が右左折時に徐行している脇をすり抜けようとした場合に限り警告されます。
元々、車間距離の警告をする設定が、S60はミディアムが初期値なのに対して、アクセラは一番近い設定が初期値になっているという違いがあります。
でも、S60で設定をショートにしても、結構警告されますね。
通常、S60は前走車を認識すると、フロントウインドウにオレンジのLEDが写る仕組みになっています。
アクセラのほうは、車間認知支援システム(DRSS)という名称で、フロントのヘッドアップディスプレイ上に前走車のアイコンが表示され、距離によってアイコンの表示が代わります。
S60の方は、少々目障りな感じです。
このあたりの機能は、スバルのアイサイトがかなり優秀なようですが、体験したこがないので、比較はできません。
■全車速追従機能付ACC
車速30~200km/hまでの間で前走車との車間を一定に保ちつつ、追走してくれるオートクルーズ機能です。
設定は30km/h以上でないとでできませんが、前走車がいる場合に限り、完全停止状態から機能します。
前走車が停止すれば完全停止まで自動で行ってくれますし、3秒以内に前走車が動き出せば自動的に再スタートもしてくれます。
停止から3秒以上経過すると、自動的に機能は一時停止するようになっていますが、レジュームボタンを押すことで復帰しますので、渋滞時には結構楽です。
しかし、そこそこの速度で流れている一般道で使用すると、ちょっとRのきつめなカーブで前走車を見失うことがあります。そのときはカーブの途中なのに設定車速まで加速しようとするので、ちょっとあせります。
アクセラにもマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)という同様の機能がありました。
こちらは、設定可能な車速が50~115kmとちょっと狭いです。
また、車速が30kmを下回ると機能が停止するので、高速道路専用の機能です。
機能自体は、両者ともほぼ同じです。
カーブ中に前走車を見失って怖い思いをするところも含めて、ほぼ同様の挙動です。
ただ、完全停止までしてくれるのと、設定速度の上限が高いというのはやはり大きなアドバンテージです。
前者は渋滞時に便利。
後者は、日本の制限速度の上限は100km/hなんだから、必要ないだろうという建前はおいといて...
実際、追い越し車線を走っていると、後ろからもっと速い車に追いつかれるシーンはよくあります。
そんなときに、一時的115km/hより速く走りたいと思ったら、S60の場合クルーズコントロールの設定速度を、指先でちょいちょいと上げてあげるだけでOKです。
アクセラも一時的にアクセルを踏み込んで115km/h以上の速度にすることができますし、その後、アクセルを離せば、元の設定速度でクルーズコントロールを継続してくれます。
しかし、まったくアクセルを踏んでいなかった状態から、いきなり115km/hの位置にアクセルペダルを瞬時に合わせることなどできるはずもなく、たいていの場合、アクセルを踏んでもなかなか加速を開始しないので、一気にアクセルを踏み込むことになり、逆に必要以上の急加速となってしまうのでした。
ちなみに、アクセル踏んで140km/h以上になると、オートクルーズはキャンセルされます。
■車間警告機能
すでに、追突回避・軽減フルオートブレーキ・システムのところで記載してしまいましたね。
フロントウインドウにLEDを反射させて、視覚的な警告と、音による警告をしてくれます。
アクセラのヘッドアップディスプレイのほうがどう見てもスマートですね。
■DAC(ドライバー・アラート・コントロール)
車速が65km/hを越えると起動され、システムが車両のふらつきなどを検出すると、ドライバーに休息を促すメッセージを表示します。
アクセラにも、ドライバー・アテンション・アラート(DAA)という同様のシステムがあります。こちらも65km/hから機能します。
もともとボルボもマツダもフォード傘下でしたから、基礎技術は同じなのかも...
■LKA(レーン・キーピング・エイド)/LDW(レーン・デパーチャー・ウォーニング)
車線を逸脱しそうになったときに、車線にとどまろうとステアリング操作をアシストするのがLKA、ただ単に警告を行うだけなのがLDW。
電動パワステ搭載車だとLKA、油圧パワステだとLDWになります。
T6 AWDは油圧パワステなのでLDWになります。
アクセラにも同様の機能、車線逸脱警報システム(LDWS)がありました。
こちらは警告を行うだけの機能でしたが、最近はバージョンアップされて、レーンキープ・アシスト・システム(LAS)になっているようです。
こちらは、LKAと同様、車線を逸脱しそうになると、ステアリングを車線内に収める方向に切りやすくする「逸脱回避支援」と、車線の中央を走るようにステアリング操作をアシストする「ライントレース」を選択できるようです。
このアシストというのが微妙でして、これまたお役所が自動運転をさせないために横槍をいれて、ドライバーがステアリングから手を離していると機能しないように制約が設けられているのです。
ボルボのLKAも同じですけどね。
■BLIS(ブラインドスポット・インフォメーション・システム)
自車の左側、または右側から接近する車両、または死角にいる車両の存在を知らせる機能です。
車両を検出すると、ドアミラーの車内側に仕込まれているLEDが点灯し、車両の存在を知らせます。
この状態で、車両が居る側にウインカーを出すと、LEDが点滅に変わります。
アクセラにも同様の機能、リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)があります。
こちらはドアミラー内にLEDが仕込まれていますが、機能として同様のものです。
マツダのシステムは50m後方まで検出可能だと明記されていますが、感覚だと、ボルボのシステムのほうが警告範囲は狭そうです。
あと、ウインカー出したときの警告がマツダの方は音でも警告してくれるためわかりやすいです。
でも、アクセラは自分が他車を追い越して、元の車線に戻ろうとウインカーを出したときにもよく警告されるので、ちょっと過敏に反応しすぎかな。
S60は相手が追い越すとき、または接近してくるときにしか反応しないとマニュアルに書いてありました。
■LCMA(レーン・チェンジ・マージ・エイド)-急接近車両警告機能
BLISの機能の一部じゃないのかな?
そういえばマツダの方にもブラインド・スポット・モニタリング(BSM)という機能が別に記載されていますが、これもRVMの一部のような気がする。
こんなところまで一緒とは、ますます元の技術は一緒?
■CTA(クロス・トラフィック・アラート)
駐車場からバックで出ようとした際などに、左右後方から接近する車両を検出して警告を出します。
センサーはBLISの物と同じものを使用していますが、BLISが通常走行時で、CTAがバックのときのみという使い分けのようです。
また、警告については、車両が接近する側のリアスピーから音で行われます。
自分はまだ一度も経験したことがありません。
マツダにも、私アクセラには搭載されていませんでしたが、最近、リア・クロス・トラフィック・アラート(RCTA)という同様の機能が追加されました。
こちらは警告の仕方も、RVMと同じで、ドアミラー内のLEDの点灯と音での警告になります。
■R S I(ロード・サイン・インフォメーション )
制限速度や追い越し禁止などの道路標識を読み取り、メーター内に表示する機能です。
一度、30kmの制限のところで誤認識して80kmと表示されたことがあります。
こんな狭い道を80km...恐ろしい...
マツダには同様の機能はありませんねぇ。
■フル・アクティブ・ハイビーム
対向車や前走車が居る場合でも、対象の箇所を遮蔽版で隠すことで常時ハイビーム状態で走れるといううたい文句です。
しかし、いろんな人が酷評しているように、結構おバカさんです。
信号機、街灯、道路わきの反射板、いろんなものを誤認識します。
また、何もないところでもまったくハイビームにならないこともしばしば。
でも、前走車の周りだけが暗くて、その他は明るいとかリアルタイムに照射範囲が変わって結構面白いです。
アクセラにも、ハイビーム・コントロール・システム(HBC)と、アダプティブ・フロントライティング・システム(AFS)というライト関係の機能がありました。
前者は、ハイビームでの走行時、対向車を認識すると、自動的にロービームに切り替わるというものです。
後者は、峠道などを走っているときに、進行方向にライトの光軸が変わるというものです。
昔MR2のフォグランプもステアリング連動で向きが変わりましたが、アクセラの場合はもっと緻密に制御している感じでした。
マツダは最近LEDヘッドライト版の別システムを搭載しているようです。
アダプティブ・LED・ヘッドライト(ALH)
ハイビームは4ブロックに分けたLEDを状況に応じて自動的に点灯、消灯することで、S60のフル・アクティブ・ハイビームと同じような効果を狙ったものです。
それ以外にも高速走行時は、自動的に光軸を上に上げて、より遠くを照らせるようにするとかいろいろ動的に制御しているらしいです。
■リアビューカメラ
特に先進安全装備に該当する機能だとは思えませんが、最近の車両はみな標準装備になりつつありますね。
S60のものは、ステアリングを操作するとモニター上のガイドラインも曲がって、どっち方向に車が移動するかわかりやすくなっています。
うちの家族なんかもね、時々バックビューモニター見ながら逆にステアリングきったりしていますから、便利なことは確かでしょうね。
また、障害物などもモニター上に表示してくれますので、ただのモニターでは終わらせない工夫は感じられます。
アクセラのバックビューモニターは、ガイドラインこそありますが、ステアリングには連動しませんし、障害物の表示もしてはくれません。
でもガイドラインが実際の車両の位置とちゃんとあっているため、ガイドライン通りに合わせればきっちりイメージどおりにバックできます。
S60のガイドラインは実際の車両の位置とは重ならないので、頭の中で補正する必要があります。
これで、インテリセーフ1 0の機能についてはすべて記載しましたので、今回はこれにて終了でございます。
今回も長々とした文章を書いてしまいました。
最後までお付き合いくださった皆さんありがとうございます。
さて、次回ですが、今回安全装備の仕様確認のために電子マニュアルを読んだりしていて、こんな機能もあったのかとはじめて気づいたものがいくつかありますので、そんなところについて書いていこうかなと思っております。
結構うれしい発見もあったりして、新たな魅力に目覚めてしまいそう...(^^;)