
昨日とは違う朝の冷たい空気
焦るジャケット木枯らしの予感
「スローイン・ファストアウト」
「...ふはぁわ~...よく寝た~おはよう」
休日の朝、遅く起きた私は大きくあくびをし、誰がいるわけでもないのに挨拶をした。何十年と一人生活をしているが、この癖だけはどうにも抜けない。誰かがいてくれたらと思いがむしゃらに行動した過去もあるが、結果はこの通りだ。
「ふぅんっ...!ぁッイタタ!!」
思い切り背筋を伸ばし、足がつった。寄る年波などという残酷ワードが頭をよぎったが、仕方がない。私だけではなく誰しもに訪れることなのだから。小さな明かり窓からわずかに漏れる光を頼りに、ふらふらと階段を降りる。ダイニングにある椅子に座り、ぼんやりと、今日は何をしようかと考えてみた。
「......むっ?!」
特にしたいことは思いつかなかった。だが私は焦ったりしない。何も無い、何も起きない休日などこれまで幾度となく経験してきている。もはや逆に何も起きない方が安心できるくらいだ。
「とりあえずコーヒーでも入れようか」
まるで誰かに話しかけているかのようなひとり言を言い放つ私。キッチンに立ち、水を入れたやかんを火にかけ、ドリップバッグをカップにセットする。休日の朝と言えばやはりコーヒーを楽しむひとときが定番だろう。ちなみにコーヒーはブラック派だ。ちなみに私がブラック派ということは当然ながら誰一人知らない。
「卵あったかな...」
お湯が沸くのを待っていたら、おなかが空いてきてしまった。冷蔵庫の扉を開けて中をのぞいてみる。卵がひとつだけ見えて、それと同時に目玉焼きを食べている未来の私も見えた。よし、目玉焼きとくればあとはベーコンとレタスとパンだな。確かおととい買ったクロワッサンが残っていたはず。
「...はさむか」
目玉焼きとベーコンとレタスをクロワッサンにはさむことに決めた。と、ちょうどその時お湯が沸いた。おうおうおうと少しおどけながらやかんを手に取り、ドリップバッグにお湯を注ぐ。蒸らしなどは気にせず一気に注ぐと、コーヒーの香りが一気に部屋いっぱいに立ち込める...できた。朝のひとときにふさわしい一杯。
「...ぅあっち!!熱っ!」
思わず声が出るほど一気にやけどした。くっ...やってしまった...。コーヒーの豊潤で妖艶な香りに浸り過ぎて熱々のコーヒーだということを忘れて一気に口に入れてしまった。しかし、やけどしながらでもコーヒーの香りの余韻には十分浸っていられる。これでいい。これだけで素晴らしい休日の朝を迎えた気分になれた。
「ズズズ...」
やけどのトラウマからか、コーヒーを飲む口が自然とおちょぼ口になる。美しくない音を鳴らしながら、私は窓の外の景色を眺めていた。晴れた空、手入れの行き届いた庭、太陽の光を弾くほどにきれいな車。...コーヒーを飲む手がとまり、頭の中をネガティブ思考が巡りだす。私は...なんのために生きているんだろう。
「ぐぅ~...」
ネガティブ思考が巡りだしてから約2秒でおなかが答えを教えてくれた。生きるからおなかが空く、おなかが空くから生きる。それでいいのだ、と。よし!私は妙に気合が入り、勢いよくフライパンを手に取った。焼くぞ...私は焼く!卵とベーコンを焼く!待っててクロワッサン!今目玉焼きとベーコンをはさんであげるから!
「コンコンコン...パリッ...じゅ~」
油を敷いたフライパンに卵を落とす。そのとなりでベーコン1枚も一緒に焼く。28cmのフライパンで焼く目玉焼きとベーコンは貧相に見えた。焼いている間にクロワッサンに切り込みを入れ、レタスをちぎる。ああなんて手際がいいんだ私。いや、おなかが空き過ぎた私は必死だった。
「クロワッ...?!...少し温めるか」
クロワッサンはおととい買ったものだったことを思い出した私は、オーブントースターで軽く焼くことにした。タイマーは1分。その1分であの焼きたてのような芳香が鼻に届く。あぁ、生きていてよかった...。自分自身で情緒不安定さを感じたが、この香りはそれだけの効果を人に与えるほどに素晴らしい。
「おまたせしたね」
誰もいないキッチンでひとり言が静かに響いていく。それでも、クロワッサンと目玉焼きとベーコンとレタスは嬉しそうにしているように見えた。レタス、ベーコン、目玉焼きの順でクロワッサンにはさみ、味付けはマヨネーズ。白いお皿の上に置いたクロワッサンサンドは食べるのがもったいないほどにまぶしい。
「ズズ...うわぬるっ!」
クロワッサンに手を焼いている間に、コーヒーがすっかり冷めてしまっていることに気が付いた。...どうする?!いややはり熱々のコーヒーじゃなければこの素晴らしき朝食は完成しない気がする!そう思った私はまたお湯を沸かし始め、ドリップバッグをカップにセットした。
「......ぇ!これウマ!!」
コーヒーを準備しておきながら、フライングクロワッサンサンドをしてしまった。だが、これはおいしい!作って正解!はさんで正解!空腹補正を考慮してもなお優勝!あぁ...素晴らしき朝食という宴が幕を開けた!何もない、何も起きない休日なのにこれだけの最高の気分を味わえるとは!
「ジャ~ン♪ジャララ~ン♫」
アコースティックギターを弾いている私。テンションが高まり過ぎて弾けもしないギターを弾いている。ありがとうコーヒー!ありがとうクロワッサンサンド!君たちのおかげでいいスタートが切れそうだよマジ感謝!ジャジャジャジャ~ン♪ジャララ~ン♫ジャラララ~ン♫ジャララララ~ン♫
「ピンポーン」
誰だ!!私の宴を邪魔するのは!!...私はそう思った。どうやらインターホンが鳴ったようだ。客...か。だが今は手が離せないのでね...。
「ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!!!」
激しい!すごい荒ぶりようだ!!朝から何事だ一体?!私は仕方なくインターホンの受話器ごしにその客に返事をすることにした。
カチャ
「はいはい!なんですか一体!」
『ちょっと聞こえてますっ?!!』
「聞こえてますよ!どちら様ですか!」
『二軒となりの城実ですけどっ!!』
「あぁなんだ城実さん、ごきげんよう」
『はっ?!ごきげんようじゃないわよっ!家にいらっしゃるならピンポン一回で出てきてくださらないっ?!こっちは寒いのにわざわざ出向いてきてるんだからまったく!ってそんなことを言いに来たんじゃなくてギターよ!ギター!!朝からギター!二軒先まで聞こえるなんてどんな弾き方してんのよ!お隣は黙ってるかも知れないけど私は我慢できないわ!メロディーも何もないギターの音をずっと聞いてるなんて苦痛でしかないんだから!周りのこともっと気にして生活してくださらないっ?!!』
「......」
『ちょっと!!聞いてますっ?!!』
「...え、もうすぐお湯が沸くのでごきげんよう」
カチャ
私は受話器をそっと戻した。
さあ、宴の続きを。
...あ、ロンパメです。
「俺はチーズをはさもうかな」って感じでクロワッサンサンドのアレンジがあちらこちらで始まってトマトとかアボカドとかパプリカまではよかったんだけど最終的にもやし降臨しちゃってクロワッサンもやしサンドが世に出回りかねませんでしたが、先日は山奥に行ってきました。
山奥と言っても山奥の森の中ではなく、山をすっごく近くに感じる道のことです。福井県...いえ、福井県の中でも特にわたしの住む地域では雪がすっごくて、山という山は軒並み雪まみれでした。で、そんな雪まみれの山と雪にまみれていない木々と真っ白なしろデミちゃんとが一枚の写真に写った時、しろデミちゃんの凄まじいかわいさで雪が溶けていってしまいそうでした。
こんな風にね!

(えぇっ?!うそでしょ!まさかそんな...?!)
かわいいは雪をも溶かす。

(あぁ...溶けて...?!)
あはは、冗談に決まってるじゃん。

(?!)
もしかして信じた?

(な...あ...?!)
あー、おっかしい!あははは!

(あんた何様のつもりよ!!)
さて、この日は朝日を浴びながらのクル活だったわけですが、冬のクル活は大変だなって思いました。外に出て愛車の写真を撮影していると、だんだんと指が冷たくなってきてしまい、シャッターボタンを押す指が思い通りに動きません。
それってこんな感じかも!

(いや手振れ補正が凄まじいよね)
かわいさを全力で補正願います。

(補正するまでもなくかわいいから安心したまえ)
季節ごとのその場の空気感で、写真の写り方も違う気がするなってわたし的に勝手に思っています。朝日も、夏と冬では違うなってことです。これはどういうことかって言うと、その言葉の通りです。
それではご覧ください。その場の空気感です。

(空気感 ! 空気感 !)
分かっていただけましたか。

(分かるも何も! YES ! 夏と冬で違う ! YAH !)
“不安なんて無い
今なら自信を持ってそう言える”
あ、そういえば...
やっぱりしろデミちゃんはかわいいです。
ロンパメバーグ
Posted at 2024/01/08 09:52:52 | |
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