2012年05月18日
エクセル版サーキットシミュレーション作成方法第一回
今日は夜から雷がゴロゴロ鳴り始め、すごい雨が降ってきました。
そんなわけで、今日はエクセル版サーキットシミュレーションの作成方法の紹介第一回です。
まとめてからにしようと思ったのですが、来年になりそうなので少しずつにしたいと思います。
第一回の今日は計算の流れです。
全体の流れ
0、実走データの収集、エンジン性能曲線の入手
1、走行ラインの設定
2、横G限界速度の算出
3、減速側速度の算出
4、加速側速度の算出
5、1周の速度決定
このうち3と4でエクセルVBAを使います。
残りは普通のエクセルシートで計算します。
では1から順に説明します。
第二回からはそれぞれ計算を実際のエクセルシートと計算式で説明したいと思います。
1、走行ラインの設定
コース図および実際の走行ラインを元にして走行ラインの設定を行います。
走行ラインは区間距離dXと曲率半径Rで表します。
コース図だけでは、どこまで縁石に乗り上げることが可能なのかが不明で実際の走行ラインとの乖離が大きくなるため、実際の走行ラインがある場合は相関を取りながら設定を行います。
2、横G限界速度の算出
走行ラインの曲率半径と最大横Gで決まる限界速度を算出します。
最大横G:axmax(m/sec2)、曲率半径:R(m)、横G限界速度:Vymax(m/sec)
計算式
Vymax=(axmax × R)^0.5
コーナの最低速度が発生する区間では当然ながら加速も減速もしていません。
従ってこの地点の速度は横Gの最大値と旋回半径のみで求まるため、この計算で速度が決定します。
直線部のように曲率半径Rが大きい区間では限界速度が高くなりすぎ、後で行う繰り返し計算の時間が長くなるため、Vymaxが想定される最高速度より高い速度の場合は、Vymaxの値を想定最高速度+30km/hくらいとします。
3、減速側速度の算出
減速側速度は進行方向と逆方向に計算します。
ある地点の1で計算したコーナの横G限界速度をV0、それよりもdx(m)だけ手前の横G限界速度をV1として以下の計算を行います。
速度変化:dV=V0-V1 ・・・ 式1
dV>=0のとき、つまり加速中または一定速のときは、この地点の速度は2で求めた速度とします。
dV<0、減速中の場合のみ以下の計算をします。
区間平均速度:Vm=(V0+V1)/2
区間時間:dT=dX/Vm
前後方向加速度:ay=dV/dT
横方向加速度:ax=V1^2/R
タイヤ使用率:UT=((ax/axmax)^2+(ay/aymax)^2)^0.5
最初に計算をするときは、全ての場所の速度は横G限界速度になっているので、前後方向加速度が0以外の値だとタイヤ使用率UTは必ず1より大きくなります。
そこで判定式
UT<=1
を満たしていない場合は、
V1=V1-0.1
として、少しだけ速度を低くして式1から再計算します。
(速度減少量はが小さいほど計算精度は上がりますが、計算時間がかかります)
何度かあるいは何百回かコンピュータに計算させると、UT<=1を満足するV1が求まります。
このときの速度V1をその地点の速度とします。
そして次の区間に進み先ほどのV1をV0、さらにdX進んだ地点の横G限界速度をV1として同様に計算します。
これをコースの終わりから始めまで逆方向に行うことで1周分の減速側の限界速度が求まります。そしてついでに1.5周分くらい計算します。 (理由は後述)
4、加速側速度の算出
考え方は減速側と同じなのですが、減速側速度はタイヤで限界のみ決まるのに対し、加速側はタイヤに余力があってもエンジンの加速能力がなければ加速できません。
従って、dXだけ進んだ地点の速度は、タイヤ使用率が1以下でかつ前後方向加速度がエンジンの加速能力以下という条件を満たすV1となります。
減速側と同様にとある地点の横G限界速度をV0、それよりもdXだけ進んだ地点の速度をV1として以下の計算を行います。
速度変化:dV=V1-V0 ・・・式1
dV<=0、減速中または一定速のときは、この地点の速度は2で求めた速度とします。
dV>0、加速中の場合のみ以下の計算をします。
速度V0でのエンジン加速能力を別に用意した表から選択しayeとします。
(エンジン加速能力については別途説明します。)
平均速度:Vm=(V0+V1)/2
区間時間:dT=dX/Vm
前後方向加速度:ay=dV/dT
横方向加速度:ax=V1^2/R
ここで、ayとayeを比較し値の小さい方をayとしてタイヤ使用率を計算します。
タイヤ使用率:UT=((ax/axmax)^2+(ay/aymax)^2)^0.5
引き続き減速側と同様に計算します。
UT<=1
を満たしていない場合は、
V1=V1-0.1
として、再度 式1から計算し、UT<=1を満足するV1が求まります。
このときの速度V1をその地点の速度とします。
そして次の区間に進み先ほどのV1をV0、さらにdX進んだ地点の横G最大速度をV1として同様に計算します。
これをコースの始めから終わりまで進行方向に行うことで1周分の加速側の限界速度が求まります。加速側も1.5周分くらい計算します。
5、速度の決定
各地点の速度は減速側、加速側で算出した速度のうち低い方の速度になります。
たとえば、実際の走行ではコーナを無視して加速し続けることもできますが、その場合はコーナを曲り切れません。コーナを曲がるためにはコーナ中の最低速から逆算した速度、つまり減速側の計算速度と加速側の速度が等しくなったところから減速を開始しなくてはなりません。
1.5周分の計算をしたのは、1周分ではスタートラインの直後は減速側から求めた値になっているのでスタートライン手前コーナからの加速側速度が反映されていません。
そこで、スタートライン手前のコーナからの加速側速度も比較して速度の低い方を選びます。
以上で計算は終了です。
いやぁ簡単ですね。
ちなみにこのシミュレーションでは、コースのアップダウン、バンク角、荷重移動などなどの上記の説明に出てこない項目は考慮されていません。
コースのアップダウンは大きなサーキットであればコース図に書いてあるので考慮することも可能ですが面倒なので、極力フラットなサーキットでまずはシミュレーションしてみるのがいいと思います。
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サーキットシミュレーション | 日記
Posted at
2012/05/18 00:47:18
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