愚法もまた，法なり

ナニゲに雑学の本を見ていたら，こんなことが書かれていた。

「相撲取り以外が丁髷（ちょんまげ）を結うのは法律違反である。」

驚くべきことにこれは事実である，ということを私は知っていた。
今の法律がどうか知らないが。


この法律になんの目的があるのか。
なんで丁髷，結っちゃいけないの？
しばし考えてみよう。
解答はこの後すぐ！

しばらく画像をご覧下さい。
順に松本城、姫路城、熊本城の日本三名城です。







さて解答です。

時代は明治維新まで遡る。
徳川幕府が終焉を向かえ，西洋文明に傾注する日本国政府は武士の存在を払拭しようとした。
廃藩置県を行い，刀を取り上げ，そして丁髷を禁止した。
しかし髷を落とすことを頑なに拒んだ武士も多かったという。
そりゃそうだろう。
今，法律が変わって，「丁髷を結わないと違法」になったら，嫌でしょ？
それ以上の激しい拘りが当時あった訳で。

「ザンギリ頭を叩いてみれば　文明開化の音がする」

時代劇で観たが，剣の戦いに敗れた者が，「さぁ，ひとおもいに殺せ！」と覚悟を決めたが，勝者は命を奪わず，丁髷を切ってしまう，というシーンがあった。
丁髷を切られるのは，武士にとってかなりの屈辱だった筈だ。
しかも，髪が伸びるまで，屈辱の日々が続くという陰湿な仕打ち。

それだけ重要な，武士の象徴である丁髷を法律で禁止した。
相撲取りだけは，その伝統格式からだろうか，髷を結うのは許された。

そしてその法律は，廃止されないまま，脈々と生き残っていたらしい。
WW2に敗戦した日本は，アメリカから民主主義を恵んでもらった。
その際に大幅な法律改正があった筈だが，全ての法律が改正されるわけでもなく，そのままスルーされたものが多数ある。
だから相撲取り以外の者が丁髷を結うと違反になるっていう，おちゃめな法も生き残った。

このように，形骸化した法律って結構あるらしい。
正式に廃止してしまうのを怠っている立法の怠慢だと思うが，行政がそれを利用する可能性も無いではない。
形骸化した法律を犯しても，実害はないと誰もが考えているだろうが，いざとなれば法律だ。

悪事を隠し覆せていると安心している皆さん，「別件逮捕」にご注意召され。


禿げて髷を結えなくなった相撲取りは廃業するしかないという。
体面はそんなに重要なのか？
ハゲでも強けりゃいいじゃん。