
【シンガポール=吉村英輝】フランスの政府系造船会社「DCNS」の機密文書が流出した問題で、同社に次期潜水艦共同開発を発注したオーストラリア国内に波紋が広がっている。安全保障上の大きな問題として、ターンブル政権に流出経緯の徹底調査を求める声が上がるほか、同盟国である米国の国防関係者は、次期潜水艦への武器装備提供に懸念も示している。
機密流出は、オーストラリアン紙が8月24日に報じた。オーストラリア企業に送られてきた記憶媒体の内容を紹介したもので、DCNSがインドに供与するスコルペヌ級潜水艦に関し、戦闘システムやステルス性能などが、2万2400ページ分含まれていたという。
同型艦は、マレーシアやチリ、2018年からはブラジルの海軍が運用開始予定で、衝撃が走っている。
一方、ターンブル豪首相は、開発予定の次期潜水艦は「タイプが違い関連性はない」と影響を否定し、豪州国内の情報管理は徹底しているとの認識を示した。
DCNS側は、情報はインド側から漏れたことを示唆。だが、オーストラリアン紙は、機密はインド海軍向けにフランス語で書かれたデータで、フランス側関係者が11年に東南アジアの関連企業に持ち出したとした。機密はインドの仮想敵国であるパキスタンや中国にも流れた可能性がある。
豪国防省から警告を受けたDCNSの求めを受け、豪ニューサウスウェールズ州最高裁は8月29日、機密に関する報道を禁じる仮処分をオーストラリアン紙に命じた。首相説明とは裏腹に、深刻視されている。
こうしたなか、有力政治家のゼノフォン上院議員は、機密流出について、議会で国防省などに説明を求めていくとしており、議論の行方は次期潜水艦開発計画に影響しかねない。
豪政府は今年4月、日本、ドイツ、フランスによる競争入札で、仏DCNSのバラクーダ型を選定。米側は、戦闘システムなどで連携しやすい日本の「そうりゅう」型を推していたが、豪政府の判断を尊重し、新型潜水艦にも武器装備を提供する意向だ。
だが、オーストラリアン紙は、米海軍高官が、今回の流出事件で「機密をフランスに預けることに懸念を表明している」とも報じた。米国のジョン・ベリー駐オーストラリア大使は8月31日、9月にワシントンで開かれる米豪2国間対話で、機密保護などが協議されるとの見通しを示した。
産経新聞
2日前
Posted at 2016/09/09 09:53:40 | |
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