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2014年06月30日 イイね!

ドライビングスタイル2の続き

前回の続きを書こうとしたところ、いろいろ計算しなくてはならないことが多く大変遅くなりました。

それでは続きです。

僕のブログには、走行分析の中に、荷重移動や車輌姿勢という言葉がほとんど出てきません。

なぜ出てこないかと言うと、どちらも今持っているロガーでは測定できないからです。
測定できないものを論じたところで、確認の方法がありません。

その代わり、測定できる項目である横Gと前後G(Gサークル)を確認することにしています。
荷重移動ができていようがいまいが、横Gと前後Gが十分高ければそれでいいのです。

もし、横Gも前後Gも相場よりも低い場合は、その原因として荷重移動を考えます。
しかしながら、荷重移動は横Gと前後Gによって発生する事象なので、横Gと前後Gだけを見ていればおおよそわかります。

したがって、荷重移動なんていちいち考えなくても、横Gと前後Gだけ見てればおおよそのことはわかるので、あまり出てこないというわけです。

ということで、今回も荷重移動は無視して、走行ラインと速度のみで、ドライビングスタイルを考えることにします。

その前に、ドライビングスタイルを語る上では、目標とする最適な走り方を明確にする必要があるため、まずは最適な走り方を考えることにします。

最適な走り方とは最適な走行ラインをタイヤの摩擦円の縁を使って走った結果得られる速度で走ることなので、実質的には最適な走り方=最適な走行ラインとも言えます。

走行ラインで大事なことは、最小旋回半径の大きさと位置です。
これさえ決まれば、あとは必然的に走行ラインが決まります。

最適な最小旋回半径の大きさですが、おそらくこれは数値解析的に求める以外に解を得ることができないので、数値解析=サーキットシミュレーションで求めます。

しかし、闇雲にサーキットシミュレーションをしようとしてもうまくいかないので、まずは作図法と僕の経験から得た最小旋回半径の算出式で半径を求めます。
次に、この半径を用いて最小旋回半径の大きさと位置を調整して最適な走行ラインを求めます。

具体例がないとわかりずらいので、TC1000の1~2コーナで計算した例をごらんください。
まずは、いつものように作図法で最小旋回半径と走行ラインを求めます。


TC1000の1~2コーナの推奨値は47.3mだったので、42m、47m、52m、57mの4種類の最小旋回半径を使った走行ラインでシミュレーションをしました。
2コーナ以降の走行ラインは全て同じとして、ラップタイムで比較します。

走行ライン


実際に走れそうな走行ラインにしようとすると、57mだけ他の3つと大きく違うラインになってしまいました。

速度です。 黒:42m、赤:47m、青:52m、緑:57m


42~52mまでは減速部も加速部もあまり違いがないのですが、57mだけは走行ライン同様に大きく違う結果となりました。

ラップタイムの計算結果


推奨値なだけに予定どおり47mのときが最も良い結果になりました。
57mは速度も走行ラインも大きく異なりますが、0.1秒以内の差で42mと同じラップタイムになりました。

ところで、TC1000の場合は2コーナから3コーナまでの直線距離が短いので3コーナ手前での最高速度がラップタイム与える影響は小さいのですが、直線距離が長いコースでは最高速が大事になります。

そこで、最高速を比較すると


最高速でも47mが最も良い結果となりました。

このシミュレーション結果で何が言いたいかと言うと、最適な最小旋回半径に対する差が大きければ大きいほどラップタイムが低下するということです。

しかし、47mと52mの差は0.017秒しかないので、ほとんど同じとも言えます。
もちろん、これがコーナ10個分になると、0.17秒も差がついてしまうので無視できないとも言えます。

僕レベルであれば、そもそもの運転の精度が低いので、誤差みたいなものだと思いますが、スーパーフォーミュラクラスになれば、この差は許されないはずです。

なので、レーシングチームでは、このようなシミュレーションを行った上で、最適な走り方ができるようにクルマのベースセッティングを決めていると思われます。

ここで話をドライビングスタイルに戻します。
前回も書いたように、いきなり最適な走り方ができるとは思えません。
従って、最適な走り方から少し余裕を持った走り方をして、修正していきたいわけです。

もし、42mの走行ラインを最適だと考えて、その通りに走ったとします。
完璧に走れたとして、最適よりも0.04秒遅い結果しか得られません。
また、途中で減速を開始してから最適でないことに気が付いても、減速開始地点が奥なので、もはや修正することができません。

ところが、52mの走行ラインを最適と考えて、その通りに走ったとします。
完璧に走れば0.017秒遅いだけなので、遅れは最小限に済みます。

さらに!、ここが重要です。
52mの走行ラインでは減速の途中で最適でないと気が付いてしまった場合、より半径が小さい側の走行ラインであれば走行ラインを変更することが可能なのです。

こんなイメージです。


上図のように205m付近から走行ラインの目標を途中で変更し、走行ラインに合わせて速度も落とします。


このようにラインを乗り換えたときのラップタイムは42.32秒となり、なんと47mのみで計算したときよりも速くなってしまいました。
実際はシミュレーションのような速度変化をするのは難しいと考えられるので、ほぼ同じタイムになると考えられます。

今までのところをまとめると、
1、最適な最小旋回半径からの差が大きくなるほどラップタイムは遅くなる。
2、最適な最小旋回半径よりも小さい半径を当初目標とすると、減速の途中で修正できない。
3、最適な最小旋回半径よりも大きい半径を当初目標とすると、ラップタイムの落ち幅が小さく、減速途中でも最適な走行ラインに修正できる。

つまるところ、荷重移動がGサークルへ影響を与えないとすれば、コーナリング速度が高い側から最適な走り方に修正した方が、ラップタイムの落ち幅が小さく、かつ修正の自由度も高いってことです。

なのでこの辺が、いわゆる欧州式をススメる人がいる理由なのではないかと思われます。

さらに続きます。
Posted at 2014/06/30 22:36:39 | コメント(2) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月28日 イイね!

ドライビングスタイル2

今日も雨です。
雨が降るといつも思い出すこの歌、いい歌ですなぁ。

さて今日のお題はドライビングスタイル2です。
ドライビングスタイルとは、サーキットでのクルマの走り方のこと言うのですが、走り方とは以下の二つのことを示します。

①走行ライン
②走行ライン上の速度

ハンドルの切り方やブレーキの踏み方は、この二つを達成するための手段で、それはそれで大事ですが、ラップタイムは走行ラインと走行ライン上の速度の二つだけで決まってしまうので、ここでは走行ラインと走行ライン上の速度の二つのことを走り方と言うことにします。

また、横Gや前後Gも走行ラインと走行ライン上の速度だけで決まるので、これらも走り方に含まれています。

前回のドライビングスタイルでは、オートスポーツ誌で取り上げられていた欧州式、日本式の違いについて自分の意見を書いてみました。

簡単におさらいすると

オートスポーツ誌の定義は

 日本式・・・加減速を重視し、ブレーキはクリッピングまで残す走り方
 欧州式・・・コーナリング速度を重視し、減速は直線で終わらせて、コーナは一定速度で走る走り方

というものでした。

しかし、ここで定義されている欧州式のような走り方では、実際には速く走ることができなし、そんな走り方をするドライバーを見たことがありません。

そこで、僕の考えとして

 
 どちらの走り方もほぼ同じであるが、
 日本式・・・比較的加減速重視
 欧州式・・・比較的コーナリング速度重視

という説を書きました。

さらに、先日いただいたコメントの返信には以下のように書きました。

 どちらも目標とする最適な走り方は同じであるが、 
 日本式・・・最適な走り方に速度が低い側から合わせ込む
 欧州式・・・最適な走り方に速度が高い側から合わせ込む

と返信したものの、いまいちしっくりこなかったので、さらに考えた説がこちらです。

 どちらも目標とする最適な走り方は同じであるが、
 日本式・・・最適な走り方に直接合わせ込もうとし、加減速を重視する
 欧州式・・・最適な走り方に速度が高い側から合わせ込もうとし、コーナリング速度を重視する


これらならしっくりきます。
いまいち意味がわからないと思うので解説します。

まず最適な走り方とはなんぞや?ということですが、サーキット走行において、クルマ(タイヤ含む)と路面状態が決まると、到達可能な最速ラップというのが存在し、到達可能な最速ラップを達成できる走り方が、最適な走り方です。

オートスポーツ誌の書き方では、それぞれが目標としている最適な走り方が異なるかのような印象を受けます。

しかし、スーパ-GTやスーパーフォーミュラをサーキットに見に行ったり、車載映像を比較してみても、ほとんど違いがありません。
違いはあるけどその差は小さいように見えます。

その理由は、目標としている最適な走り方がほぼ同じだからだと考えています。

例えばスーパーフォーミュラのチームはプロですから、プロが作ったサーキットシミュレーション専用のソフトで空力などを考慮したシミュレーションを事前に行っていると考えられます。

空力の効くクルマになると、直線を速く走る場合とコーナを速く走る場合で、どちらのがラップタイムがいいのかを事前に検討しないと空力仕様を決めることができないし、ギア比も決めることができないので、まともなチームなら間違いなくシミュレーションをしているはずです。

従って、その時点で目標とする最適な走り方を各チームとも持っていると思います。

もし、目標とする最適な走り方が同じチームでもドライバーによって異なる(シミュレーションにドライビングスタイルが考慮されている)ということであれば、その場合には、それこそがドライビングスタイルの差だと思うのですが、雑誌の記事などを読んでも、そこに差があるようには感じられません。

それに、仮にドライバーによってシミュレーションのパラメータ(走行ラインとか)が異なるとします。
そうすると、コンピュータはそれぞれのパラメータに対し結果を出すので、どちらかが速く、どちらかが遅いという結果が出てくるはずです。
普通は速い方の走り方が最適な走り方なので、そちらを目標とすべきだと思うのです。

つまり、スーパーフォーミュラなどのレーシングチームは、ドライビングスタイルを考慮しない最適な走り方を知っていて、実際のサーキットでは、路面状況やクルマの状況、さらにはドライビングスタイルなどに合わせてセッティグをして行くという作業をしているはずです。

ここで、もう一度、日本式、欧州式の話に戻ると、これは最適な走り方への合わせ込みの手法の違いを表しているというのが僕の考えです。

そもそも、最適な走り方が理論上存在していたとしても、100%それを実現することなんて無理です。
なので、最適な走り方への合わせ込みの手法がドライバーによって異なると考えられます。

これがドライビングスタイルの違いだと思うわけです。
目標とする最適な走り方は同じだが、そこへの合わせ込みの手法が異なるといことだと思います。

日本式の場合は、最適な走り方におおよそ見当をつけて、いきなりその走り方をしようとする手法です。
この手法の場合、理論上の最適な走り方に対し、ブレーキ開始地点が手前になったり、奥になったりします。

これに対し、欧州式は最適な走り方におおよそ見当をつけて、その最適な走り方よりも、少しコーナリング速度が高くなるような走り方をして、そこから最適な走り方に合わせ込む手法です。

この手法の場合、最適な走り方の走行ラインよりも最小旋回半径を大きくする必用があるので、少し手前から減速を開始します。

どちらも、理論上の最適な走り方になっていないので、到達可能な最速ラップタイムからは遅いというところは同じです。
どちらが遅いかと言うと、最適な走り方からのズレが大きい方が遅いので、どちらとも言えません。

しかし、プロドライバー達がやたらと欧州式をススメるのには理由があると思うのです。
ところで、彼らはその理由をなぜか荷重移動とか車輌の姿勢で説明しようとしますが、これは間違いです。

大事なので大きく書きます。

ラップタイムは、荷重移動や、車輌の姿勢で決まるのではなく、走行距離と平均速度のみで決まる

各場所での速度が高い理由として荷重移動や車輌の姿勢を説明に使うのは正しいのですが、荷重移動や車輌姿勢でラップタイムを説明しようとするのは間違いです。

ラップタイムが速い理由を説明するのであれば、まずは走行距離と平均速度について説明しなければなりません。
荷重移動や車輌の姿勢はその次の段階です。

途中ですが、お腹が減ったので、マックに行ってきます。
Posted at 2014/06/28 20:58:19 | コメント(4) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月25日 イイね!

TC1000 レガシー走行分析

今日は、みん友のハードインパクトさんのTC1000走行データ分析です。

まずは走行データをごらんください。
比較に僕のデータを使ってみました。
横軸はいつもの距離ではなく、時間です。
途中からズレが大きくなるので、真ん中で分けて合わせなおしました。


まだサーキット走行をするようになってから3回目ということなので、初心者という位置づけになると思います。

僕が初心者だったときはサーキット走行6回目(2年間)くらいまではあまり変わりのない、お粗末な運転をしていた記憶がありますが、自分のことは棚に上げ、1回目だろうが3回目だろうが厳しくチェックしていきましょう。

まずは1コーナ手前の減速
悪くないと思います。
踏み始めをもう少しだけ、”エイッ”という掛け声とともに踏めばしっかり減速できると思います。

1~2コーナ
最低速度は僕とほぼ同じ。
しかし、そこからの加速が鈍いです。
考えられる原因は二つ
1)スライドするのが嫌でアクセルを踏んでいないだけ(クルマ的には余裕あり)
2)最小旋回半径が大きく、加速時の旋回半径を大きくすることができない。
 (加速時欧州式みたいな走りになっている)

走行ラインを見る限り、加速時欧州式にはなっていないようなので、スライドを嫌っているように思います。
もし、そういうことであれば、慣れるとアクセル踏めるようになるので、徐々に改善すればいいと思います。
いきなりアクセル全開にすると、タコってクラッシュするので注意してくささい。

3コーナ
ブレーキの踏み始めから終わりまで一貫して減速Gが低いです。
速度勾配から減速Gを計算すると、
 減速G=⊿V/⊿t
     =100/3.6/4.2
     =6.6(m/sec2)
     =0.67G

タイヤがデジタイヤのZⅡなので、サイズはやや細めということを考慮しても0.75Gくらいは出て欲しいものです。

まずは、この原因を明確にしなければなりません。
考えられる原因は
1)ペダルを強く踏んでいない
2)ABSがショボい
3)タイヤがなんらかの理由でグリップ低い

この3つのどれが当てはまるのですが、ペダルをABSが効くまで踏んでいたかどうかはドライバーのみ知ることなので、なにが原因なのかを考えてみてください。

また、減速区間では5コーナ手前と8コーナ手前の減速Gが3コーナよりも低くなっています。
これは明らかにドライバーがペダルを強く踏んでいないことが原因です。
その原因は、どちらのコーナもブレーキ踏み始めで、やや曲がりながらブレーキを踏む必要があるため、思い切って踏めていないのだと思います。

3コーナ自体は、やや最低速度が遅いものの、しっかり加速ができているようなので、とりあえずはそのままでいいと思います。

5~6コーナ
ここは、なぜかこういう走り方をしたくなりますが、これでは遅いです。
僕よりも最低速度は高いのですが、遅いです。

もっと最小旋回半径が小さくなるような走行ラインを走るようにしてください。

8~10コーナ
ここは難しいので、とりあえずはなにも考えずに走ればいいと思います。

以上ですが、サーキット経験3回目とは思えないほど、しっかり走っていると思います。
いきなりいろいろ試そうとすると、クラッシュが待っているので、ひとつづつ順番に改善するのがいいと思います。
Posted at 2014/06/25 00:36:33 | コメント(2) | トラックバック(0) | データロガー | 日記
2014年06月22日 イイね!

コースアウト感

先日、みん友のkazu xxさんがブログで自身の車載映像に対し、”エキサイティングな感じがしな-い”と書かれていました。

車載映像を見てみると、スキール音も聞こえるし、テールスライドもしていて、ハンドル修正もしているので、エキサイティング感がないわけではないのですが、確かに何かが足りません。

じ~っと見た結果、エキサイティング感の中の大事な要素である、コースアウト感が足りていないように感じました。

コースアウト感とは何かと言うと、
”この勢いで加速したら、そのままコース外側へ飛び出してしまうのではないか?”という感覚です。

この感覚はコーナ立ち上がりアクセル全開地点での次ぎの三つでおおよそ決まります。
①速度
②走行ライン上の位置と車輌の向き
③全開時の加速度

従って、コースアウト感というのは、コースアウトする寸前ではなく、アクセルを全開にした瞬間に決まるということです。

あまり良い例ではないのですが、僕がTC2000を走行したときの車載画像とデータで説明します。
場所は第2ヘアピンです。

僕の走行ラインとコース上の位置関係はこんな感じです。
残念ながら写真のクルマは僕のクルマではありませんが、たまたま同じような走行ラインを走っているようです。


車載画像


絵的に見ると、コース幅いっぱいに走っていて、コースアウト感があるように見えます。
しかし、車載映像を見るとそんなにコースアウト感はありません。

なぜなら、僕の場合は、実際に走っているラインよりも、だいたい1mくらい縁石よりも内側を走れるようにアクセル全開にしているからです。

もし実際に1m内側を走ろうとするともっと立ち上がりの旋回半径を小さい半径で走ることになり、その分だけ横Gも高くなります。
そうすると、摩擦円の縁に近づきます。

摩擦円の縁ギリギリで走行していると、テールスライドが起きたときに、そのままコースアウトしてしまう可能性があるので、少しだけコース内側を走れるようなタイヤグリップに余力がある状態でコース外側を走って横Gが下がるようにしています。

つまり、僕の場合は”コース幅いっぱいの走行ラインで走っているが、その走行ラインをタイヤの摩擦円の縁で走っていない”という状態です。

次にアクセル全開地点をデータで見てみます。


速い人の走行データと比較すると、僕の方が10mくらい奥でアクセル全開にしていて具合が悪いのですが、ここでは僕の走り方が僕のS2000ではそこそこ悪くない状態とします。
ただし、コースウト感はありません。

作図による全開位置の推定をすると、だいたい1250m付近でアクセル全開の加速カーブになっています。

これを走行ライン上の位置で見ると、このような位置になります。
青色が僕の実走ラインです。



車載映像の音を聞いてもこのあたりなので、1250mのところで全開にしているようです。

コースアウト感を出すためには、前述の速度、位置と向き、加速度の三つが大事なわけですが。速度は、最低速度地点からの距離がほとんどなく、当然全開加速をしていないので、最小旋回半径の大きさで決まってしまいます。

加速度はきちんとグリップしていることを前提にすれば車輌の加速性能で決まるので、位置と向きがコースアウト感を出すために必要となります。

ここで、ドリフト状態でないとすると車輌の向きは走行ラインと走行ライン上の位置で決まってしまうので、結果的には走行ライン上のどこでアクセル全開にするかが重要になってきます。

言うまでもなく、走行ラインのより手前側、つまり最低速度地点により近い地点でアクセル全開にした方が立ち上がりの速度があがるのですが、そのためには摩擦円の縁で走るとともに最低速度地点からすぐに旋回半径をどんどん大きくしなければなりません。

そのときの走行ラインが上図の赤線です。
緑線は逆に最低速度地点からの旋回半径を小さい状態で走行したラインです。

赤線はアクセル全開時の車輌の向きがコース外側にきつい角度で向かっているので、その分コースアウト感があります。
緑線は、ゆるい角度で向かっているのでコースアウト感はありません。

赤の走行ラインは、より手前からアクセル全開にできるものの、コース外側縁石付近の旋回半径が青の走行ラインよりも小さくなってしまうので、摩擦円からはみ出す可能性があります。

そのため実際はこのラインで走ると、縁石の手前でアクセルコントロールが必要になる可能性もあり
、必ずしも赤の走行ラインの方がいいということではなく、走行ラインを決めるときには、一度アクセルを全開にしたら途中でコントロールする必要がないような走行ラインを選ばなければなりません。

車輌の向きとコースの関係をわかりやすくしてみました。


桃色の矢印がアクセル全開時の車輌の向きです。

この地点の車載画像


クルマによりますが、このくらいの場所であれば全開にしても曲がりきれそうな気がするので、車載映像にコースアウト感がないのもうなずけます。

上の車載画像より、もう少し手前から全開にできると、たぶんコースアウト感があると思います。
この辺  (上の車載画像ではアクセル全開にするためにハンドルを戻しています)


ところで、少し話が変わりますが、コーナ立ち上がり時の進みたい方向は、常に現在の進行方向よりも少しだけ内向きの方向(水色の矢印)です。
コーナ立ち上がりの方向(黄色い矢印)が進みたい方向ではありません。

黄色い矢印の方向に進もうとすると、コース幅いっぱいに走りにくいので、外側の縁石に向かって加速すると考えたほうがうまく走れると思います。

最後に大事なことを忘れてました。
F1の車載映像を見ても予選などの一発アタックのときは、決勝よりもコースアウト感があるので、それはそれで大事だと思いますが、どちらかと言うと、きちんとコース幅とタイヤの摩擦円いっぱいを使って走れることが大事なので、車載映像のコースアウト感そのものは、あまり気にしなくてもよいと思います。

それと、僕程度の運転レベルだと、コースアウト感のある走りをしようとすると、本当にコースアウトしてしまう可能性が高まるので、この領域はもっとレベルが上がってからで十分だというのが僕の考えです。
Posted at 2014/06/22 21:23:03 | コメント(3) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記
2014年06月21日 イイね!

ツインリンクもてぎ1-2コーナ

昨日はのんびり有休でした。

僕のブログを読まれている方はお気づきかもしれませんが、僕は欧州式なる走らせ方が大嫌いです。
なのでしつこく取り上げます。

ここで言う欧州式の定義は、
①直線で減速を終わらせる
②旋回中は横方向のみにタイヤのグリップを使う
という走らせ方です。

そもそも、欧州にも欧州式で走らせる人はいないので、特殊浴場のことをト○コ風呂と呼ぶのと同じように失礼な話です。
でも、わかりやすいので、欧州式という呼び方はそのまま使います。

ところで、初心者は多くの場合欧州式に近い走らせ方をすることが多いです。
かく言う僕も、欧州式寄りの走らせ方をしていました。

その理由は
1、目に見えてわかりやすい減速目標地点は直線の終わり(=曲がりはじめ)のところであること。

2、アウト・イン・アウトの目的は旋回半径をなるべく大きくして、旋回中の速度を高くすることとされていたこと。

3、”ブレーキを残す”ことの目的は、曲がらないクルマを曲げることとされていたこと。

つまり、クルマがきちんと曲がってさえくれれば、ブレーキを残す必要はなく、旋回速度を高くすることができて、かつ走らせやすい走らせ方=直線で減速を終わらせることが速い走らせ方なのである。と思っていました。

ブレーキを残す=速度が低下するなので、クルマが曲がれば速度を低下させないようにブレーキは残したくないのが当然の考え方だと思うわけです。

しかし、こんな走らせ方では、仮にクルマがカキ~ンと曲がったとしても、全く速く走らせることはできないし、実際にはカキ~ンと曲がらないので、ますます速く走れないということに気が付きました。

細かい話は「アウト・イン・アウト」を読んでいただくとして、とにかく欧州式では速く走れないのです。

ところが、初心者は多くの場合、欧州式に近い走らせ方をするので、ロガーデータ解析の手伝いをするときは、それをドライバーにわかってもらうことに多くの時間を費やします。
データを見たり、車載映像を見たりしながら、何度も何度も同じことを表現を変えながら理解してもらうために頭を使って説明しています。

説明する相手が変われば、また一からやり直しなので、これを何度も繰り返します。

にも関わらず
オートスポーツやREV SPEEDで、「欧州式が速い」とか、「ブレーキを残さないコーナリングが速い」とか書かれると、すごくムカつくのです。

ということで、今日はもてぎの1,2コーナの事例を見てみましょう。

先週の日曜日、もてぎのJOY耐の練習に行くということで、いつもようにロガーデータ解析要員としてお手伝いに行ってきました。

もてぎの1コーナはTC1000の1コーナとそっくりで、見た目のRが小さいので、1コーナ手前目掛けて減速したくなります。(僕は走ったことありませんが・・・)
そのため、コーナの走り方をきちんとイメージできていない人達は、必然的に欧州式みたいな走り方になりがちです。

そして、今回は2人の若手がドライバーのため、想定してたとおりのデータをとることができました。
ではごらんください。

赤:I君A、青:I君B、灰:N君B(比較用)


走行ライン


赤と青のダブルI君が今回のドライバーなのですが、二人ともだいたい440~450m付近を目掛けて減速していることがわかります。
その結果、旋回半径を大きくとることができ、日本式で走るN君B(灰)よりも高い旋回速度を保つことができています。

このグラフだけでは、どちらの区間タイムが速いのかわからないので、II君AとN君Bを区間タイムを比較したグラフもごらんください。

黒線がタイム差を表していて、上に行くほどI君Aが遅れています。


2コーナ立ち上がりの650m付近で比較すると、0.3秒も差があります。
実際は、N君Bのラインの方が走行距離が3mほど長いので、それを考慮すると0.2秒の差があります。

コーナ速度は速いが、区間タイムは遅いです。
本当はさらに2~3コーナの直線部分の差が加算されるので、もっと差が広がります。

ここで、それぞれの最小旋回半径、最大横G、最低速度を比較してみましょう。

      最低速度  最大横G   最小旋回半径
I君A : 93km/h  1.20G     57m
I君B : 88km/h  1.15G     53m
N君B: 85km/h  1.29G     44m

最大横Gに差があってわかりにくいので、一律1.2Gとして計算しなおします。
      最低速度   最小旋回半径
I君A : 93km/h     57m
I君B : 90km/h     53m
N君B: 82km/h     44m

いずれの場合でも最小旋回半径の大きさの順番が最低速度の順番になっています。

ところで、欧州式の狙いの中に”旋回中は横方向だけにタイヤのグリップを使うことで、高いグリップを発揮することができる”みたいなことが書いてあります。

でも実測すると、欧州式的な走り方の方が多くの場合、最大横Gが低いです。
今回の場合、I君Bはうまく走れていないだけとしても、I君Aはそれなりに走れているにも関わらず横Gが低いです。

理屈からすると、最大横Gが発生するのは、前後Gが0のときで、このときは日本式でも、欧州式でも同じなので、きちんとしたクルマできちんとした人が走らせると、同等の最大横Gになると思いますが、そうでないクルマと人の組み合わせの場合は、欧州式的な走らせ方の方が最大横Gが低くなることの方が多いようです。

そこで、今度はきちんとしたクルマときちんとした人がパーフェクトな欧州式で走らせた場合をシミュレーションで再現し、それとN君Bを比較してみます。

赤がシミュレーションで、旋回半径は入り口から出口まで一律65mです。


650m付近では、0.1秒ほどN君Bの方が速いのですが、走行距離が5m長いので、その分を考慮すると、逆に0.1秒遅くなってしまいます。
しかし、その後に続く直線区間を合わせると、0.25秒速く走ることができています。

ここで、シミュレーションのグラフを見ていると、2コーナ後の直線区間で逆転されていることに気づくので、そうならないように、少しだけ旋回半径を小さくして直線区間で遅れないようにしてみます。

この時点ですでに欧州式ではない気もしますが、減速と旋回を同時に行わない減速時のみ欧州式でシミュレーションします。
旋回半径は61mで、加速時は走行距離1mにつき0.3mづつ半径を大きくしながら旋回中も加速しています。

これを減速時欧州式と名づけます。(欧州の人ゴメンなさい)


なんと!
驚いたことに、パーフェクト減速時欧州式にN君Bの日本式は0.1秒も負けてしまいました。
しかも、走行距離が3mほど長いので実質は0.2秒の負けです。

これでは、僕の立場がないので、N君Bの走行ラインをパーフェクトに走らせたシミュレーションをして比較しました。



同じ走行距離では0.15秒の勝ちです。
しかし、走行距離は長いので、実質は0.05秒となり、ほぼ同じになってしまいました。

ただ、ここで注目して欲しいのが、減速時欧州式の減速→旋回、旋回→加速の部分です。
実際は、カキーンと曲がらないし、いきなり全開加速もできないので、点線のような速度カーブになるはずです。
そして、この点線のカーブはI君Aの速度カーブとほぼ重なります。

I君Aの区間タイムはN君Bの実測よりも遅いので、減速時欧州式をがんばっても0.2秒くらい日本式よりも遅いと考えられます。

ところで、N君Bの走行ラインなのですが、これは理想的なのか?と問われるとやや改善の余地があると思います。
改善ポイントは2つ
1、最小旋回半径を少し大きくする。 44m → 50m
2、走行距離を短くする。

2の走行距離を短くするについては、N君Bはちょっとブレーキで行き過ぎている感があるのと、最小旋回半径が小さいため、走行距離が長くなっています。

そこで、最小旋回半径と走行距離を最適化した走行ラインでシミュレーションしてみます。

走行ライン
緑:減速時欧州式 、 青:N君B実走 、 桃:最適走行ライン




この走行ラインは減速時欧州式に対し1.5mだけ走行距離が長いので、実質0.1秒速く走ることができています。


ここで、アウト・イン・アウトを読まれた人の中に、”半径を小さくした方が走行距離は短くなるのではないか?”と思った人もいるかもしれません。

もてぎの東ヘアピンやTC2000の1コーナのような形状のヘアピンコーナは、コース内側の半径で走ったときが一番短くなります。
しかし、もてぎとTC1000の1,2コーナの場合は、1コーナの半径が小さく、1コーナと2コーナの間が直線的に結ばれているので、最小旋回半径を小さくすると走行距離が長くなる場合があります。

特に、もてぎの1,2コーナはこの影響が強いので、最小旋回半径を決めるに当たっては、走行距離が長くなりすぎないように注意しなければなりません。

今回の例はEK9シビック+Sタイヤなので、それ以外のクルマの場合は最適値が異なると思いますが、考え方は同じです。
ということで、7月5、6日のJOY耐に向けて1,2コーナの走り方を悩んでおられる方は、こういう視点で考えてみるとわかりやすいと思います。
Posted at 2014/06/21 12:54:45 | コメント(5) | トラックバック(0) | サーキット走行理論 | 日記

プロフィール

サーキットで車を速く走らせるために必要なこととはなにか?を研究するのが趣味です。 日光、TC1000、茂原、を毎年走行してます。 2010年まではもてぎで開...
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愛車一覧

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