
【テスト仕様】
1G締め、アライメント、車高3cmダウン、そして「超軽量16インチ化」という、自分の中で理想とする足回りの調律中のNDロードスター(MSRコアモデル)。
5/31、五月晴れの薄曇り広がる日曜日。この至高のセッティングの答え合わせをするため、ついにクルマ好きの聖地・箱根ターンパイクへと連れ出しました。
日曜日ということもあり少し遅めの午前9時〜10時頃に突入しましたが、ゲートを潜るとそこはポルシェやスーパーカーたちが多く走る、絶好の検証環境でした。
今回は助手席に「景色を楽しんでゆっくり行きましょう」と安全運転を促す、頼もしい『嫁リミッター』を乗せ、大人の余裕を持ってこの足回りの真価をロジカルに検証してきました。
17インチから「超軽量16インチ」へ。引き算がもたらす極上のコンフォート
MSR標準の17インチ(POTENZA S001改)は、市販S007Aよりも約1.5kgも軽く、エナセーブ並みにサイドウォールを削ぎ落とした素晴らしい専用タイヤです。
しかし、私はあえてマツダオプションの16インチ「レイズRE04改(6.0Kg/本)」へインチダウンし、ヨコハマの最新ハイグリップ「ADVAN NEOVA AD09(冷間F2.0 / R2.1)」を組み合わせました。
料金所からの直線や緩やかな中高速コーナーは、4速・5速で流すだけでも驚くほど滑らか。
【今時の足回り確認】
事前に10M前進・後退テストで泥臭く割り出したHKS GATE SPECの減衰力【フロント14段 / リア15段戻し】と、一時的にタワーバーを外してバルクヘッド周辺に持たせた「しなやかさ」が見事にシンクロ。路面のザラザラ感を完全にシャットアウトし、まるで純正のSSPやVSグレードのような、角の丸い上質な乗り心地で滑るように進みます。我がロードスターは何も問題なく「もっと踏め」と言わんばかりの直進安定性です。
途中、有名な御所の入駐車場で小休止と撮影を挟み、いよいよ本格的なヒルクライムへ。
【 先行車への追従で見えた、サスペンションとタイヤの「構造進化」】
PAを出ると、ちょうど前方をポルシェカレラRSらしき車両が走り去った後だった、適切な車間距離を保ちながら追従し、その挙動変化を観察してみました。
当然、直線では出力の差で離されますが、2速全開から3速へシフトアップしながらクリアしていくタイトなヘアピンコーナーにおいて、ロードスターは異次元の旋回姿勢を見せました。まるで、モテギ本コースの3・4コーナーを綺麗に走り抜けるような感覚を思い出します。
強い横Gがかかる領域ですが、タイヤの鳴きは一切ありません。
ここで明確に体感できたのが、自車に組み込んだ「HKS GATE SPEC」と「ADVAN AD09」という、2つの現代的な技術革新の融合です。
まず、HKS GATE SPECに採用された革新的なバルブ構造「デュアルPVS(プリロード・バルブ・システム)」。従来の車高調であれば、乗り心地重視で減衰力を緩めると初期ロールがグラッと出てしまうものでしたが、このシステムは「F14 / R15」というしなやかな段数であっても、ステアリングを切り始めた微低速域から超精密に減衰力を立ち上げます。これに「フロント:キャンバー-0.36 / トー0.00」というフリクションゼロの設定と、「強烈なキャスター角7.48度」が融合することで、ロールの無駄な傾きを幾何学的に相殺し、一瞬で水平なまま旋回姿勢が決まります。
そして、このサスペンションの進化を100%受け止めているのが、進化した「ADVAN NEOVA AD09」のタイヤ構造です。AD09は歴代ネオバ史上最高峰のケース剛性(タイヤの骨格)を備えており、非対称パターンの採用と相まって、横Gがかかった際のサイドウォールのヨレが極限まで抑えられています。
さらにHKSの「WR(ワイドレンジ)ニードル」により、全30段の減衰力変化が全域で均等に機能するため、自分がミリ単位で探った「14段と15段のわずか1段の差」が狂いなく正確に発揮されます。高剛性なAD09が路面をガッチリと掴み続け、公道とは思えないほどの圧倒的なロードホールディング性能を実現しているのです。
車体が不意にグラリと傾かないため、これだけの横Gでも助手席の嫁リミッターが作動せず、安定した旋回姿勢のままスカイラウンジへ到着しました。
「これ、もしS2000だったらヘアピンであそこまで踏めないし、路面の継ぎ目で横跳びする恐怖があったはず。この脚、最高だ……」と心の中で確信。減衰力をさらに上げたらどうなるか試したい誘惑に駆られましたが、危険すぎる領域に入りそうなので自重しました。正直、この強烈なフラットGに対してはマツダ純正レカロシートでは体が保持しきれず、フルバケかニーパッドの必要性を痛感したほどでした。
陸橋のギャップを「コツン」といなすダウンヒル、そして見えたブレーキの課題
スカイラウンジからの帰り道、ダウンヒルへ。下りはあっという間にスピードが乗ってしまいます。
途中、思った以上に大きな段差がある陸橋の高速コーナーへ進入。「一瞬、まずいかな!」と身構えましたが、それも完全に杞憂に終わりました。
ここでもHKSの進化型バンプラバー「アドバンスド・バンプラバー」が真価を発揮します。サスが縮みきった際の唐突な突き上げを「第2のしなやかなバネ」としてじわっと逃がす設計のため、バネ下合計6kgの軽量化を施した16インチの足元が電撃的な速さでギャップを上下にいなし、GATE SPECが一発で挙動を収束。車体が跳ねることもなく、ただ乾いた「コツン」という音だけを残して何事もなかったかのように走り抜けてしまいました。
ここで、下り坂を爆音で登ってくるランボルギーニ軍団とすれ違います。
それを見た助手席の妻が何かを察したのか(笑)、ここでついに嫁リミッターが発動。
「あったいう間に降りてしまうから、景色を楽しんでゆっくりいきましょう」との会話になり、後半は平和なクルージングへ。再びPAに寄り、そこにいたポルシェやハコスカGT-Rのオーナーさんと楽しくお話をして写真を撮らせていただくという、最高の時間を過ごしました。
ただ、この過酷なダウンヒルで一つ明確な課題を確認しました。
ブレーキパッドは【ENDLESS SSM-PLUS】に、フルードは【DOT4】に変更済みです。
現在の仕様はブレーキ時にノーズダイブせず「車全体がスクワットするように平行に沈む」ため、姿勢制御としてはとても良い方向です。
しかし、SSM-PLUSは「初期制動(ガツンと効く初期μ)を抑え、踏み込み量(踏力)に応じてリニアに止める」という玄人好みの抜群のコントロール特性を持ったパッド。
そのため、下り坂で強烈な荷重がかかるダウンヒルでは、カックンブレーキにならない代わりに、効かせるためには自分の脚力で「奥までグッと踏み込む」必要があります。
キャスター7.48度による突っ込み防止(アンチダイブ)があまりに優秀で車体が平然としていること、そしてAD09の縦グリップ(ケース剛性)が高すぎることも相まって、人間の脳の感覚としては「折り返しをハードに攻めるなら、もっと初期から強烈に立ち上がるスポーツパッド(SSSやMX72など)でもいいかもしれない」という、贅沢な(価格は安いし)気づきを得ることができました。
帰りの渋滞を避けるため早々に山を降りましたが、自分で車の声を聴き、メーカーの先進技術をミリ単位で調律しきった「F14 / R15」の足回りが、箱根という日本の聖地で見事な満点回答を出してくれた最低限のテストドライブとなりました。
もう少し時間が許せば、減衰を固めの方向にふったテストもした方が良かったと思いますが、車も増えてきましたし、危機管理の点でも丁度良かったかもと思いました。
【GATESPECについて」
GR86も、GATESPECを取付していた為、事前に好みの脚だとは解っていましたが、車種が違うと、やはり違う、元々持っている車の特性を上手く引き出していました。
今年4月頃からマイナーチェンジした、HKS ハイパーマックスSは、GATESPECの技術を惜しみなく、木下みつひろ選手監修の元開発されているので、値引きや価格面を考慮すると、良いかと思います。
S2000の時代にも、このような車高調整があったらとつくづく思うのでした。
次回:低中速コーナーの椿ライン