
日本経営管理教育協会が見る中国 第426回--水野隆張
■中国の挑発行為はエスカレートするばかり
中国は、南シナ海での中国の権益主張を全面的に否定した2016年7月のオランダ・バーグの仲裁裁判所の判決について、日本が再三受け入れを迫ることに対して明らかに不快感を示しており、2016年8月の初めから中国船が大挙して、尖閣諸島周辺の接続水域や領海に侵入を繰り返して来た。一時は、「武装民兵」を載せた漁船が400隻も現れて一即触発の危機が迫った程であった。
■中国国船が接続水域から一時的に退去した
ところが、尖閣諸島周辺の日本領海の外側の接続水域にとどまっていた中国公船9隻が、8月11日朝までに退去したと海上保安庁が発表したのである。接続水域から中国公船がすべていなくなったのは8日ぶりということで漁船の数も減ってきているということであった。あれだけ大量に侵入していた中国船が急に引き上げた理由はよく分からないが中国が引き上げる直前に、いろいろあったことは事実である。
その一つが自民党の親中派・二階幹事長が中国公船領海侵入で中国の程永華中国駐日大使に「ルールを則ってもらわないと困る」「良好な関係を保ちたい」と懸念を伝達したことである。程氏側は「真摯に対応する」と応じ、両国が「円滑な話し合い」に向けて努力していくことで一致したという。
この会談が行われたのが8月10日で、翌日には中国船団がいなくなった。中国側が「親中派の大物」に手柄をたてさせ、影響力を増させることを考えたのではないかとの憶測を呼んでいる。
二つ目は米国の動きである。米国のトルドー報道部長は8月9日の記者会見で、中国の公船が尖閣諸島周辺に繰り返し侵入していることについて、「我々は注意深く状況を監視しており、日本本政府とも緊密に意思疎通を図っている」と述べ、米政府として事態を注視していることを明らかにした。
三つめは海上保安庁が遭難した中国漁民6名を救助したことである。アメリカが中国に警告した後、中国漁船とギリシャの船が衝突し、中国漁船は沈没。6人の中国人を海上保安庁が救ったのである。これに対し、中国側も感謝して「日本側が表した協力と人道主義精神を称賛する」とコメントした。この事件が起こった直後に中国船は、接続水域から出て行った。中国は国内に大きな不安材料を抱えており、そこから国民の目をそらすためにも強硬策を採り、中国船は一時的に退去したものの必ず戻ってくるであろう。中国が掲げている「反日統一戦線」の旗は降ろしてはいないからである。それでは日本はどのように対処すべきであろうか???
■百戦百勝は善の善なるものにあらず(孫子)
その意味するところは、「百回戦って百回勝ったとしても、ほめられない。もっとも望ましいのは、戦わないで相手を屈服させることである」ということである。
戦わないで勝つとは、要するに、武力を使わないで、頭を使って勝つことと言ってもよいであろう。つまり、外交交渉で相手の意図を封じ込めてしまうということである。日本政府は万一尖閣に中国側が上陸した場合にも即対応できるように綿密な計画を予め準備するとともに日米同盟をしっかりと再認識してアセアン諸国やロシア・オーストラリアなどとも連携を取って戦わずして勝利を勝ち取る戦略を建てるべきであろう。(執筆者:日本経営管理教育協会・大森啓司 編集担当:大平祥雲)(イメージ写真提供:123RF)
:サーチナ 2016-09-09 16:49
Posted at 2017/01/07 11:57:47 | |
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